宇都宮の餃子は作られた食文化、街おこしは成功したのか?

餃子の街にも確実に押し寄せる人口減少の波

北関東最大の都市である宇都宮は餃子の街

宇都宮市(栃木県)に行く機会がありました。宇都宮市は人口が約52万人の北関東最大の都市です。人口規模で見ると、松山市(愛媛県)とほぼ同じになります。そして、宇都宮と言えば、何と言っても「餃子」が全国的に有名です。“宇都宮=餃子”と連想する人は、決して少なくないでしょう。実際、宇都宮は餃子の街なのです。

宇都宮の"シンボル"、駅前の餃子像

餃子、餃子、餃子

宇都宮駅に降りると、すでに餃子、餃子、餃子、これでもかと言うくらい餃子です。駅前を始めとして市内の至る所に餃子の専門店があります。宇都宮では中華料理店で餃子を食べるのではなく、餃子専門店で食べるのがごく当たり前のようです。普通は、ラーメンの箸休めで餃子を注文しますが、宇都宮では餃子の箸休めにラーメンを注文すると聞きました。

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現在、協同組合「宇都宮餃子会」に加盟する店は80店以上の模様ですが(2013年)、非加盟店を合わせると、市内には200店以上の餃子専門店があると見られています。餃子の種類も、チーズ入りやピザ風など、バリエーションが豊富です。

豊富な種類に驚く

宇都宮の餃子は伝統のない“作られた食文化”

しかし、生後間もなくから小学校4年生まで宇都宮で過ごした筆者は、ハッキリと断言します。これは“作り上げられた食文化”であり、郷土の伝統や歴史とは一切関係ないものです。筆者が宇都宮を離れた1976年、餃子の街の面影など全くありませんでした。宇都宮に30年以上住んでいる方は、間違いなく、同じ感想をお持ちかと推測します。

さすがに、宇都宮市の公式HPには、街おこしのために作られた食文化とは書かれていません。しかし、前述の「宇都宮餃子会」のHPには、『宇都宮の名を「餃子」を通してPRする方法として、宇都宮市が「餃子日本一であること」等を発表』と書かれていますし、他の様々なウエブサイトにも、街おこしの目玉策として1990年12月から推進したことが明記されています。

筆者が調べた限りでは、当時の市の職員が街おこしになることを探していたところ、総務省統計局の「家計調査年報」の中にある「餃子購入額」において、宇都宮が常に上位に挙がっていることに注目し、「餃子」をキーワードとしてPRに注力してきたことが始まりのようです。

1990年と言えば、バブル経済が崩壊して先行きが危ぶまれた頃です。宇都宮市の職員も“何かしないと…”という危機感があったのかもしれません。

さて、始めた動機はともかく、餃子が宇都宮の代名詞になったことは事実でしょう。しかし、本来の目的であるはずの街おこしはどうなったのでしょうか。

餃子店が軒を連ねる

戦後、一度も人口減少を経験していないが…

“街おこし”の成否の基準を定めるのは難しいですが、冒頭で触れた人口の推移を見てみましょう。宇都宮市の人口は戦後以降(1946年~)、周辺の他市町村を吸収して増加した特殊要因が何度ありましたが、一度も減少に転じたことがありません。餃子の街おこしに着手した1990年以降も、その吸収効果が一度ありましたが、人口は僅かですが増え続けています。

餃子目当ての観光需要は拡大中

また、餃子目的の観光需要も着実に増加しています。直近の最新データではありませんが、2014年(暦年)に宇都宮市を訪れた観光客は約1,417万人に上り、栃木県では東照宮の日光市を抑えて断トツの1位でした。さらに、最近はインバウンド需要も徐々に増え始めている模様です。こうした数字を見ると、開始から25年超を経て、餃子での街おこしは順調のように見えます。

焼き餃子と水餃子を両方トライ

確実に押し寄せている人口減少の波

しかしながら、宇都宮にも人口減少の波は確実に押し寄せており、2025年には辛うじて50万人を維持できるかという水準になる予測も出ています(国立社会保障・人口問題研究所より)。また、1世帯当たりの人口は、餃子で街おこしを始めた1990年の3.03人から2016年は2.32人へ大幅に減少しています。

今回、筆者は市内をくまなく散策したわけではありませんが、市内中心部は人影も少なく、少なからず閉塞感が感じられます。餃子による街おこしが推進されてきた25年超の間にも、相次ぐ百貨店の撤退や倒産、足利銀行の経営破綻(2003年)を受けての産業の停滞などもありました。

市内中心部の小学校、既に多くの学年が1クラス

筆者が40年前に在籍していた市内中心部にある小学校のHPを見てみました。筆者在籍時は各学年4クラス、少ない学年でも3クラスでした。しかし、現在は、1年生が2クラス、他の学年(2年生~6年生)は全て1クラスで、クラスの児童数は筆者在籍時の3分の2くらいです。なお、教員数は9人でした。

大勢の人で賑わっている餃子店と、人口減少を感じさせるデータとの大きなギャップを感じさせられた、久しぶりの宇都宮訪問でした。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。