ヤフー株、決算翌日に+4%上昇

2016年11月2日、ヤフー(4689)の株価は前日比+4%上昇しました。

この日は日銀が物価上昇率目標の達成時期を先送りし、追加緩和も見送られました。米国ではクリントン大統領候補のメール問題が再燃し、米大統領選挙に不透明感が漂い始めました。その結果、日経平均株価、TOPIXともに前日比▲1.8%下落し、ほぼ全面安という展開になりました。そんな環境でのヤフー株の独歩高は大いに目を引きます。

2017年3月期Q2累計決算は大幅減益

しかも、前日の2016年11月1日に発表された同社の2017年3月期Q2累計決算は大幅減益になっています。売上高こそ対前年同期比+65%増となりましたが、営業利益は同▲34%減と大幅に減っています。7-9月期だけを取り出すと、営業利益は同▲52%減と急落しています。

これだけの減益決算にもかかわらず、しかも環境の悪い中、株価が上昇するのはちょっとピンときません。

”調整後”営業利益は実は増益

このからくりは、前年同期にアスクルの企業統合に伴う再測定益596億円を営業利益に計上していたことにあります。平たく言えば、ヤフーがアスクルを子会社化した際に、既にヤフーが持っていたアスクル株の価値を見直して利益を計上したということです。

このような一過性の要因を”調整”すると、営業利益は7-9月期に減益ではなく同+15%増益になっています。最終損益にあたる親会社の所有者に帰属する四半期利益は、表面上は▲63%減ですが、”調整”すると+6%増となっています。

業績の中身を見ていくと、PCブロードバンドの王者だったヤフーがスマホ移行に成功し、全体としては広告が伸び、eコマースも伸び、さらにアクティブユーザー数、有料会員数も増えてきています。アマゾン、楽天の追撃を狙うショッピングについても、基盤整備が進んできたと言っていいでしょう。こうした内容を評価して株価が上昇したと解釈できそうです。

営業利益を”調整”して考えなければならないという不思議

さて、筆者が申し上げたいのは営業利益の推移を考えるのに、決算のヘッドラインにある営業利益をいちいち”調整”する必要があるのはいかがかということです。特に、企業結合に伴う再測定益は筆者の感覚では営業利益ではなく特別利益です。この問題はヤフー1社の会計処理というよりも、監査法人なども含めた関係当事者全体の考え方にあるでしょう。

現在、決算短信の簡素化に向けた動きが出ていますが、一目でわかりやすい決算を作ることのほうが先決ではないかと考えます。

 

LIMO編集部