黒田・日銀とイエレン・FRB、実務力で軍配が上がるのは

“実力派”ジャネット・イエレン議長ってどんな人?

日銀の「新たな枠組み」は理解しにくい? 効果に疑問も

2016年9月20日・21日は、くしくも、日米の金融政策会合が同日に開かれました。日銀はこの会合で「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果についての「総括的な検証」を行うとともに、新たな枠組みを決定しました。

その内容は大きく2つ。まず、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)、そして、オーバーシュート型コミットメントです。発表以来、これらの言葉の意味を解説する記事がいくつも出ているので、ここでは割愛しますが、なかなか理解しづらいですね。

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さらにイメージしづらいのが、これらによる「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」です。今年の1月に導入したばかりの「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」とどう違うのか判断が難しいところです。

マイナス金利をやめたのか、そもそもこれらの取り組みはさらなる金融緩和なのか、さらには、これらの枠組みで2%の物価目標を達成できるのか、メディアや記者によっても評価が分かれました(物価安定の目標については、厳しいという意見が多いようです)。

黒田東彦総裁の任期は2018年4月までです。再任も可能とされていますが、残された時間でどのようなかじ取りをするのか、注目されます。

実務家が揃うFRBの中でも、イエレン氏は先頭を行く

黒田総裁がよく比較されるのが、米連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長です。

イエレン氏はFRB初の女性議長であることはもちろんですが、注目されるのはそれだけではありません。「史上最もFRB議長にふさわしい」と呼ばれるほど、実力と影響力を兼ね備えた人物なのです。

イエレン氏は現在70歳。2014年2月に第15代FRB議長に就任しました。第14代議長はベン・バーナンキ氏で、在任期間は2006年~2014年でした(2010年に再任)。

日銀の政策委員会は、大蔵省(現・財務省)出身の黒田総裁、日銀マンの曽根副総裁を除くと、審議委員の多くがエコノミストです。このため、日銀の政策委員会は実務経験がない、机上の空論と呼ぶ人もいます。

対して、FRBの理事は銀行総裁、官僚、学者、投資銀行幹部と実務家が多い印象を受けます。さらにFRBが定期的に開く連邦公開市場委員会(FOMC)の委員は全員、連邦準備銀行の総裁です。

バーナンキ氏は経済学者でしたが、イエレン氏は実務経験が豊富です。ビル・クリントン政権の大統領経済諮問委員会委員長(1997年~1999年)、サンフランシスコ連邦準備銀行総裁(2004年~2010年)、連邦準備制度理事会副議長(2010年 - 2014年)などを歴任しています。

ちなみに、イエレン氏の夫は、ノーベル経済学賞を受賞しているジョージ・アカロフ氏です。

タカ派との対立でリーダーシップを発揮できるか

その米国では年内利上げの有無が注目されています。FOMCのメンバーはイエレン氏を除き、いずれも連銀総裁です。ただし、それぞれの利上げに対するスタンスは異なります。利上げに慎重な立場を「ハト派」、利上げに積極的な立場を「タカ派」と言います。

イエレン氏は議長就任時には「超ハト派」と呼ばれましたが、一時は利上げを容認する発言も見られ、「ハト派返上」と思わせるような動きもありました。ただ、昨今は利上げに慎重で、「やはりイエレン氏はハト派」とも言われています。

9月に行われたFOMCでは、目標FF(フェデラル・ファンド)金利を据え置くことを決めました。ただ、イエレン氏自身は「利上げの根拠は強まってきた」とコメントしています。

年内利上げの可能性は高まってきたとも言えますが。市場の見方は冷ややかです。要因の一つは11月に迫った大統領選です。共和党のトランプ候補は、「イエレン議長は、クリントン候補を支持するオバマ大統領のために株高を維持するよう利上げを見送り続けている」と非難しました。

もちろん、FRBは政治の影響を否定していますが、投票を直後に控えた11月1日・2日の会合では、追加の利上げはしないのではないかという見方が多いようです。

9月21日の会合では、投票権を持つ10人のうち3人が、金利の据え置きに反対し利上げを主張しました。イエレン氏がこれらの意見対立を前に、どうリーダーシップを発揮するのか注視したいところです。

 

下原 一晃

マーケティング会社、リクルートなどを経て、PRプランナー・ライターとして独立。
株式投資、投資信託をはじめとする資産形成や、年金、相続などに関する情報提供を行っている。あわせて、個人投資家がテクニカル理論を身に付けるためのヒントや知識の紹介にも取り組んでいる。
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)。