リオ五輪閉幕。世界の注目は米国大統領選の最終盤へ

夏季五輪開催年は、米国の大統領選の年に当たります。ご存知の方も多いと思いますが、米国は憲法で大統領の3選が禁止されているため、2期務めたオバマ大統領が退任し、新たな大統領が誕生することは間違いありません。なお、3選が禁止されているのは、長期政権による独裁政治を防ぐためと言われています。

世界の主要国で規定されている国家元首の任期

実は、世界を見渡すと、国家元首の長期政権を禁じている国が数多くあります。欧米の先進国は言うに及ばず、韓国(1期5年まで)、中国(連続2期10年まで)、ロシア(連続2期12年まで)、リオ五輪を開催したブラジル(連続2期8年まで)など、世界で注目されている国はほぼ例外なく任期があります。

逆に、北朝鮮、中央アジア諸国、アフリカ諸国などはこうした規定がなく、それ故に、独裁政治がはびこる要因になっています。

ただ、任期を定めている国でも、たとえばロシアのように連続3期は禁止だが、通算3期以上は認められる場合もあります。実際、現在のプーチン大統領は通算で3期目です。ちなみに、米国は憲法で「通算で2期まで」と定められていますが、大統領の死去等により副大統領から昇格した場合は、最大で連続10年まで務めることができます。

注:立憲君主国家の元首を除く。天皇(日本)、国王及び女王(英国、スペイン、オランダ、タイ等)

日本の内閣総理大臣は任期が無制限

世界の主要国の中で、国家元首(前掲注1)の任期が規定されていない唯一の国、それが日本です。憲法では、日本の内閣総理大臣の任期は定められていません。極論すれば、議会で選出される限り、20年でも30年でも務めることが可能なのです。

しかし、過去の最長連続在任期間は佐藤栄作の7年8か月、第2位は吉田茂の7年2か月、第3位は小泉純一郎の5年5か月、第4位は中曽根康弘の5年に止まっています。日本は憲法に規定しなくとも、長期独裁政権を未然に防ぐ機能が働いているのでしょうか。

内閣総理大臣の任期が定められていなくても、大きな問題が起きなかったのは理由があります。それは、事実上の内閣総理大臣である自民党総裁に任期が規定されていたためです。戦後の日本は、一時期の非自民党政権を除き、自民党総裁が内閣総理大臣に就いており、現在の安倍晋三首相も例外ではありません。

自民党総裁の任期延長論が大きな議論に

ところが、昨今、その自民党総裁の任期延長論が話題になっています。現在の任期は最大で連続2期6年ですが、これを連続3期9年に延長しようという動きです。事実上、日本の内閣総理大臣の任期延長に該当すると言えましょう。

筆者が新聞報道等を読む限りでは、党内には反対派も多く、今後の紆余曲折が予想されましょう。いつの時代にも、長期政権への抵抗は根強いものがあるのです。現在の安倍政権は、発足から早3年8か月が経過しており(2006年の第1次を除く)、何事もなければ小泉政権を上回る長期政権になる可能性が高まっています。

長期政権終了後2~3年以内に深刻な経済危機

戦後の長期政権を振り返ると、大きな特徴が2つあります。1つは、長期政権担当終盤にバブル経済の前兆が出ていることです。2つ目は、長期政権退任後2~3年以内に深刻な経済危機を迎えていることです。

吉田茂を除くと、佐藤政権、中曽根政権、小泉政権など多少の誤差はあれども、全て該当しています。小泉政権終了の2年後にリーマンショックに襲われたのは記憶に新しいところです。

これらアノマリーに照らし合わせると、自民党総裁の任期延長論は非常に興味深いものになります。

現在の安倍政権は、任期延長がなければ2018年9月で終了しますが、自民党総裁の任期延長が規定されれば2021年9月まで続く可能性があります。仮に任期延長がない場合、2020年7月24日の東京五輪開幕時には、経済危機の入り口に差し掛かっているかもしれません。今後の展開を見守りたいと思います。

 

LIMO編集部