SMAP解散の本質は事業モデルの限界? それとも?

お家騒動多発の昨今、解散問題を株式投資の視点に活かすと

この記事の読みどころ

  • SMAPが年内をもって解散することとなりましたが、メディアの多くで報じられているメンバー間の不仲説とは別の視点で今回の一件を考えてみました。
  • 解散という事象の裏にある本質的なところには、事業モデルの限界があるかもしれません。また、ファミリービジネスの世代交代や事業承継の視点も必要かもしれません。
  • SMAPの解散を他山の石として、今回の問題から得られる知見を、株式投資に活かす視点をご紹介します。
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「SMAP年内解散」の報道

8月14日に、メディアはSMAPの年内解散をいっせいに報じました。今年の1月にも、マネージャーの処遇を巡っての分裂騒動があり、その時の経緯から、解散は避けられたという見方が多かっただけに、今回の解散報道は驚きをもって受け止められたのではないでしょうか。オリンピック放送中のNHKで、テロップが流れて臨時ニュースとして伝えられたほどです。

複数の閣僚もコメントで言及したり、英国BBC等の海外メディアでも報道されたりするなど関心も高く、SMAPがアイドルグループの枠を超えた存在感を持っていることを改めて示しました。

ざっと見渡す限り、日本のメディア報道では、メンバー間の不仲について取り上げるものが大半となっています。人間関係の本当のところは、本人同士にしか分からないことです。しかし、アイドルグループに限らず、2人以上のどんな組織であっても、メンバー間の仲が良い、良くないという話は多かれ少なかれ必ず生じるものです。長年継続している組織であれば、なおさらです。

「メンバーの誰と誰の意見が違っているようだ」ということは、今何が起きているかを知るためには必要な情報かもしれません。しかし、不仲説は、「誰が正しくて、誰が間違っている」というような善悪論の話につながりやすく、ミスリードになる可能性があるので、あまり鵜呑みにしないことです(これは職場や学校などの人間関係においても言えることです)。不仲説はひとまず横に置いておいて、今回のSMAP解散の件を別の視点で検証できないか、考えてみました。

実は事業モデルの限界が本質的な背景?

よく、「会社の寿命は30年」と言われます。SMAPは1988年に結成して以来、28年活動しています(デビューは1991年)。SMAPを1つの会社と見なせば、SMAPという事業、または事業モデルが寿命を迎えているという言い方ができるかもしれません。

私は、SMAPは、「異なる個性を持つアイドルをグループにすることで、幅広いジャンルに対応し、全世代的に支持を得られやすいポートフォリオとして機能してきた」と考えています。番組の司会業に長けているメンバーもいれば、俳優としての才能を放つメンバーもいます。歌唱力のばらつきもグループの個性としてきたことで、多くのミリオンヒットを生んできたように思います。

もし、SMAPのオールジャンル対応型の事業モデルが寿命を迎えていたとすれば、それは、テレビ主導のマスマーケティング型の事業モデルの限界を示唆しているかもしれません。表面的には内部の混乱のように見えることでも、本質的な要因は、事業モデルの限界にこそあるのかもしれません。

それとも、ファミリービジネスの世代交代や事業承継の問題?

今回の解散に先立ち、今年の1月に、事務所独立の騒動が起きました。SMAPの育ての親と言われるマネージャー(有力な社員)と、オーナー経営陣との対立が事の発端とも言われています。こちらも、善悪論を抜きに見ると、世代交代の時期を迎えつつあるファミリービジネスの典型的なトラブルとも言えそうです。

ファミリービジネスの定義はいろいろありますが、ここでは、「企業の所有者(オーナー)と、経営者(マネジメント)と、家族(ファミリー)の3者の利害関係の調整を必要とする事業形態」とします。「ファミリービジネス白書 2015」によると、日本の企業全体の97%、上場企業(全市場)の53%がファミリービジネスと言われています。

日本のファミリービジネスは今、事業承継の問題を抱えています。日本の人口動態は、70歳を超えたあたりの団塊の世代、40歳を超えたあたりの団塊ジュニアの世代がボリュームゾーンとなっています。この人口の多い団塊の世代がちょうどビジネスの一線から引き始め、同じく人口の多い団塊ジュニアの世代に、事業が引き継がれようとしている時期にあたります(もちろん、後継者がいないという問題も多く生じています)。

ジャニーズ事務所の場合、創業者兼社長が84歳(後継者とされる社長の姪の副社長は50歳)ということなので、上記のボリュームゾーンからは少し上に外れますが、会社としては、事業承継が現実問題となっている時期と言えます(年齢は2016年8月時点)。今年1月の騒動は、組織として事業承継が課題となる時期に、創業家兼経営メンバーと、事業モデルの立役者とも言える社内の有力社員との確執が表面化して起き、SMAPメンバーが巻き込まれたという見方もできます。

SMAP解散問題から得られること

ファミリービジネスの視点で考えると、今回の一件は、芸能界だけで起きうることではなく、どこでも起きうる話と言えそうです。最近の上場企業の事例として、ぱっと思いつくだけでも、大塚家具(8186)、大戸屋ホールディングス(2705)、出光興産(5019)など、株価変動に大きく影響を与えるお家騒動も報じられています。

個別銘柄に投資をしている場合、投資先について、以下の3点を気にしておくことをお勧めいたします。

1.  そもそも揉めそうな状況にあるかどうか、有価証券報告書等で、大株主の構成、役員の状況(特に社長の年齢、親族役員の有無、実務を担っていそうな役員の存在)を確認する。

2.  お家騒動が発生する問題の本質は、実は企業の事業モデルなど、別のところにあるかもしれないことを頭の片隅に置いておく。

3.  お家騒動が発生した後、いったん生じた問題が表面上解決したように見えても、本質的なところの解決がなされないと、また噴出する可能性が高いことを念頭に置いておく。

今回のSMAP解散の一件を他山の石として、株式投資に臨みたいものです。

 

藤野   敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。