日産のゴーン社長が三菱自動車の会長に就任へ

10月20日、三菱自動車(7211)の会長(代表取締役)に日産自動車(7201)のカルロス・ゴーン社長が就任する人事が正式決定しました。ゴーン氏は、日産自動車の社長との兼任になります。また、三菱自動車の社長は、現在の益子社長が留任することも決まりました。

燃費データ改善問題の発覚後、日産自動車の傘下入り

三菱自動車は4月下旬に、長年にわたって燃費データ改ざんを行っていたことが明るみに出て、大きな社会問題となりました。消費者にとって燃費性能は、新車購入時の重要な選別要素となります。その燃費数値が虚偽だったわけですから、消費者からの信用が地に堕ちるのも当然でしょう。

この燃費データ改ざん問題の発覚以降、国内販売の一時停止とその後の販売不振、対象車種の保有者への賠償金支払い等により、三菱自動車は深刻な業績悪化を余儀なくされました。結局、軽自動車の共同生産事業などで提携関係にあった日産自動車から34%の出資(約2,370億円)を受け入れ、日産自動車の傘下に入って再建に向かうことが決まっています。

ちなみに、三菱自動車の2017年3月期業績は、▲2,400億円の巨額最終赤字に陥る見込みです。

ただ、三菱自動車が日産傘下に入って、どのような形で再建を果たしていくのか、その具体策は明確にはなっていませんでした。両社の戦略アライアンスが発表されて以降、日産から早々に開発担当の副社長(代表取締役)が派遣されていますが、業績立て直しに向けた施策に関しては今後徐々に打ち出されていくと見られていたと思われます。

いきなり最強のカードを切った日産

その日産が真っ先に講じた策がゴーン氏の会長就任となったわけですが、いきなり最強のカードを切ったと言えましょう。日産の本気度が分かるのと同時に、三菱自動車の状況がいかに厳しいかを物語っています。

厳しい見方をすれば、三菱自動車の自浄努力には期待していないということでしょうか。そして、約2,370億円という投資に対するリターンを、着実に確保する施策とも受け取れます。

株価は急騰、“ゴーン・プレミアム”は健在

10月19日に観測記事として流れたこのニュースに対して、株式市場は即座にポジティブな反応を示しました。19日の三菱自動車の株価は、前日終値を若干下回る水準で推移していました。ところが、14時過ぎにこのニュースが流れた直後から株価は急騰し、一時は前日比約+11%の上昇となりました。終値も同約+8%高で引けています。

もし、ゴーン氏以外の人の会長就任というニュースだったならば、ここまでの株価急騰は起きなかったと思われます。なお、翌20日の株価も、大量の出来高を伴って、終値は約+3%高で引けています。

2016年10月19日の三菱自動車の株価の動き

経営危機にあった日産が奇跡の業績回復を果たし、その後はルノー社とのアライアンスを前面に出して世界有数の自動車メーカーへの復活を成し遂げたのは、ゴーン社長の経営手腕が最大の要因であることは紛れもない事実です。深刻な業績不振に陥った三菱自動車を、ゴーン流マネジメントで劇的に復活させてくれるという期待は相当大きいと見られます。

三菱自動車は一筋縄では行かない相手?

しかし、今度の相手(三菱自動車)は、一筋縄では行かないかもしれません。三菱自動車が最初のリコール隠匿問題で経営悪化が顕著となった2000年以降、ダイムラーベンツ社、三菱重工、三菱商事など外部から社長を受け入れ、様々なテコ入れ策を実施してきましたが、結果的には、何も変わらなかったと言えます。

もちろん、その間に、リーマンショックや東日本大震災など予期せぬ事態はありましたが、その企業体質が変わることはなかったと判断せざるを得ません。

会長に就任するゴーン氏が、今後どのような改革を行うのか注目が集まるでしょう。“ゴーン氏は、あの三菱自動車も復活させた”となるのか、“ゴーン氏でも、あの三菱自動車は復活させられなかった”となるのか。恐らく、早ければ1年後には、その答えの兆しは見えているでしょう。

三菱自動車の過去10年間の株価推移

 

LIMO編集部