地銀はマイナス金利の犠牲者か? 生き残りの条件は

「地銀の6割超が2025年には本業で赤字」のリスク

金融庁が「金融レポート」を発表。金利低下の中での金融機関のリスクを示す

金融庁は2016年9月15日、「金融レポート」を発表しました。これは昨年9月に、金融行政が目指す方向などについてまとめた「金融行政方針」の進捗状況や実績などの評価をとりまとめたものです。

同レポートの構成は「我が国の金融システムの現状」、「金融行政の重点施策に関する進捗・評価」、「金融庁の改革」となっています。

「我が国の金融システムの現状」では、「我が国の金融システムの評価とその健全性に影響を及ぼしうるリスク」として、低金利下における金融機関のビジネスモデルとリスクテイクが述べられています。

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そこでは、「我が国の金融システムは総体として健全で安定している」とする一方で、金利低下が継続する中、短期で調達し、中長期の貸出・証券運用を行うビジネスモデルの持続可能性、海外向けの与信や証券投資が拡大することに伴う外貨流動性管理、世界経済・市場の変化が信用コストに与える影響、国債市場の低流動性や異例に低いタームプレミアムの中での金利変動リスク、不動産向け貸出(アパートローンを含む)を含めた与信の集中リスクなどが挙げられています。

地銀の6割超が2025年には本業(貸出・手数料ビジネス)で赤字か

今回の「金融レポート」の中で注目されたのが、「金融仲介機能の十分な発揮と健全な金融システムの確保に向けて」と題された項目の中での、金融機関の将来の見通しです。

特に地域金融機関にとっては厳しい予測となっています。同レポートでは、金利低下が継続する中、地域銀行全体として利ざや縮小を融資拡大でカバーできない状況であり、今後、人口減少などにより借入需要の減少が予想される中、担保・保証などに依存した単純な貸出業務の収益性はさら低下するおそれがあるとしています。

さらに、地域銀行(地方銀行、第二地方銀行、埼玉りそな銀行:以下、地銀)については、本業といえる顧客向けサービス業務(貸出・手数料ビジネス)の利益率の試算も行っています。

それによると、2015年3月期においても、4割の地銀では利益率がマイナスですが、さらに2025年3月期では、6割を超える地銀がマイナスになるという結果になりました。

銀行の収益性は、貸出・手数料ビジネス以外に、有価証券運用による収益などもあり、収益力の低下が直ちに財務の健全性の問題につながるわけではありません。しかし、今後、人口減少などにより借入需要の減少が予想される中、持続的な成長のためには、早期にビジネスモデルの見直しが必要でしょう。

「担保頼みの地銀は消えてよし」が金融庁の本音?

こうした厳しい状況下で、地銀が生き残るためにはどのような策があるのでしょうか。

一つはやはり、経営統合でしょう。意見は分かれるものの「地銀の数が多すぎる」という見方もあります。現在、地銀は106行で、地方でも県内に第一地銀が複数あるところがいくつもあります。「少ないパイを取り合うよりは」と経営統合の道を選ぶ地銀が増えています。県内の地銀同士だけでなく、営業エリアをまたいだ越境統合の例もあります。

むろん、統合したからといって将来の成長が約束されるわけではありません。前述したように、人口減少などにより借入需要の減少が予想されています。

「金融レポート」では「担保・保証などに依存した単純な貸出業務の収益性はさらに低下するおそれ」があるとしています。さらに、「顧客企業の事業の内容をよく理解し、そのニーズに応え、企業価値向上への貢献を通じて、収益を確保するビジネスモデルを構築している銀行が存在」、「顧客企業も、貸出金利の低さより、事業の理解に基づく融資や経営改善等に向けた支援を求める傾向」としています。

これらはあたかもレポートのような書き方ですが、要は「顧客の事業を見ず、担保に依存した単純な貸出業務しかしない地銀は淘汰(とうた)されてもやむなし」ということでしょう。

むろん、経営統合しなくても、独自の強さを発揮する地銀も出てくるでしょう。地方創生を支える存在としても期待がかかります。今後さらに、生き残りに向けた、地銀のビジョンが問われることになりそうです。

 

下原 一晃

マーケティング会社、リクルートなどを経て、PRプランナー・ライターとして独立。
株式投資、投資信託をはじめとする資産形成や、年金、相続などに関する情報提供を行っている。あわせて、個人投資家がテクニカル理論を身に付けるためのヒントや知識の紹介にも取り組んでいる。
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)。