名古屋グランパスエイトのJ2降格が決定

11月3日に行われた最終節をもって、2016年のJリーグ1部リーグ(以下、J1)が終了しました。まだ年間日本一を決めるチャンピオンシップが残っていますが、公式戦は全て終了です。その最終節の注目は、J2(2部リーグ)への降格チームがどこになるかでしたが、最終戦に敗れた名古屋グランパスエイトが、初の降格という屈辱を味わう結果となりました。

サッカーに興味がない方には他愛もないニュースですが、サッカーファンにとってはショッキングな出来事だったと言えましょう。名古屋グランパスのサポーターでなくとも、驚いた人も少なくないと思われます。多くのサポーターが、栄などの繁華街でヤケ酒を浴びるほど飲んで悪酔いしている姿が目に浮かんできます。

名古屋グランパスは“オリジナル10”の1つ

名古屋グランパスは、Jリーグが発足した1991年に加盟した10チーム(“オリジナル10”と呼ばれています)の1つで、歴史ある名門クラブです。

リーグ優勝回数こそまだ1回ですが、1993年にJ1がスタートして以来、1度もJ2への降格を味わっていないクラブの1つでした。ちなみに、今回の名古屋グランパスの降格により、“オリジナル10”のうち1度も降格を経験していないクラブは、鹿島アントラーズと横浜Fマリノスの2つだけになりました。

トヨタグループの豊富な資金力が背景に

名古屋グランパスの特徴の1つが、豊富な資金力を有するスポンサーが多いことです。何しろ、運営母体がトヨタ自動車(7203)であり、デンソー(6902)、アイシン精機(7259)、豊田自動織機(6201)などのトヨタ系部品メーカーも名を連ねています。

実際、胸や背中などユニフォームにクレジットされているスポンサー名を見れば、トヨタ系のクラブであることは一目瞭然です。ちなみに、2016年になってから、トヨタ自動車による出資比率が50%超となり、名実ともにトヨタの子会社となりました。

資金力さえあればサッカーの成績が伴うわけではない

その名古屋グランパスがJ2へ降格するのです。資金力さえあればサッカーの成績が伴うわけではないことを証明する形となりました。3日にホームで行われた最終戦には、クラブの代表取締役会長でもある豊田章男氏(トヨタ社長)も駆け付けたようですが、残念な結果を見ることになりました。

名古屋グランパスの成績不振の理由は何でしょうか。戦術が徹底されなかったこと、監督の交代による混乱、ケガが相次いだことなど様々あるようですが、トヨタを含めた資金力豊富なスポンサーがいることに安心していた部分はなかったでしょうか?

トヨタの業績が好調な時、グランパスの成績は芳しくない

名古屋グランパスの成績の推移をザックリ見ると、リーグ戦の成績が芳しくなかった時期は、J1開始直後を除けば、2003年~2007年(7位、7位、14位、7位、11位)と2012年~2016年(7位、11位、10位、9位、16位)の2度あります。

この2回とも、円安や販売増加を背景にトヨタの業績がすこぶる好調な時でした。ちなみに今回、つまり、2017年3月期は大幅減益が予想されますが、それでも、営業利益は1兆6,000億円と日本企業の中では群を抜いています。

トヨタの業績が厳しい時、グランパスの成績は良好である

逆に、名古屋グランパスの成績が良好だった時期は、1995年~1996年(3位、2位)、2008年~2011年(3位、9位、優勝、2位)の2度あります。

実は、この2回とも、トヨタの業績が厳しい時期でした。特に、名古屋グランパスが唯一優勝を果たした2010年は、トヨタが米国における大量リコール問題で深刻な社会問題を引き起こし、収益も大幅悪化しています。また、翌2011年も東日本大震災の影響を受けました。

トヨタの業績が好調だとクラブの成績は芳しくなく、トヨタの業績が不振だとクラブの成績が良好というのは、偶然でしょうか?

早期のJ1復帰は簡単ではない、トヨタはどう支援するのか?

過去の例を見ても、J2に降格することで、主力選手の退団が相次ぐ可能性が高くなります。J2に降格すれば、クラブの収入も激減となり、選手に支払われるサラリーも大幅減少となるからです。実際、J2に降格した後、長きにわたってJ1に復帰できない例はめずらしくありません。

さて、トヨタなどスポンサー企業は、現在の資金的支援を継続するのでしょうか。報道によれば、豊田会長は支援を見直す(縮小する)ことを示唆したようです。まずは、トヨタの出方を注目したいと思います。

 

LIMO編集部