あなたの資産は大丈夫? 波乱の秋に備えるポートフォリオとは

イタリア国民投票に米大統領選挙。イベントリスクが急上昇中

6月下旬の「Brexit:ブレグジット」(英国のEU離脱)の際には金融市場が大混乱となりました。これまでのところ事前に予想されていたほどの大きな悪影響は回避された模様で、市場関係者からも「ひと安心」との声が聞かれています。

とはいえ、この秋にはブレグジットを超えるとも言われる政治イベントとして、イタリアでの国民投票と米大統領選挙が控えています。「備えあれば憂いなし」との格言は投資にもそのまま当てはまります。伊国民投票や米大統領選挙の現況とイベントリスクへの対処法を見ていきましょう。

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イタリア国民投票は「EU離脱ドミノ」の試金石

英国民投票による金融市場の混乱がまだ記憶に新しい中、英EU離脱を超える影響を持つ可能性がある国民投票がイタリアで実施されます。実施日はまだ明確ではありませんが、10月30日か11月6日が有力視されています。

もともとは憲法改正案の是非を問う国民投票であり、市場の関心は必ずしも大きくはありませんでしたが、6月にレンティ首相が「否決されれば即退陣する」と表明したことで状況が一変し、レンティ政権への信任投票として一気に注目度が高まりました。さらに、英国がEU離脱を選択したことで、現在では「EU離脱ドミノ」の試金石と位置づけられています。

2015年に4年ぶりにプラス成長を達成したイタリアですが、成長率は1%を下回っています。当面は1%かそれ以下の成長が続くと見込まれており、イタリア経済は非常に厳しい状況にあります。

そして、この低成長の主因と考えられているのが銀行の抱える巨額の不良債権です。国際通貨基金(IMF)によると、イタリアの銀行の不良債権比率は18%に達しており、この数字は米国の銀行の約10倍に相当することから、危機的な水準にあると言われています。

イタリア政府は銀行の不良債権を公的資金を使って処理したい考えですが、EUは公的資金を利用する前に、銀行の債券保有者などに一定の損失を負担させることを求めています。

イタリアでは昨年、EUの方針に従って破綻した銀行の債券保有者に負担を求めましたが、この措置により損失を被った年金生活者が自ら命を絶ったことが社会問題となりました。こうした経緯から、イタリア政府は特例措置をEUに求めていますが、議論は平行線をたどっています。

このように、景気の停滞に対する政権への不満と、融通のきかないEUへの不信感が相乗効果となり、イタリア国内では反体制派で「ユーロ離脱」を掲げる政党への支持率が上昇しています。最近の世論調査でも国民投票での反対派が賛成派を上回っており、現政権への批判の受け皿となっている新興政党の「五つ星運動」が支持率で与党の民主党に拮抗してきています。

国民投票が否決された場合には、イタリアのユーロ離脱が現実味をおびてくることから、2008年のリーマンショックを超える混乱があるかもしれないとの指摘もあります。

安泰とは言えないクリントン候補

イタリアで予定されている国民投票のすぐ後、11月8日には米大統領選挙があります。民主党からは女性初の大統領を目指すヒラリー・クリントン候補、共和党からは不動産王として知られるドナルド・トランプ候補がそれぞれ正式な候補として指名されました。

多くの過激な発言が注目されているトランプ候補ですが、中でも「中国への関税引き上げ」や「不法移民の強制送還」といった発言は経済への影響が大きそうです。米国経済が自由貿易や移民の流入に支えられていることは否めませんので、関税の引き上げや移民に対する規制が実施された場合には、米国、そして世界経済の成長を阻害することになりかねないからです。

世論調査ではクリントン候補の有利が伝えられていますが、安泰とは言えません。特に気になるのが、景気の弱さです。4-6月期の米実質国内総生産(GDP)は前期比年率1.2%増加と低い伸びにとどまりました。米成長率は10-12月期が0.9%、1-3月期が0.8%だったことから、景気の低迷は一時的とは言えず、中長期で見ても停滞しています。

景気後退こそ免れてはいますが、低調な経済活動は現政権を引き継ぐ形となるクリントン候補にとっては逆風となります。今後、トランプ候補との支持率が拮抗した場合、景気の先行きに対する不透明感が一段と強まることが予想されます。

イベントリスクには安全志向で対応を

では、このように政治的なイベントリスクが予想される場合、資産ポートフォリオはどのように分配すればよいのでしょうか。参考にしたいのが、英国のEU離脱に対するマーケットの反応です。

当時の様子をざっと振り返ると、典型的なリスク回避局面となり、株価が急落した一方で債券には買いが殺到しました。為替市場では当事者である英国のポンドが売られ、避難先として円が買われています。このほか、安全資産として「金(ゴールド)」の人気も高まりました。

こうして考えると、この秋のイベントリスクには安全志向で対応するのがおすすめとなります。基本スタンスは、リスク資産である株式をアンダーウェイト、安全資産とされる債券をオーバーウェイトとすると良いのではないでしょうか。

通貨であれば、ユーロを避けて円やスイスフランといった、これまで逃避先として選択されてきた通貨がおすすめと思われます。また、無国籍通貨としての金も選択肢となるでしょう。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。