この記事の読みどころ

  • ある特定の業界や分野で、「20xx年問題」と言われることがあります。この表現が普及したきっかけは「2000年問題」でした。以来、大小の違いはあれ、「20xx年問題」なるものが折に触れて取り沙汰されてきました。
  • 「20xx年問題」と言われるものは、比較的予測しやすい事象を原因として、「何か大変なことになりそう」と思えるような変化が多いようです。それに関連する業界を見ていく上で、それが一時的なものか、それとも構造的な変化につながるものなのかを考えていくことが大切です。
  • 前編では「事業承継の2017年問題」と「ジェネリック医薬品の2017年問題」を紹介しましたが、「2017年問題」と言われるものをさらに2つ(+おまけ1つ)挙げてみました。

建設業の2017年問題

構造的には最も深刻な問題になる可能性を秘めているのが、「建設業の2017年問題」です。

建設業は社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金保険)の加入率が他の業界より低く、国土交通省が音頭をとってこの状況を打開しようとしています。2017年4月以降、社会保険未加入企業を下請けに選定させない、未加入労働者を建設現場に入場させない、と強く指導すると言われています。これが「建設業の2017年問題」です。

法定福利費の増加で建設業の企業負担が増え、収益を圧迫することが当然考えられますが、それ以上に、人手不足がさらに進む可能性が懸念されそうです。

建設業はこの15年くらいで、他の産業に比べても労働者の高齢化が進みました。また、若年労働者の入職者も激減しています。その一方、東京五輪や震災復興のための需要が強く、慢性的な人手不足に陥っています。おそらく現場レベルでは、何とか人のやりくりをしてしのいでいるものと考えられます。

そうした状況下で、社会保険未加入者が締め出されるとしたら、人手不足がさらに進行し、工期遅れの常態化や、建築コストのさらなる上昇が予想されます。多重下請け構造を構成する建設会社としてはきついかもしれませんが、建設業界の周辺では新たな事業機会を見出す企業があるかもしれません。

関連する上場企業としては、建設会社全般のほか、建築技術者派遣を主力とする夢真ホールディングス(2362)、足場などの仮設機材レンタルのエスアールジータカミヤ(2445)やアルインコ(5933)の動向が気になるところです。

スポーツ界の2017年問題

首都圏で建て替えや改修が相次ぎ、コンサート会場の不足がピークとなる「劇場・ホールの2016年問題」がありました。特に2016年2月から5月にかけては、横浜アリーナとさいたまスーパーアリーナが同時に使えなくなるという事態が起きました。

乃木坂46のデビュー記念ライブが開催延期になったのも、この「劇場・ホールの2016年問題」で会場が確保できなかったことが原因と言われています。

同じような理由で、今度は競技場不足が深刻となる「スポーツ界の2017年問題」が起きるとされています。たとえば、国立代々木競技場第一体育館が2017年春から耐震補修工事を行うために閉鎖されます。代々木で開催していた大会を他の会場に振り替えて行おうとしても、代替できる会場は少なく、大会開催者は頭を悩ませているそうです。

東京は五輪の施設見直しでもめています。見直しにあたっては、「レガシー(遺産)になるものを作れるかどうか」が論点の1つになっているようですが、五輪会場に限らず、既に存在しているスポーツ施設をどう有効活用するかに、もっと意識を向けてほしいものです。

土・日曜と重なる祝日が多い2017年

「2017年問題」と言えるほどではないので、おまけ扱いになりますが、2017年は土・日曜と重なる祝日がやたらと多い年です。カレンダーを見てみると、1月1日、2月11日、4月29日、9月23日、12月23日の祝日が土・日曜となります。

2016年は土・日曜と重なる祝日がなかったため、それと比べると何だか損した気分になります。前年同月比の数字を公表する小売、外食やウェディング関連の企業の中には、思わぬ数値が出てびっくりすることがあるかもしれません。

「20xx年問題」にどう向き合えばよいか

「20xx年問題」として取り上げられるものは、比較的予測しやすい変化を原因としているものの、どれだけの影響が生じるかが未知数で、「何か大変なことになりそう」と思ってしまうものが多いようです。そのため、気がついた時にはほとんど影響もなく終わっていたというものもありますし、ボディブローのようにじんわりと影響を与えるものもあります。

今回は2017年問題を取り上げましたが、2018年以降も毎年何かしらの「20xx年問題」があるはずです。関連する業界を見ていく上で、それが一時的なものか、それとも構造的な変化につながるものなのかを考えていくことが大切です。

 

藤野 敬太