日本だけではない! 米国でも公的年金は運用難

個人年金への需要はますます高まりそう

2015年度の公的年金の運用利回りがマイナスとなったことで、将来の支給減額につながるのではないかとの不安に思われた方も少なくないようです。さらに、米国でも年金基金の運用難が指摘されていますので、年金に対する不安は日本のみならず世界的な広がりを見せている模様です。

もちろん、短期的な損失がただちに支給額に影響することはありませんが、長期的に運用実績が低迷した場合には減額となる可能性も否定できません。日本や米国での年金基金の運用状況を踏まえると、老後の備えとして公的年金のみに頼るのはリスクが大きいと言えそうです。

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公的年金の運用で損失、株式比率の増加が裏目に

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2014年10月、運用の基本ポートフォリオ(資産構成割合)を見直し、国内債券に偏った運用を改めました。従来の国内債券60%、国内株式12%、外国株式12%、外国債券11%から、国内債券35%、国内株式25%、外国株式25%、外国債券15%に変更しています。

これにより、7割以上を占めていた債券の比率は50%にまで引き下げられ、株式の比率はほぼ倍増の50%へ引き上げられました。リスク許容度のより高いポートフォリオを目指したことがわかります。通常、リスク許容度が高くなるほど、資産残高の変動がより大きくなり、損失を被る可能性も高まります。

7月29日に公表されたGPIFの2015年度の評価損益が約5.3兆円のマイナスとなったことで、株式の割合を引き上げたことへの責任を問う声が強まりました。しかし、GPIFは運用利回りの目標値を名目賃金上昇率プラス1.7%に設定していますので、例えば、すべてを日本の国債で運用した場合、現在の低金利環境では目標の達成が困難なことは明らかです。

従って、株式の割合を増やしたことで、短期的に運用成績がマイナスになるリスクも高くはなりますが、目標の設定を変更しない限り、以前のように債券に偏った運用をすることも現実的ではありません。積極的にリスクを取っているというよりも、債券の利回りが低すぎるのでリスクを取らざるを得ない状況にあると言えそうです。

米国でも運用難、公的年金も確定拠出型へ?

低金利に悩まされているのは米国も同じです。米国では、公的年金の運用利回りの目標値は平均で7.5%とされていますが、2016年度の主な公的年金の運用実績は1.5%を下回る見通しです。2015年度もほとんどの基金が2%から4%のリターンに留まったことから、2年連続で目標を大きく下回ることになります。

たとえば、米国で最大の公的年金基金であるカリフォルニア州退職年金基金(カルパース)の2015年度の運用実績は、マイナス0.23%と7年ぶりにマイナスとなりました。カルパースの場合、基本ポートフォリオは債券20%、株式61%、その他資産19%となっています。

カルパースは昨年6月、資産運用会社数の削減により委託手数料を低下させ、運用コストを引き下げると発表しました。また、資産構成の簡素化とコスト削減の一貫として、2014年9月にはヘッジファンド投資から手を引く方針を明らかにしています。ただし、こうしたコスト削減の努力を実施しても運用利回りは低下傾向にあります。

米公的年金の過去20年の平均運用利回りは、15年前には12%を超えていましたが、現在は7.5%にまで低下しています。

運用利回りの低下には債券利回りの低下が大きく影響しており、今後とも低金利環境が続いた場合、多くの州政府や地方自治体が積立金不足を補うために財源を確保しなくてはならず、歳出の削減につながると考えられています。また、給付金の引き下げや確定給付型から確定拠出型への変更も検討せざるを得ない模様です。

運用難でも年金ファンドのポートフォリオは参考に値する

少子高齢化に伴う社会保険料の収入減により、公的年金の財政悪化が懸念されている中で、低金利や株式市場の低迷による年金資産の運用不振は、保険料負担の上昇や給付水準の切り下げといった不安を煽ることにつながります。

公的年金が確定拠出型となることは当面ないにしても、老後の備えとして自助努力が必要なことに変わりはありません。米国では1980年代から企業や個人において確定拠出型の年金が普及し、現在ではすっかり定着した観があります。

日本でも2001年から同様な制度が開始されましたが、まだ普及度は高いとは言えません。2014年1月からは「少額投資非課税制度(NISA)」もスタートし、日本でも「貯蓄から投資へ」の流れが広まっていることは確かですが、投資に対する知識や経験が少ないこともあり、二の足を踏まれている方も多いのが実情です。

日本や米国で年金基金が運用難にある現状を踏まえると、公的年金にプラスして個人年金への需要がますます高まることが予想されます。

運用状況は芳しくありませんが、将来に備えて長期的な資産運用を考えているのであれば、安全志向が強いとされる年金ファンドのポートフォリオは参考になります。公的な年金基金であれば、基本的なポートフォリオは公開されていますので情報も集めやすいでしょう。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。