2016年10月20日、任天堂(7974)は新型据え置き型ゲーム機「ニンテンドー スイッチ(Nintendo Switch)」を発表しました。ところが、翌日の21日の株式市場では任天堂の株価は対前日比▲6.6%も下落しました。新しいゲーム機を発表したのに株価が大きく下落したのはなぜでしょうか。

ニンテンドー スイッチは新しいゲーム体験を変えるハードか

20日に公開されたプロモーション動画の中でのニンテンドー スイッチの使い方は、一言で言えば「屋外にも持ち出せる据え置き型ゲーム機」です。

もちろん、これまでのWiiやWii Uのように家の中でも遊べますが、最大のポイントは屋外でパネルを見ながら複数人でゲームを楽しむことができるという点です。任天堂としてはこれまでの「据え置き型ゲーム機は家の中で遊ぶハード」という先入観を崩したということなのでしょう。

ところが、株式市場では寄り付きから株価は大きく下落し、結局、終値は対前日比で▲6.6%も下落してしまいました。これまでの新型据え置き型ゲーム機への期待が大き過ぎたのでしょうか。それとも、ニンテンドー スイッチでは任天堂の長期的な利益拡大をけん引できないという印象を持ったのでしょうか。

株式市場では様々な思惑が交錯したでしょうが、やはり1つ言えるのは、プロモーション動画からはゲーム体験が新しいものに変わったというところが見えてこなかったと言えるでしょう。

任天堂がゲーム体験を変える時は入力インターフェースが変わる時

今回、ゲーム体験に変化がないとの印象を与えた理由の1つとして、ユーザーインターフェースにほとんど変化がなかったことが考えられます。

これまで爆発的にヒットしたニンテンドーDSやWiiは、それぞれタッチパネルでの入力、モーションコントローラーによる操作というように、ゲームをする際に指示をインプットする入力インターフェースが大きく変わってきました。

ところが、今回のニンテンドー スイッチにはそうした変化が見られません。プロモーション動画からは利用シーンの多様化は見受けられますが、入力面で新たな技術を活用し、ユーザーインターフェースがWii/Wii Uから大きく変わったように見えないのです。

これでは、利用シーンによる新たなゲーム体験での変化はあるものの、ゲーム体験そのものが変わるとは言えないでしょう。

余談ですが、ソニーが発売を開始したPlayStationVRの特徴は出力インターフェースの変化です。今回のVRは非常に目新しさがありますが、これまでゲーム市場のすそ野を拡大してきた入力インターフェースの変化とは異なることには注意をしておきたいところです。

今後の任天堂をどう見るか

ニンテンドー スイッチの発売は2017年3月ですが、その前に、先日発表されたスマホ向けアプリゲーム「スーパーマリオラン」が2016年12月に配信開始となります。

これはハードの販売を伴わないので任天堂のこれまでの事業モデルとは異なりますが、「ポケモンGO」の世界における爆発的な人気を見ると、期待が持てます(ちなみに、ポケモンGOは任天堂への収益には大きくは貢献しないと会社が先日発表しています)。年末も同社関連のイベントが目白押しなので、引き続き注目です。

泉田 良輔