ここ数年間で首都圏はもとより、地方でも外国人旅行者をよく見かけるようになったのではないでしょうか。いわゆるアベノミクス以降、金融政策での量的緩和が進み、為替水準は一時に比べて円安となりました。その結果、外国人が日本を旅行したり買い物したりしやすくなったのです。多くの中国人が訪日して大量に消費をする現象は、「爆買い」という表現で知られるようになりました。

外国人による需要は「インバウンド需要」や「インバウンド消費」と呼ばれています。今回は「インバウンド」というキーワードとともに、そうした需要による経済への影響や日本株の関連銘柄について見ていきます。

インバウンドが注目される背景とは

そもそもインバウンド(inbound)とは聞きなれない言葉ですが、どのような意味なのでしょうか。

インバウンドというのは、「飛行機や船舶等が到着する」といった意味です。つまりインバウンド需要やインバウンド消費とは外部(国外)からの需要、消費という意味で捉えておくと良いと思います。

では、インバウンドがなぜ注目されるのでしょうか。その背景には訪日外客の急激な増加があります。2015年に日本を訪れた訪日外客数は2,000万人弱で、前年比+47%増と急激に伸びています。

また、過去の傾向を見ると、リーマンショックや東日本大震災などの時期は一時的に減少することもありましたが、継続的に増えています。2016年は円高に振れたこともあり訪日外客数の動向に懸念もありますが、8か月累計で前年同期比+25%増と、引き続き伸びていることが分かります(図表1参照)。

図表1:訪日外客数の推移(百万人, 棒, 左)と伸び率(%, 赤線, 右)

出所:日本政府観光局の統計をもとに投信1編集部作成

この訪日外国人観光客数は今後どこまで拡大するのでしょうか。安倍晋三首相を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」では、2020年に訪日外国人旅行者数を4,000万人にするとの目標を掲げています。4,000万人というのは2015年の倍近い数です。果たしてそのような目標を達成することができるのでしょうか。

この4,000万人という観光客数の水準を理解するために、海外諸国の旅行者数を見てみましょう。世界で最も外国人訪問客数が多いのがフランスです。2014年には8,300万人の外国人がフランスを訪れました。次いで米国(7,400万人)、スペイン(6,400万人)、中国(5,500万人)、イタリア(4,800万人)、トルコ(3,900万人)といった順です。

出所:日本政府観光局「世界各国、地域への外国人訪問者数ランキング」

旅行者の移動のしやすさを考えると、日本が島国であるという条件が影響する面があるとは思います。ただ、日本の経済規模、観光資源の豊富さやその魅力などを考えれば、日本への外国人観光客数はまだまだ増える余地があるのではないでしょうか。安倍首相が東京オリンピックの開催される2020年に4,000万人を目指したくなるのも分かる気がします。

インバウンドで日本経済はどう変わるのか

さて、インバウンドが拡大する、つまり外国人観光客が増加すると日本経済にどのような影響があるのでしょうか。やや専門的にはなりますが、GDP統計上、インバウンド需要は「輸出」にあたります。外国人が訪日して買い物をしたりサービスを受けたりすれば、日本から見れば財やサービスを輸出したことになります。輸出もGDPをけん引する項目です。

また、インバウンドはGDPにおける輸出をけん引するだけにとどまらない可能性もあります。外国人向けに観光インフラを整備することにより、日本人も旅行や娯楽に対してより消費を増やすようになるかもしれません。日本国内の消費はGDPの半分以上を占めます。インバウンドによる効果が日本人の消費を刺激することになれば、いっそう経済には好影響がもたらされます。

安倍晋三首相は、名目GDPを現在の500兆円から今後は600兆円に拡大することを目指すとしています。インバウンド需要をしっかりと取り込み、それを拡大させることに大きく期待しているのではないでしょうか。

インバウンドにより恩恵を受ける銘柄とは

では、インバウンドの拡大でどのような産業が恩恵を受けるのでしょうか。外国人観光客が増えることですぐに恩恵を受けそうな産業は、まずは宿泊ではないでしょうか。宿泊施設の需給が今後ますますひっ迫すれば、稼働率の上昇だけではなく、宿泊料のアップなども期待できます。

たとえば、藤田観光(9722)は椿山荘などのホテルを運営していますし、星のやを中心としたREITである星野リゾート・リート投資法人(3287)は、ラグジュアリーな宿泊先を希望する外国人が増えれば恩恵を受けそうです。

また、移動手段として運輸会社なども注目できます。2016年10月に上場する九州旅客鉄道(9142)は、観光スポットを多数抱える九州の地の利を活かすことができるでしょう。株主優待制度も魅力的な内容ですので、注目です。

参考記事:JR九州の株主優待をお得に楽しむ前に知っておきたいIPOとは

そして、観光でやはり楽しみなのは食事です。日本食の中でも気軽に楽しめてかつエンターテインメント性があるのはやはり回転寿司でしょうか。回転寿司でいえば、くらコーポレーション(2695)やカッパ・クリエイト(7421)といった企業があります。かっぱ寿司の新幹線で運ばれてくるお寿司は子供には大人気です。

まとめ

外国人観光客が日本で消費をするという従来のインバウンドとは違う「越境EC」 という形で、国内の化粧品や食品などの販売が海外でも伸びています。

また、インバウンドが拡大することで国内の企業が様々な工夫や新規事業展開をしてくる可能性があります。たとえば、宿泊施設が不足してくればエアビーアンドビー(Airbnb)のように個人の家を提供するようなサービスも広がるかもしれません。そうなれば、シェアリングエコノミーもインバウンドが拡大する際には大きなテーマにもなりそうです。

日本人の想像を超えたところで外国人に人気が出そうなサービスや商品はまだまだありそうです。そうした企業を発掘するのも株式投資の醍醐味ではないでしょうか。

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青山 諭志