東京株式市場のリバウンドに乗り切れない不動産株

東京株式市場は、昨年末から2016年9月2日の期間に▲13%下落しました。円高、2016年度の業績懸念、英EU離脱などさまざまな困難に遭い、世界的に見ても現地通貨ベースでワーストパフォーマーの1つです。ただ、ここにきてじりじりと値を戻して回復基調にあります。

しかし、この回復の動きに乗り切れていない業種がいくつかあります。電力・ガス、銀行、エネルギー・資源などに次いで芳しくない値動きなのが不動産株です。TOPIX-17 不動産指数は昨年末から2016年9月2日まで▲20%の下落となり、TOPIXに大きく水を開けられています。

個別の株価を見てみると、この期間、三井不動産(8801)▲26%、三菱地所(8802)▲22%、住友不動産(8830)▲20%という値動きでした。

アベノミクスの初期は好パフォーマンスだったのだが・・・

実は、不動産株はアベノミクスの初期には勝ち組でした。図表1は過去5年間の三井不動産(青)、三菱地所(赤)、TOPIX(緑)の推移です。

ご覧のように、不動産株は2012年の半ばから2013年末までTOPIXを大幅に上回るパフォーマンスを遂げ、その後1年以上貯金を維持していたのです。しかし約1年前からTOPIXをアンダーパフォームするようになりました。

過去1年間のパフォーマンスを切り出したものが図表2です。

図表2

2015年9月は上海株急落の余震が残っている頃です。この頃から三井不動産、三菱地所の両株価はTOPIXを上回ることなくアンダーパフォームしていきます。思い起こすと横浜の傾斜マンション問題が騒がれ始めた時期です。そして2016年6月以降、不動産株はさらに大幅にTOPIXに水を開けられたのでした。

ブレグジットが効いた

この間、不動産市場では金融緩和が続き、オフィスの空室率が低下して賃料が強含みで推移してきました。不動産企業のオフィスを中心とする賃貸事業に、特筆すべき懸念材料はなかったと考えられます。

では、何が問題なのでしょうか。特に今年の6月以降、どんな変化が株価のパフォーマンスを低迷させたのでしょうか。

その1つは英国のEU離脱、いわゆるブレグジット(BREXIT)ではないでしょうか。三井不動産も三菱地所も、ロンドンを海外展開の重要な都市と位置付け、事業を展開してきました。しかも、今後も開発案件を抱えている中で今回の離脱問題が起きたのです。

ロンドンのオフィス需要が構造的に軟化するのではないかという懸念が、大手の不動産会社にマイナスの要素として働いたと言えるでしょう。

新築分譲マンション市場に荷もたれ感

しかし、ブレグジットだけで今年の夏場以降の不動産株の低迷を説明するのは少し無理があるようです。図表3をご覧ください。ここでは三井不動産(青)とTOPIX(緑)に加えて、分譲事業のウエイトが大きい野村不動産(3231)の株価推移を赤で示しています。

図表3

野村不動産の株価は、過去1年間のうち2016年7月末までのほとんどの期間でTOPIX並み、ないし、これを上回るパフォーマンスでした。しかし、2016年7月以降、TOPIXをアンダーパフォームし始めます。不動産全体の株価の不調はブレグジットの影響ばかりではないと言えるでしょう。

(株)不動産経済研究所の「首都圏のマンション市場」というレポートによれば、新築マンションの供給は2014年2月以降、対前年同月比で減少基調にあります。その間、単価はおおむね上昇基調だったのですが、在庫が2014年12月頃から対前年同月比で増加基調になっています。2016年6月以降は単価もとうとう下落し始めました。価格を下げて需要を喚起する局面にあると解釈できます。

2016年6月から7月にかけて、不動産業界はブレグジットと新築マンション市場の変調というダブルパンチに見舞われました。マンション市場の調整を短くするためには価格の調整を急ぐか、改めて海外投資家を呼んでくるなど総合的な施策が必要かもしれません。もちろん、マンションの品質に対する信頼醸成も必要なことは言うまでもありません。マンション在庫からしばらく目を離せないと思います。

 

LIMO編集部