海外投資家は7月の日銀追加緩和が小規模で失望?

日本取引所グループは8月18日に2016年8月第2週(8月8日‐12日)の投資主体別売買動向を発表しました。8月8日付の記事で、7月の株式市場では買い上がっていくような積極的な投資主体が不在であると指摘しました。今回は、そのトレンドに変化があったのかを点検しましょう。第1週(8月1日‐5日)と合わせて分析してみます。

相場の推移を振り返ると、7月末の日銀の金融政策決定会合ではETF買い増しなどが決まったものの、マイナス金利政策の深堀りや量的緩和の拡大という点で市場の期待を満たす内容ではなかったと見られます。この結果、円高も進み、日経平均株価は8月第1週に下落しました。一時16,000円を割り込んでいます。

しかし8月第2週になると、好業績銘柄への選別物色が進み、日銀のETF買入増額期待も重なって反発が進みました。この結果、8月第2週の日経平均株価は7月末よりも高い水準で終わりました。

さて、この間、最大の売り越しをしたのは海外投資家です。8月第1週には約▲4,500億円を超える売り越しで相場水準を押し下げました。8月第2週の株価上昇局面では、わずか500億円に満たない金額の買い越しにとどまっています。7月の日銀の金融政策決定会合への失望と業績への警戒感が根強いのかもしれません。

買いの主体は信託銀行と事業法人

一方、8月前半の主要な買い手は信託銀行と事業法人です。信託銀行は8月第1週が約1,700億円、第2週が約1,200億円の買い越しでした。これまで信託銀行は、下げたところは買うが株価が上がると追いかけて買い上がらないような行動様式でした。しかし、8月第2週の買い方を見ると、従来より積極的なスタンスに変わったように見えます。

事業法人も2週連続で買い越し、8月前半合計で約930億円買い越しました。ただし、この大部分は自社株買いと見られます。そのため、株価水準が上がるとやや買いのペースが鈍化しています。

なお、個人は慎重な短期売買に徹しているように見えます。株価が下落した第1週は約2,200億円買い越しましたが、第2週に株価が上昇すると、すかさず約2,100億円売り越しました。

膠着状況が続きそう

このように、信託銀行がやや買い姿勢を強めたように見えることは好材料ですが、海外投資家は今まで以上に腰が重くなった模様です。業績発表が一段落し、ミクロの材料もやや枯れています。膠着状態を脱するには海外投資家の姿勢の変化を待つばかりでなく、事業法人のM&Aの増加などが進む必要もありそうです。

LIMO編集部