今後も続く政治リスク。資産運用への影響を考える

国民投票などの政治イベントによる影響に対処する2つの方法

この記事の読みどころ

  • 佳境を迎えつつある米国大統領選ですが、選挙や国民投票での接戦劇は、時に思わぬ結果によって市場が敏感に反応する状況を作り出すことがあります。2016年6月のEU離脱をめぐる英国の国民投票がその好例です。
  • 最近は欧州を中心に国民投票が多く実施されるように見受けられます。国民投票等の政治イベントの最近の特徴と、2016年から2017年にかけて、まだまだ各所で国民投票が実施されそうな状況をまとめました。
  • 資産運用を行っていると、選挙や国民投票といった政治イベントによる影響は避けられません。リスク管理上できることとしては、主要国の政治イベントの有無を確認しておくことと、投票結果を当てにいかないことが挙げられます。
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佳境を迎えつつある米国大統領選

日本時間で9月27日に行われた、ヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏の両米国大統領候補による1回目のテレビ討論会は、全米で1億人以上の国民が視聴したと言われています。米国民以外でも注目した人は多かったと思いますので、もはや世界的なイベントと言っても過言ではありません。

特に資産運用をされている方にとっては、誰が米国の大統領になるかということは当面の投資環境を決める大きな要因ですので、その行方は気になるところです。

テレビ討論会の内容がどうだったとか、どちらが優勢かという話は、多くのメディアで論じられていますので、そちらにお任せするとして、こちらでは二択を迫られる政治イベントへの接し方について触れたいと思います。

米国大統領選挙は11月8日の投開票で決着がつきます。決着がつくタイミングは明確ですから、あとは両氏のどちらになるかという結果を待つのみです。ただ、これまでずっと接戦と報じられてきたこともあり、思わぬ結果には金融市場が反応しやすい状況にあると考えられます。

二択の間での接戦の記憶

決着がつくタイミングが決まっています。二択のどちらかの結果になることもほぼ分かっています。それでも、その二択の間でずっと接戦を演じています。こういうシチュエーション、最近もどこかで見聞きしたことだと感じませんか。

今年の6月、EUへの帰属をめぐって英国で国民投票が行われました。この時は、投票日に向けて各種メディアの事前調査で、一進一退の接戦と報じられ続けてきました。しかし、金融市場では、投票日直前になって「離脱することはないだろう」という妙な楽観論が蔓延していたところに「離脱」という結果が判明し、為替や株式市場が大きく変動しました。

最近の政治イベントの特徴

政治イベント、特に国民投票では、最近、以下のような特徴が強まっているように見受けられます。

1. すぐに国民投票を実施しようとする

2. ぎりぎりの接戦を演じることが多く、国民や世論を二分する

3. 結果が決まってもわだかまりが残り、投票の無効を主張する意見が多く残る

もちろん国によってルールが異なることは承知していますが、特に1について、本当に必要な時だけに行われるはずの国民投票が、多く実施されるようになったと感じます。

欧州を中心に国民投票が続く

実際、世界ではちょくちょく国民投票が実施されています。英国の国民投票以外では、昨年末から今年にかけて以下の国民投票が実施されました。

デンマークでの2015年12月の国民投票。テロ対策の必要から、EUとの警察協力に関わる司法内務分野の連携を拡大するかどうかでしたが、否決され、反EUの世論が強いことが浮き彫りとなりました。

スイスでの2016年6月の国民投票。すべての住民に毎月一定額のベーシック・インカム(最低生活保障)を支給すべきかどうか(代わりに年金や失業保険は廃止)の賛否を問うものでした。もしかしたら社会保障制度の新しい試みになるのではないかとも言われていましたが、大差で否決されました。

そして、国民投票はこれからもまだまだ続き、2016年には2件予定されています。

ハンガリーでは、2016年10月2日に国民投票が行われる予定です。難民流入問題を受け、EUは加盟国ごとに難民受け入れ枠を割り当てようとしていますが、今回の国民投票は、その是非について民意を問うものとされています。EU離脱という話に直結する可能性は今のところ低いと考えられますが、結果次第ではEU内にくすぶる難民流入問題が再度クローズアップされることも考えられます。

イタリアでは、議会上院の権限縮小を目的とした憲法改正の是非をめぐって、10~11月に国民投票が行われると言われています。イタリアの複雑な選挙制度と相まって、結果によってはレンツィ首相の政権基盤が揺らぐ可能性もありえます。

また、2017年以降も、政局次第で国民投票実施の可能性が取り沙汰されそうな国があります。

オランダでは、極右政党の自由党が、2017年3月の総選挙で勝利した場合には、EU離脱の賛否を問う国民投票を実施することを呼びかけています。フランスでは2017年4~5月に大統領選挙がありますが、極右政党「国民戦線」のルペン党首が、大統領に選出されれば国民投票を実施するという方針を打ち出しています。

また、2014年の住民投票で英国からの独立を否決されたスコットランドでも、再度英国からの独立を問う住民投票を行おうとする動きがあるようです。

政治イベントによる影響は避けられないと考えておくことが大切

資産運用を行うにあたり、多かれ少なかれ、選挙や国民投票等の政治イベントによる影響は受けざるをえません。これに対応する方法は2つあります。

1つ目は、国民投票等が結構頻繁に行われるという前提のもと、主要国の選挙や国民投票の有無を確認しておくことです。最近だと、米国大統領選の動向にばかり目が向かいがちですが、欧州等の政治イベントにも目を配っておきたいものです。

2つ目は、政治イベントの結果には、どちらの可能性もあるという心づもりで臨み、それぞれの結果に応じた想定シナリオを用意しておくことです。気をつけたいのは、「Aという結果になるはずだからドルを買っておこう」というように、投票結果を当てにいってはいけないということです。
 
政治イベントの結果そのものは本当に水物ですので、資産運用上は余計なリスクを抱え込まないという姿勢を大切にしたいものです。

 

藤野   敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。