【JR九州IPO】2016年のIPOは勝率8割超。JR九州は第二のLINEになれるか?

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10月6日に九州旅客鉄道株式会社(証券コード:9142 以下、JR九州)のIPOの仮条件が2,400~2,600円と決定しました。7日からブックビルディング(抽選)開始です。

JR九州といえば、上場前から株式分割(小口化)、株主優待の拡充など、個人投資家を強く意識した施策を打ち出している企業です。また、2016年に上場した企業の中では、LINEに次ぐ大型上場となる点でも、多くの投資家の注目を集めています。

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すぐにブックビルディング(抽選)に参加しようとしている人も多いことと思いますが、2016年のIPO市場の環境についておさらいした上で、今一度、JR九州のIPO概要、魅力と注意点をまとめておきましょう。

2016年のIPO市場の勝率は8割超!

2016年10月6日の時点で56社がIPO(上場)しました(REITは除く)。その内46社の初値(上場後最初についた株価)が公募価格(IPOに当選した投資家が手に入れる株価)を上回っており、勝率はなんと82%です(1社は公募価格=初値で引き分け、9社は公募価格>初値)。IPO株はその勝率の高さ故に「お宝」といわれますが、2016年もなかなか好調と言ってよいでしょう。

2016年のIPO一覧

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出所:各種公開資料より投信1編集部作成

JR九州のIPO案件概要とスケジュール

JR九州の売出スケジュールとIPO価格等をおさらいします。

JR九州のIPO株を手に入れるには、販売を手掛ける証券会社に口座を開設して、10月7日から14日にかけて行われるブックビルディング(抽選)に参加する必要があります。証券口座の開設には、スピーディーに対応してくれるネット証券でも2-3営業日はかかるので、興味がある方はSBI証券SMBC日興証券マネックス証券カブドットコム証券、松井証券あたりで口座開設しておくのが良いでしょう。

上場時の株価が2,400円~2,600円だとすれば、最低投資予算は24万円~26万円程度です。

参考(ネット証券自体について知りたい方向け)
>>ハードルが低めでクオリティは高い、株初心者におすすめのネット証券会社は?

スケジュール 

仮条件決定日 2016年10月6日
ブック・ビルディング期間 2016年10月7日から10月14日まで
売出価格決定日 2016年10月17日
申込期間 2016年10月18日から10月21日まで
受渡期日(=上場日) 2016年10月25日

IPO価格等 

想定価格(A) 2,450円
仮条件(B) 2,400~2,600円
公募価格(C) -
初値(D) -
上場時の発行済株式数(E) 160,000,000
想定時価総額(F)=(A)×(E) 392,000,000,000
上場時の市場流通株式数(G) 160,000,000
オファリングレシオ(H)=(G)÷(E) 100%

元引受取引参加者等

三菱UFJモルガン・スタンレー証券、野村證券、JPモルガン証券、SMBC日興証券、大和証券、みずほ証券、岡三証券、東海東京証券、いちよし証券、SBI証券、SMBCフレンド証券、岩井コスモ証券、エース証券、東洋証券、マネックス証券、丸三証券、藍澤證券、水戸証券、エイチ・エス証券、極東証券、髙木証券、立花証券、ちばぎん証券、内藤証券、日本アジア証券、松井証券、むさし証券、あかつき証券、西日本シティTT証券、日の出証券、福岡証券、丸八証券、光世証券、リテラ・クレア証券、ゴールドマン・サックス証券、UBS証券、クレディ・スイス証券、シティグループ証券、バークレイズ証券、マッコーリ―キャピタル証券、メリルリンチ日本証券、安藤証券、今村証券、ウツミ屋証券、岡三にいがた証券、岡地証券、木村証券、共和証券、上光証券、第四証券、長野證券、中原証券、西村証券、日産証券、ニュース証券、八十二証券、ばんせい証券、フィリップ証券、三木証券、三田証券、山和証券、豊証券、リーディング証券

詳細に興味がある方は、「JR九州が上場(IPO)決定!-株価、事業、幹事証券まで徹底解説」をご覧ください。

JR九州の魅力と注意点

JR九州はどのような会社か

JR九州は、九州に路線を置く旧国鉄企業です。2011年に全線開通した九州新幹線、2013年から運行を開始した「ななつ星in九州」など、観光客やインバウンド需要の取り組みを積極的に展開しています。

同社の事業構成は、約37%を占める鉄道事業である運輸サービスが主体となりつつも、建設、不動産、流通などの事業も行っており、事業リスクは分散されているように見えます。収益については、不動産事業の占める割合が非常に大きい一方、運輸サービス事業は2016年3月期にようやく黒字となったばかりです。今後、運輸サービスをどこまで改善し伸長させていけるかがポイントとなりそうです。

また、中長期的な成長は、観光地としての九州の魅力をいかに伝え、観光需要を取り込めるかに尽きるかと思います。同社の沿線にはアジアからも多くの集客が見込める福岡に加え、鹿児島や長崎といった観光資源の豊富な地域も多数存在します。九州全体が栄えることで、同社の収益機会も増えていくことになるでしょう。2016年4月の熊本地震の影響もあろうかとは思いますが、同社の事業開発とインフラ整備に期待したいところです。

上場前の株主構成

JR九州は2016年8月18日付けで1株を500株に分割しました。現在、独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)がこの全株(32万株→株式分割により1億6千万株)保有しています。

今回は、この1億6千株のすべてが売り出しの対象となっています。売り出しの内訳は、国内売り出し1億2千万株、海外売り出し4千万株が予定されていますが、需要状況等を勘案し、最終的には売出価格決定日(2016年10月17日)までに決定されるとのことです。

株価を考える際のポイント

今回出た仮条件価格は1株2,400円~2,600円、仮条件をベースにしたJR九州の時価総額は3,840億~4,160億円となります。

時価総額をレンジ中央の4,000億円とすると、JR九州のPER(株価収益率)は約11.1倍(会社予想利益ベース)、PBR(株価純資産倍率)は約1.3倍(実績ベース)と推計されます。他の上場しているJR3社と比較して特段の割高感はありません。ただし、今後の成長性、特に収益での伸びしろを見せることができなければ、もう少し低い評価になる可能性もあります。また、時価総額が他のJR各社に比べて小さく、外国人投資家や大手の機関投資家がポートフォリオに組み入れる検討もしない可能性もあります。

株主優待を充実!個人投資家を取り込めるか

こうしたこともあってか、JR九州はより多くの個人投資家に株式を保有してほしいと考えている様子がうかがえます。それを裏付けるのが今回のJR九州の株主優待の充実ぶりです。

保有株数に応じて鉄道株主優待券がもらえるほか、主要観光都市である長崎、福岡、熊本、大分、宮崎、鹿児島、屋久島のJR九州ホテルの宿泊基本料金が3割引(休前日は2割引き)、ホテルオークラホテル小倉の宿泊基本料金が5割引きとなるなど、とてもお得です。

【鉄道株主優待券】

保有株式数 発行枚数
100~1,000株未満 100株ごとに1枚
1,000~10,000株未満 10枚+1,000株超過分  200 株ごとに1枚
10,000~20,000株未満 55枚+10,000株超過分 300株ごとに1枚
20,000株以上 100枚


【JR九州グループ株主優待券(100株以上所有の株主に一律5枚を発行)】

対象施設等 優待内容
高速船ビートル 特別割引運賃 福岡-釜山往復 10,000 円
うちのたまごEGG&SWEETS 会計 100 円引
八百屋の九ちゃん 会計 100 円引
ステーションホテル小倉 宿泊基本料金5割引
ホテルオークラJRハウステンボス 宿泊基本料金5割引
JR九州ホテル (新宿、福岡、長崎、熊本、大分、宮 崎、鹿児島、屋久島) 宿泊基本料金3割引(休前日は2割引)
豊後・大山ひびきの郷 宿泊基本料金3割引(休前日は2割引)

出所:2016年9月15日付JR九州のプレスリリース「株主優待制度の導入に関するお知らせ」

注意しておきたいポイント

注意点の一つとして意識しておきたいのは、IPOで市場に放出される株式の多さと市場からの資金吸収額です。JR九州の株式は現在、独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が保有しているのですが、今回のIPOでは、同機構が持つ全株式が市場に放出され、4,000億円規模の資金を市場から集めることになります。前述の、機関投資家のポートフォリオ組み入れが少ないリスクもあわせて、株式の需給という点でリスクがあることは念頭に置いておくべきでしょう。

ちなみに、2016年最大のIPOと言われたLINEは、時価総額こそ大きかったものの、IPO時の市場からの資金吸収額は1,300億円強(公募価格ベース)に留まりました。株式需給が崩れることもなく、初値が公募価格を48%も上回る大成功案件となりました。

需給面のリスクはJR九州としても当然に認識しているはずです。それ故に、全国津々浦々の投資家にリーチできるよう、多数の証券会社がJR九州株の販売を手掛けることになっており、小口化や株主優待の充実で、個人投資家にとっての保有メリットを高める努力をしているものと思われます。

まとめ

いかがでしたか?LINEに次ぐ大型上場案件として注目を集める可能性が高いJR九州のIPO。需給面でのリスクはありながらも、お得度の高い株主優待など、個人投資家に長期保有してもらえる工夫もなされていて、興味深い案件になりそうです。

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。