携帯ゲームの世界は3Dから2Dへ逆流現象が

任天堂(7974)が、9月15日に携帯型ゲーム機「ニンテンドー2DS」を発売することが話題になっています。2Dは言うまでもなく2次元のことですが、最近では2.5次元という言葉もしばしば聞かれます。そこで、今回は2次元、2.5次元に関連する話題について考えてみます。

ちなみに、2DSは海外では2013年から発売されており、日本でも今年2月からポケットモンスターシリーズとの限定パックによる販売を行っていますが、今回はゲーム機本体の単体での発売となります(価格は税別で9,800円)。

2DSは3D表示機能が省かれているため、当然コストは低くなります。そのため、ユーザー視点では歓迎すべき動きということになるでしょう。一方で、そもそもゲームそのものが面白ければ3D化は不要だったのではないか、という素朴な疑問も浮かび上がります。

エンターテインメントの世界では2.5次元ビジネスが話題を集める

ゲームの世界では3Dから2Dへの逆転現象が話題になっていますが、エンターテインメントの世界では2.5次元(2.5D)ビジネスが注目を集めています。代表例は、漫画作品がミュージカル化された『テニスの王子様』(テニプリ)や『美少女戦士セーラームーン』などが挙げられます。

ここで注意が必要なことは、2.5次元の意味は、2次元(平面)と3次元(立体)の中間的存在ということではなく、2次元のコンテンツを3次元コンテンツに変換する行為、つまり、漫画やアニメのコンテンツを人間が演じるミュージカルや映画に変換するビジネスのことを指します。

アニメキャラクターのフィギュア、着ぐるみ、コスプレなどを2.5次元と呼ぶこともありますが、これはいわゆる”オタク”の世界で使われる表現で、上記の2.5次元ビジネスとは異なる言葉の使い方です。

プリンタの世界でも2.5次元化が始まる

2.5次元化が注目されているのは、エンターテインメント業界だけではありません。カシオ計算機(6952)は、2016年6月に2.5Dプリンタを開発したことを発表しています。

このプリンタは、紙の表面に熱を加えて微妙な凹凸を作り、インクジェット技術により文字や図形を2.5D化して印刷することができます。なお、ここでの2.5Dという意味は、オタクの世界と同じく2Dと3Dの中間的な意味合いになります。現時点では発売時期は未定ですが、8月2日に行われた決算説明会で、9月に具体的な内容を発表するとコメントされています。

ちなみに、カシオ計算機の創業者である樫尾俊雄氏は、「必要は発明の母である」ではなく「発明は必要の母である」という言葉を好み、発明によって新しい必要を生み出すことを経営ビジョンとして掲げています。この理念は現在の同社にも継承されており、2.5Dプリンタもその表れと言えるでしょう。

そのため、現時点で思いつく2.5Dプリンタの利用シーンは視覚障害者向けの教材制作や商品のパッケージなどに限られますが、将来は思いもよらない新たな用途が開拓されるかもしれません。

エンターテインメントの世界で2.5次元現象が注目されたように、今後2.5Dによる新たなビジネスチャンスが生まれることが期待されます。同時に、ゲームの世界で起こった3Dから2Dへの逆転現象が起こらないことを祈りながら、今後の動向を注視したいと思います。

 

和泉 美治