「働き方改革」と株式投資:新設大臣ポストに着目すると?

改造内閣の特命大臣から垣間見える今後の重点政策

この記事の読みどころ

  • 組閣の際の大臣ポストは、時の内閣が考える重点政策が何かを理解するヒントとなることがあります。
  • 第3次安倍再改造内閣が発足しましたが、今回は「内閣府特命担当大臣(働き方改革を推進する担当)」が新設されました。
  • 「働き方改革」には、政治主導ですべきことと、民間主導ですべきことがあり、民間主導ですべきことについては、いくつか関連銘柄も存在します。
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今回の改造内閣では新設の大臣ポストが

8月3日、第3次安倍再改造内閣の顔ぶれが出そろいました。人事そのものの評価は他の方のコメントにお譲りするとして、私は、ある1つの新設大臣ポストに着目してみたいと思います。

担当大臣や内閣府特命担当大臣の置き方は今後の政策のヒント

日本の内閣には、総理大臣と官房長官を除くと、3種類の大臣が存在します。

1つ目は、財務大臣や外務大臣のような、所轄する省庁が存在する大臣です。平たくいえば、「〇〇省」のトップとなる大臣です。

2つ目は、特定の所轄省庁を持たない「内閣の担当大臣」で、内閣官房に設置される大臣です。喫緊の課題に対応するために置くことが多いとされています。例として、「東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣」、「一億総活躍担当大臣」。「地方創生担当大臣」などがあります。

3つ目が、「内閣府特命担当大臣(以下、特命大臣)」と呼ばれる大臣です。2001年に法制化されて以降、必要に応じて、内閣府の下に置くことができるようになった大臣です。何人置いても良いことになっていますが、「沖縄及び北方対策」、「金融」、「消費者及び食品安全」の3つは、必ず置かなくてはなりません。

2つ目も3つ目も、メディアでは「〇〇担当大臣」と表記されるので、普段はその違いを意識することはないかもしれません。「地方創生担当大臣」のように、もとは特命大臣だったものが、「内閣の担当大臣」に変更されることもあり、なおさら分かりにくいことは否めません。

ただ、1つ言えることがあります。それは、内閣府が内閣の重要政策に関する事務を担当していることから、どのような特命大臣が置かれるかを見ることで、時の内閣が何を重点課題としているかを知るヒントになりえるということです。

今回、久々の新設大臣は?

今回の内閣改造前は、11の特命大臣のポストがありました。特命大臣はたくさんあるように見えますが、過去に存在したものを復活させたという例(「規制改革」)を除くと、2012年の第2次安倍内閣成立以降、新設の特命大臣というのは、実は「国家戦略特別区域」の1つしかありませんでした。

今回の内閣改造により、久々に、特命大臣の新設がありました。「内閣府特命担当大臣(働き方改革を推進する担当)」というのがそれです。目玉人事と言える派手さはないですが、意外と重要なヒントではないかと考えています。

働き方改革とは?

大臣ポストが新設されたのは分かったとして、それでは「働き方改革」とは一体何をしようとすることなのでしょうか?

そのヒントは、発表されて間もない「平成28年度年次経済財政報告」に垣間見ることができます。

報告書の中で、「働く」ことにまつわる課題が指摘されています。本来なら人材をもっと投入すべき成長分野への人材シフトが足りていないという労働需給のミスマッチ、出産・育児・介護と仕事の両立がしづらい環境、正規雇用者の過度な長時間労働による疲弊、多様な働き方が阻害される制度、といった課題が挙げられています。

さらに報告書には、それらの解決のためのキーワードがいくつか挙げられています。中途採用、テレワークのような働く場所や時間の柔軟な選択ができる仕組みづくり、働きたい高齢者や女性の労働参加、能力開発、同一労働同一賃金、長時間労働の是正、能力開発の機会創出、といったものです。

この報告書は、大きなテーマに広く浅く触れているので、やや抽象的な印象は拭えません。それでも、法律改正や制度変更といった政治が主導すべき分野と、新しい商品やサービスの開発といった民間の企業や団体が主導した方が良い分野があるように読み解くことができます。

働き方改革で注目できる銘柄

民間主導の方に着目して、働き方改革をテーマに投資対象を検討するとしたら、いわゆる人材関連業界の企業のほか、(1)自社に優秀な人材が集まるような仕組みを積極的につくっている企業、(2)働き方改革に沿って職場環境を整備するための商品やサービスを有している企業、(3)社会人の学びの機会創出に関するサービスを提供する企業が対象になりうるものと考えられます。

(1)では、経済産業省が東京証券取引所と共同で、女性活躍推進に優れた上場企業として選出した「なでしこ銘柄」群が参考になるかと思います。また、(2)では、企業内コミュニケーションを円滑にするグループウェアを提供するサイボウズ(4776)、クラウドソーシングを手がけるリアルワールド(3691)やクラウドワークス(3900)、(3)では、社会人向け教育サービスのインソース(6200)などが、それぞれ挙げられます。

※なでしこ銘柄に関する投信1の記事『「なでしこ銘柄」がビジネスで世界のトップに立つ日は?』もご参照ください。

 

藤野   敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。