クールビズによるネクタイ業界の窮地はどれだけ深刻?

クールビズ廃止を陳情も、社会や意識の変化には抗えず

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この記事の読みどころ

  • まだまだ残暑が厳しいと予想されますが、クールビズのおかげで昔よりはしのぎやすくなっていると考えられます。
  • クールビズが本格導入された2005年以降、ネクタイの需要は驚くほどに激減しました。
  • 今後も、社会ニーズの変化に対応できない業界は淘汰されていくでしょう。
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もうすぐ9月。しかし、残暑はまだ続く

気が付くと8月も残り2日、もうすぐ9月です。9月と聞くと秋の訪れというイメージがありますが、実際には残暑で大変です。気象庁が公表する東京のデータを見ても、9月の平均気温は、6月の平均気温より高いことが分かります。

直近30年間で6月の平均気温の方が高かったことはわずか2回しかなく、9月の平均気温が2~3度高いようです。もちろん、地域によって違いがあると思いますがあと1か月は、この残暑に悩まされる日が続きそうです。

クールビズの定着で男性会社員はしのぎやすくなった

しかし、その一方で、“昔に比べれば夏の暑さもしのぎやすくなった”と感じている男性サラリーマンの方々も多いはずです。その理由は、クールビズが定着したことに尽きましょう。夏季期間、具体的には、6月~9月末まで(注:最近は10月末までが主流の模様)、ノーネクタイ、ノージャケットのビジネスカジュアルが一般的になっています。

今から十数年前までは、どんな酷暑でも社内・社外を問わず、男性会社員はネクタイ着用が当然でした。誰一人、愚痴もこぼさずにネクタイを着用していたのです。真夏に喉元を締め付けるネクタイのあの苦しさは、女性に理解してもらうのは不可能かもしれません。

クールビズの本格導入は2005年の小泉政権から

さて、今では当たり前となった夏季期間のクールビズですが、本格導入されたのは2005年(平成17年)からです。当時の小泉政権が旗振り役となり、多くの国会議員や地方議員にも“奨励”したことで、日本社会に根付くきっかけとなりました。

しかし、この新しいドレスコード(服装基準)が認知されようとした2005年6月、日本ネクタイ組合連合会が当時の小泉首相、及び、各閣僚に抗議声明文を提出しています。ご記憶にある方もいらっしゃるでしょう。

声明内容は正確に覚えていませんが、“クールビズの影響でネクタイの売上が減少する”というものだったと思われます。すると、小泉首相は“これをビジネスチャンスに変えてほしい”という内容の返答をしたと、筆者は記憶しています。

いずれにせよ、日本ネクタイ組合連合会が、クールビズの浸透に深刻な危機感を持ったことは確かです。あれから10年強が経過していますが、実際にネクタイの需要はどうなったのでしょうか。

クールビズ導入後、ネクタイ需要は恐ろしいほど激減

結論から言うと、ネクタイ需要は恐ろしいほどに激減しています。日本ネクタイ組合連合会を構成する大組織の東京ネクタイ協同組合によれば、ネクタイの国内生産本数は、2005年の約1,298万本から2015年には約470万本へと▲64%減っています。

また、輸入品を含めた本数で見ても、同じく4,160万本から2,205万本へ約▲47%の減少です。これだけ需要が激減して、何の影響もないはずがありません。恐らく、ネクタイ業界では廃業に追い込まれた業者も少なくないと推察されます。

結果として社会ニーズの変化に対応できなかったネクタイ業界

実は、民主党政権が本格始動した2010年、日本ネクタイ組合連合会は当時の環境大臣にクールビズの廃止を陳情しています。自民党が無理でも、民主党なら理解してもらえると考えたのでしょうか? 心情的には理解できないことはありません。しかし、結果としてネクタイ業界は社会ニーズの変化に対応できなったと言えます。

今後も、こうした些細なことで始まる社会ニーズの変化により、消滅する業界、淘汰される業界、そして、新たに興隆してくる業界があるでしょう。”これが当然”という意識が崩れた時、その影響は想像以上に大きいと言えるのです。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。