Jリーグの規約は世界経済情勢の激変に対処できない

浦和レッズ・三菱自と横浜Fマリノス・日産のような資本関係問題が続出する?

この記事の読みどころ

  • 不正問題で窮地に追い込まれた三菱自動車が日産自動車の傘下に入った際、Jリーグのクラブ運営に係わる問題が注目されました。
  • 他のプロスポーツでは、今回議論になったような資本関係に抵触しながらも、何の問題もなく行われているケースがあります。
  • 今後、業界再編が加速する可能性が高い中、Jリーグは資本関係に係わる規約を見直すべきではないでしょうか。
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三菱自動車の日産傘下入りの余波で問題となったJリーグ

2016年の自動車業界で最大の話題は、三菱自動車の燃費データ改ざん問題でした。残念ながら悪いニュースという意味で話題となりましたが、最後は日産自動車の傘下入りが決まるというドラマチックな結末となっています(注:日産による資本払い込みは10月の予定)。

この資本提携が急転直下で決まった際、その余波で大きな議論となったのが、Jリーグの浦和レッズと横浜Fマリノスにおける利益相反問題です。

浦和レッズは三菱自動車が、横浜Fマリノスは日産自動車がそれぞれ筆頭株主となっています。Jリーグでは、大会の公正な競争を保証するため、その規約ではクラブ経営に関与できる株式保有者が、他クラブの株式を大量保有することを禁じているのです。この規約に従うと、事実上、日産が2つのクラブに大きな影響を持つことになるという理論です。

Jリーグの地域密着型運営は十分機能していない

今回の問題が顕在化した背景として、日本のプロスポーツが今もなお、親会社である企業の影響を大きく受けていることが挙げられます。Jリーグは発足当時から、地域密着型を目指してチーム名から企業名を排除するような主旨だったと記憶しています。これに反発した読売新聞がヴェルディの運営から撤退し、その後のヴェルディ凋落に繋がったと思われます。

話がそれましたが、三菱自動車は浦和レッズの50%超、日産は横浜Fマリノスの70%弱の株式を保有しています。Jリーグで最も地域密着型が進んでいると考えられている浦和レッズでさえ、資本的には1企業に依存しているわけです。ちなみに、三菱自動車は浦和(現在のさいたま市)には、地元の販売店以外は一切の事業基盤(本社機能、工場、研究所など)を有していません。

他のプロスポーツでは資本関係問題は起きていない事例も

ただ、Jリーグの資本関係に係わる規約も理解できます。特に、Jリーグはスポーツ振興くじの対象となっていますから、余計ナーバスになる必要があるのでしょう。

しかし、他のスポーツに目を向けると、Jリーグの資本規則に抵触するようなケースは散見されます。例えば、Vリーグ(女子バレーボール)では、デンソー、豊田合成、トヨタ車体が対戦しています(注:現在はデンソーと豊田合成はVリーグからチャレンジリーグに降格中)。これら3チームの親会社は、いずれもトヨタグループに属しており、トヨタ自動車(以下、トヨタ)の影響を大きく受けています。

トヨタから見れば、トヨタ車体は連結子会社です。また、豊田合成の持株比率は42.6%で社長も派遣していますから、日本の会計基準(会社法)で言えば連結子会社に該当します。一方、デンソーの持株比率は22.2%なので子会社ではありませんが、事業遂行で重要な影響を与えている関連会社という位置付けです。多少の差異はありますが、トヨタの影響下に置かれていることは確かです。

また、バスケットボールでも、トヨタと系列部品メーカーで関連会社に相当するアイシン精機は何度も対戦しています。さらに、リーグ内にはアイシン精機の子会社であるアイシン・エイ・ダブリュもいます。

バレーボールやバスケットボールは、Jリーグのようなスポーツ振興くじの対象にはなっていませんが、観客から入場料を徴収して運営する立派なプロスポーツです。しかし、筆者が知る限りですが、Jリーグのような資本関係の問題は全く発生していません。

業界再編が進む中、Jリーグは資本関係の規約を緩和する時期に来ている

話が再びそれたかもしれませんが、Jリーグは今回問題になった資本関係に係わる規約を緩和すべきと考えます。今回、少なくとも資本的には、地域密着型のクラブ運営が、まだ道半ばであることが判明しました。企業からのサポートなしには十分成り立たないということです。

さらに、現在のJリーグのクラブを見ると、その親会社が自動車業界、電機業界など同じ業界であるケースが数多く見られます。今後、2008年のリーマンショックのような金融・経済危機が起きた場合、生き残りを模索する企業が、大胆な業界再編に活路を見出す可能性は十分あると言えましょう。その際、企業が傘下にあるサッカークラブの独立性を考慮するとは到底思えません。

Jリーグは、今回の一件が稀にしか起きない事例ではなく、今後はいつ起きても不思議ではないことを認識する必要があります。この先、「想定外」という言い訳は通用しません。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。