海外リート投信の基準価額が急落! あなたは大丈夫?

長期金利上昇に翻弄されず、冷静に対応を

海外リート投信の基準価額が急落中!?

ネット証券売れ筋投信ランキングで、常に上位5位にランクインしていると言っても過言ではない為替ヘッジなしの米国リート投信や海外リート投信。ところが最近、その基準価額が急落しています。

投資家に人気の高い、代表的な毎月分配型の3つのファンドの運用成績を見てましょう。いずれも分配金再投資基準価額ベースで、①は2015年末から2016年9月12日までの騰落率、②は2016年7月29日から2016年9月12日までの騰落率です。最後にドル円(概算)の騰落率も記します。

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  • フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし):①▲7%、②▲7%
  • ワールド・リート・オープン:①▲7%、②▲6%
  • ラサール・グローバルREITファンド:①▲10%、②▲6%
  • ドル円(概算):①▲15%、②▲0%

ご覧の通り7月末からの下落が大きく、これで昨年末からの下落をほぼ説明できてしまいます。

いったい何が起きているのでしょうか。

原因はドル円相場ではない

ちなみに、昨年末のドル円相場は約120円、9月12日は102円程度ですので、約15%円高が進みました。ここで取り上げた投信は海外資産へ投資していますので、海外資産がドルに連動しているとすると▲15%程度目減りしていまいます。

3つのファンドの昨年末来のパフォーマンス①がこの▲15%よりも良いのは、為替の影響(注:本来ならグローバルリートではドル円以外の為替も見ておく必要があります)をカバーするような利回りや値上がり益があったものと推測されます。

しかし、7月末からのドル円相場はほとんど動いていません。それにもかかわらず3つのファンドのパフォーマンス②が大幅にマイナスになっています。この理由を探りましょう。

世界的な長期金利上昇が背景

ご承知の方も多いと思いますが、リートは配当利回りで投資価値を判断されるという性格があります。たとえば、米リートの2016年8月末の配当利回りは約3.7%と言われています。

実は、この3.7%が高いか低いかを判断する時、代替投資先との利回り格差を考えることが多く、米国の場合は10年国債の利回りがこの物差しになることが多いのです。

では、米10年国債の利回りの推移を見ておきましょう。7月末に約1.45%だった利回りは、9月12日に1.67%に上昇しています。投資家が米国債に求めるリターンが高まると、それにつれて投資家がリートに要求するリターン(ここでは配当利回り)も高くなる傾向があります。

短期的にリートの配当が変わらないとすると、投資家は従来より安い価格でしかリートを買わなくなる、これがこの夏のリート投信の基準価額が低下した理由だと思われます(なお、グローバルリートも資産の過半が米国のリートになりますので、そこから類推してください)。

もう少し長い目で見ると、リートは借入も使って資産を保有していますので、その借入コストが金利上昇に伴って増えていきます。これはリートの収益及び配当にとってマイナス要因です。

ちなみに、長期金利の上昇は先進国全般の最近の傾向です。一つには、9月かどうかは別にして、米国の利上げが接近してきたことがあります。

また、欧州でも欧州中央銀行が最近の理事会で量的緩和の次の一手を示さなかったために失望が広がっていること、日本でも長期金利の行き過ぎた低下が保険会社などに与えるデメリットが語られ、日銀が今後の金融政策を決める際にこれを意識していると言われていることなどがあるのでしょう。

中長期の資産形成を目指すなら、冷静に複利効果を活かすべき

さて、金利が上がるとリートの価格にはマイナスの影響が出る、ということをお話してきました。「金利が上がっていくのならば、リートはやめだ」というお考えもあるかもしれません。その考えにも一理あるのですが、次のような点も踏まえて総合的に判断していただければと思います。

第1に、金利が上がる時は、景気も良くて賃料や賃料収入全体が上がる可能性が高いということです。賃料が上がればリートの利益は高まり、配当額が上がって、それで投資家の利回り期待に応えることもできるかもしれません。

第2に、為替の動きです。現在のように米国が先行して利上げをし、日本が金融緩和の拡大を模索している場合、金利差の点で円安ドル高の傾向が強まります。そうであれば、円安によって円建てのリート投信の基準価額の下支えが期待できます。

第3に、複利効果です。先ほど米国リートの平均利回りが足元で約3.7%程度と述べましたが、この利回りを複利効果で最大限活かすことをお考えください。日本で3.7%の利回りが出る金融商品はなかなかありません。この配当をしっかり再投資で雪だるま式に膨らませるのは、日本の金利環境から見れば検討に値する投資手法と思われます。

もし、海外リート投信を活用して中長期的な資産形成を目指すのでしたら、毎月分配型よりも再投資型の投信を選ぶのも一考に値します。ぜひご検討してみてください。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。