この記事の読みどころ

10月の消費者信頼感指数が低下したことで、個人消費の先行きに一抹の不安も感じさせます。ただし、他の消費関連指標を見ると個人消費の先行きに期待を持たせる面も見られます。

いずれにせよ、米国はこれから日本の景気にも影響を与えかねない年末商戦を迎えるだけに、消費動向は気になるところです。まだデータは限られるため先行きを占うにも慎重な姿勢は必要ですが、米個人消費は底堅い可能性もあると見ています。

米消費者信頼感指数:10月は98.6に低下、市場予想以上の落ち込み

米民間調査機関コンファレンスボードが2016年10月25日に発表した10月の消費者信頼感指数は98.6と、前月(103.5)、市場予想(101.5)を下回りました。

コンファレンスボードは発表文で、雇用環境に対する消費者の見通しが弱かったことなどを軟化の理由としています。一方、所得の見通しはほぼ変わらずであったとも述べています。

どこに注目すべきか:消費者マインド、ハロウィーン、年末商戦

米国では、10月28日に7-9月期GDP(国内総生産)が公表予定です。全体の成長率は前期に比べ改善が見込まれていますが、GDPの主要な構成項目である個人消費に注目すると、好調だった前期に比べ、7-9月期の予想はやや低下が見込まれています。

こうした中、10月の消費者信頼感指数の低下には先行きへの不安も感じさせますが、次の点に注目すると、注意は必要ながら底堅さを感じさせる面も見られます。

1点目は、細かな話ですが、データのクセが考えられます。改善が続いてきた消費者信頼感指数はすでに高水準となっています。消費者信頼感指数のデータ作成は、無作為に選んだ家計に、消費などについて3つの選択肢(良い、悪い、中立)を選んでもらう方式です。

このような方法で集計すると、クセとして、過去に「良い」が多く選ばれると反転しやすくなる可能性があります。

2つ目は、他の消費関連指標は概ね堅調なことです。例えば、9月の小売売上高は前月比0.6%と、8月のマイナスから回復しています。もっとも、消費者信頼感指数の期間と整合的になるには今後のデータで確認する必要はありますが。

そこで、あくまで参考ですが、全米小売業協会(NRF)が公表した、ハロウィーン関連の売上(予想)を見ると、2016年は堅調な売上が見込まれています。

ハロウィーンの売上は半分程度が10月の最初の2週間に集中(残りの半分は10月後半)しています。もちろん、ハロウィーンと一般消費の関係は不明ですが、少なくともハロウィーン関連の支出は堅調であった可能性があります。

もっとも、ハロウィーン関連支出項目を見てみると、キャンディを筆頭に変装用の衣装やカードなどで、消費品目としては小粒です。ハロウィーンの売上は、その後に控える年末商戦(11月~12月)の売上規模に比べようもありません。推定では、ハロウィーンの売上は年末商戦の1%程度です。

そこで、同じ全米小売業協会(NRF)が公表した2016年年末商戦の小売売上高予想を見ると、前年比+3.6%の6,558億ドルと、昨年の同+3.2%から小幅な加速を見込んでいます(うちオンライン販売は同+7~+10%)。

年末商戦関連の臨時雇用については、64~69万人増加するとの見通しも示されています。他の調査会社などが提供する年末商戦予想を参照する必要はありますが、あえて悲観的に見る必要性は低いように思われます。

米国で低い失業率の割には消費者マインドが抑えられた要因の1つに、11月8日の大統領選挙の先行きが不透明であったことが影響した可能性が考えられます(他の消費者マインド調査でもマイナス要因としてあげられているケースが見られます)。

しかし、年末商戦が本格化する時期には大統領選挙は決着がついていると思われ、個人消費の不透明要因が減る可能性が考えられますます。注意は必要なものの、米個人消費は底堅い可能性もあると見ています。

ピクテ投信投資顧問株式会社 梅澤 利文