LIXILグループ、決算で明らかになった”トイレの秘密”

アクアセラミックに秘められた成長ポテンシャルとは

2017年3月期Q1(4-6月期)決算は黒字転換

住設機器大手のLIXILグループ(5938)は、2016年8月8日にQ1決算を発表しました。

売上高は、円高や事業売却の影響等により前年同期比▲7%減に留まりましたが、親会社の所有者に帰属する四半期利益(以下、純利益)は、前年同期にあった一過性費用の剥落などにより116億円の黒字と、前年同期の▲327億円の赤字から大幅に改善し、上期(4-9月期)の会社予想純利益(110億円)を超過達成しました。

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決算は8日の取引時間中に発表されたため、株価は決算発表直後から急伸し、終値は前日比+12%高で引けました。その理由は、市場予想を上回る純利益の大幅な改善だけではありませんでした。同日開催された決算説明会で、新型「タンクレストイレ」の不具合問題の影響が想定より小さいとわかったことも一因と考えられます。

タンクレストイレの不具合問題は想定より早期に解消

では、トイレの不具合問題とはどのようなものだったのでしょうか。

トイレは、同社の主力セグメントである「ウォーターテクノロジー」(水回り関連製品)に含まれており、Q1決算資料の同部門の概況説明によると、「日本は一部のタンクレストイレ不具合による新商品の発売遅れ(現在正常化)の影響で前年並み」と記載されています。

つまり、新製品の立ち上げトラブルです。とはいえ、この説明にあるように、機会損失はあったものの既に正常化していることが読み取れます。また、決算説明会において会社側は、この問題に関する引当金は計上済であり、受注活動も期初時点の予定よりも早期に再開できていること、また、近くこの製品に関して大きなプロモーションを行うことを表明していました。

「災い転じて福となす」ことができるか

新製品の立ち上げ時から製造トラブルという不幸な出だしとはなりましたが、決算説明会において新製品の詳細な説明を聞くことで“禍転じて福となる”可能性が十分にありえるという印象を筆者は持ちました。

今回問題となったタンクレストイレは、通常の水洗トイレには付いている水を貯めておくタンクが無い、水道直結方式のトイレです。タンクが無いので小型化が可能であり、洗練されたデザインとなります。

同社は、この製品の差別化のために「アクアセラミック」という新素材が採用しており、この技術を採用した製品を「100年クリーン」というキャッチコピーで宣伝しています。

アクアセラミックの最大の特徴は、素材の改良や表面加工の工夫により汚物や水アカの付着を最小限に留められることです。この技術により、タンクレスでも少量の洗浄水で汚物を流すことが可能になるだけではなく、水アカの固着による便器の黒ずみを解消できることになりますので、掃除の手間を大幅に省くことも可能になります。

こうした優位性を考慮すると、出だしはつまづきましたが、今後、このアクアセラミックの特色を効果的に訴求することができれば、新築やリフォーム市場での挽回は十分に可能ではないかと感じられました。

アクアセラミックに注力する本当の理由

とはいえ、国内市場は成熟化しているため、この技術だけで業績が中長期的に大きく伸びたり、ましてや社会的なインパクトをもたらすところまでは想像できないという方も多いと思います。

筆者もそうした考えを持った1人でしたが、今回の決算説明会では、今年6月の株主総会後に社長に就任した瀬戸欣哉氏から非常に興味深い発言がありました。それは、「今後、この技術は水資源不足が問題となっている海外に展開していく」というものでした。

水資源が比較的豊富な日本では、夏場の一時期を除くと節水はあまり意識されません。しかし、急速に都市化が進む新興国などでは水不足が今後さらに深刻になる可能性があるため、”少量の水でキレイを実現する”アクアセラミック技術が重宝がられる可能性は十分にあると考えられます。

日本市場だけを中心に考えた場合は取るに足らぬ技術かもしれませんが、世界的な視点で考えると風景は一変することになります。今回は、製品不具合という短期的な問題だけではなく、こうした長期的な成長ポテンシャルにも注視することの大切さを感じさせてくれた決算説明会でした。

 

和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。