決算翌営業日の株価がストップ高に

中堅精密機器メーカーであるトプコン(7732)は、2016年7月29日に2017年3月期Q1(4-6月期)決算を発表し、その翌営業日の8月1日の株価はストップ高で引けました。また、8月2日の株価も続伸で引け、2日間の上昇率は約31%に達しました。

そもそもトプコンはどのような会社か

トプコンは時価総額が約1,300億円の中小型銘柄です。1932年に服部時計店精工舎の測量機部門を母体として「東京光学機械」として創業し、測量機、双眼鏡、カメラ等の生産から出発しています。現在は、メガネ店や眼科で使われる眼底検査器、建設現場などで使われる測量機、建機や農業機械に組み込まれるGPSの3分野が主力事業です。

「医」(ヘルスケア)、「食」(アグリカルチャー)、「住」(インフラストラクチャ―)という世界的に見て成長が期待できる分野において社会的課題を解決し、事業を拡大するグローバルカンパニーとなることをミッションとしています。

実質4回の下方修正を発表した2016年3月期

成長分野を中心に事業展開を行っている同社ですが、2016年3月期は非常に厳しい1年でした。2016年1月までに3回の業績下方修正を行い、さらに2016年3月期通期決算も大幅な未達に終わったため、実質的には4回の下方修正を行ったことになります。

その背景には、穀物価格の低下などでIT農業関連(農機用GPSなど)が伸び悩んだこと、資源価格の低下等によりトータルステーション(測量機)の需要不振が著しかったこと、医療機器新製品(3D OCT-1 Maestro :3次元眼底像撮影装置)の米国でのFDA認可取得の遅延などがありました。

たび重なる下方修正により、株式市場からの信頼も大きく低下してしまい、2015年4月には3,000円を超えていた株価は、2016年7月には900円台にまで下落しています。

2017年3月期Q1決算で何が起きたのか

このような経過を辿って迎えたQ1決算は減収・減益決算と、表面的な数値はあまりぱっとしませんでした。しかし、7月29日に開催された決算説明会では、以下のような3つの注目ポイントがありました。

第1は、為替影響を除くと増収・増益だったというコメントがあったことです。景気減速により、為替影響を除いても減収・減益となる決算が多い中で、比較的、同社は健闘していたことが読み取れます。

第2は、前年度のたび重なる業績下方修正の元凶であったポジショニングセグメント(GPS関連事業)が増益となっており、回復の兆しが見られたことです。大規模工事の現場などではブルドーザーやトラクターにGPSを装着し自動操作するICT自動化施工の普及が進んでいますが、こうした市場向けに新たに投入された、採算性が高い製品の販売が好調であったためです。

第3は、前年度の下方修正の一因であった3D OCT-1 Maestro(3次元眼底像撮影装置)が、決算発表当日の7月29日朝に米国FDAから認可を取得できたという連絡があったというニュースでした。

同製品は、眼底の撮影と診断を「専門医でなくても行える」という特色が評価され、既に販売が開始されている日本や欧州において販売が非常に好調です。これに米国が加わることが確実となったため、同製品の今後に対して大きく期待が持てるようになりました。

冷静に対処したい

このように、決算後の株価の急騰は、上記3点のポジティブな変化を素直に好感した動きと捉えることができます。とはいえ、これまで下方修正が繰り返されていたため、期待値が低すぎた可能性や、ショートカバー(空売りを行っていた投資家による反対売買)の可能性には注意が必要です。

長期的に資産形成を目指す個人投資家の方には、急騰した株価に追随するのではなく、いったん株価の動きが沈静化するのを待ち、業績の持続的な回復の可能性や株価指標を冷静に判断してから投資行動を起こすことをお勧めしたいと思います。

 

和泉 美治