来場者の減少に歯止めがかかるか?

毎年恒例の日本最大のエレクトロニクスショー「CEATEC」(以下、シーテック)が、10月4日(火)から7日(金)まで、千葉県美浜区の幕張メッセで開催されます。その最大の注目点は、下落傾向が続く来場者に歯止めがかかるかです。

シーテックは2000年に、家電・電子部品の展示会「エレクトロニクスショー」とIT関連の展示会「COM JAPAN」が統合される形で始まった展示会ですが、日本の電機産業の凋落と呼応するように、2007年をピークに来場者の減少傾向が続いています。昨年の来場者は13.3万人と2007年比で3割強も減少しているのです。

筆者も電機産業のウオッチャーの1人として毎年訪れてきましたが、昨今はどことなく活気のない会場に寂しさを覚えた記憶があります。

コンセプトを原点回帰

しかし、頼もしいことに主催者側によると今年の来場者は前年比12%増の15万人を見込んでいるとのことです。こうした強気な見通しを掲げられる一因は、シーテックのコンセプトを再定義し、出展企業を増やすことに成功したことにあります。

実際、2013年から参加を取りやめていた日立製作所(6501)は今年から出展を再開する予定で、ベンチャー企業の出展数も前年比倍増の100社程度になる見込みです。

こうした変化の背景には、今年のメインテーマを「つながる社会、協創する未来」とし、「CPS(注)/IoT関連の展示会」というコンセプトを前面に打ち出したことがあります。

注:CPSとはサイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System)の略語です。制御対象から収集したビッグデータをAI(人工知能)などで処理することにより産業の活性化や社会問題の解決を図るもので、IoT(モノのインターネット)と密接に関連するテクノロジーです。

シーテックというと、CEという最初の二文字からコンシューマエレクトロニクス(民生家電)が想起され、テレビなどの家電の展示会というイメージが強いと思います。そのため、今年のメインテーマは“随分と難しいな”とお感じの方も多いかもしれません。

しかし、実はシーテックは、Combined Exhibition of Advanced TEChnologiesの略であり、「先進技術の複合見本市」だったのです。

ですから、少しお堅いテーマが打ち出されるのは当然であり、2000年代後半に華々しく薄型テレビの画面サイズの大型化が競われたあの頃の姿が、むしろ本筋から外れたものだったのです。つまり、今年のシーテックは“原点回帰”したということになります。

実際、2000年代後半に全盛であったデジタル家電の多くの機能はスマホに取り込まれてしまい、生産も日本からアジアへシフトしています。一方、それに代わり、最近、日本の電機メーカーが注力しているのはIoTや人工知能を活用した社会インフラシステムやロボットなどです。

したがって、再定義された今年のシーテックのテーマは、日本の電機メーカーの現状の戦略に近づいたもの、とも捉えることができると思います。

今年の見どころはロボット?

とはいえ、シーテックは技術にあまり詳しくない一般の方にとっては面白くない展示会だということでは全くありません。

むしろ、今年からの展示は、先端技術の活用シーンごとに「社会エリア」、「街エリア」、「家エリア」「CPS/IoTを支えるテクノロジー・ソフトウェアエリア」の4つに分けられ、生活者目線で技術の使われ方が理解できるよう工夫されていますので、その将来動向を体感できるのではないかと思います。

とりわけ注目したいのがロボットの展示です。日立は歩道を自律走行する次世代パーソナルモビリティ「ROPITS」や接客・道案内などができるヒューマノイドロボット「EMIEW3」を、シャープ(6753)は昨年に続き今年もモバイル型ロボット電話「ロボホン」を、トヨタ(7203)も対話型の小型ロボット「KIROBO mini」を出展する予定です。

また、現時点では出展されるか未確認ですが、ジャイロなどの電子部品を駆使して作られた「ムラタセイサク君」、「ムラタセイコちゃん」、「村田製作所チアリーディング部」といった可愛らしいロボットを発表してきた村田製作所(6981)の発表内容にも興味が持たれます。

来年こそはソニーの参加に期待したい

上述のように、日立は今年から4年ぶりの参加が決定していますが、残念なことに、日立と同じく2013年から出展を見送っているソニー(6758)は今年も出展を予定していません。国内売上高が全体の3割弱しかないため、費用対効果の観点から見送られたのではないかという推測ができますが、ソニーが出展しないシーテックはやはり寂しいものです。

シーテック自体が、目先の商談の場から、より尖った技術を協創する場に原点回帰していることや、ソニーは今年6月に開催された経営説明会でロボット事業への再参入を示唆していることから、来年こそソニーのロボットにも出会えることを期待したいと思います。

 

和泉 美治