2分でわかる米大統領選挙、円ドル相場への影響

稀に見る大混戦、どちらが勝っても前途は多難?

米大統領選挙の投票日が8日に迫ってきました。先月28日に民主党のヒラリー・クリントン候補の私的メール問題が再浮上して以降、共和党のドナルド・トランプ候補が猛追しており、接戦のまま投票日を迎えることになりそうです。

選挙結果を左右する激戦州での動きが注目されるほか、議会選挙では上院の行方も気になるところですが、どちらの候補が勝つにしてもその後の政策運営には困難が待ち受けているようです。

支持率は拮抗、カギを握る激戦州

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各種世論調査を集計しているリアル・クリア・ポリティクス(RCP)によると、投票を5日後に控えた3日現在の支持率はクリントン候補が47%、トランプ候補が45.3%で、その差は1.7%ポイントと拮抗しています。

ただし、米大統領選挙は州ごとの選挙人の獲得数で決まりますので、全体の支持率よりも州ごとでの勝敗がより重要視されます。

民主党の地盤は北東部と西海岸、共和党の地盤は中西部と南部となりますが、それぞれの地盤だけでは必要な選挙人は獲得できません。どちらの地盤とも言えない州、すなわち選挙ごとに支持政党が変わる州が10州程度あり、激戦州(スイング・ステート)と呼ばれています。この激戦州での勝敗が大統領選の行方を大きく左右することになります。

激戦州ではコロラド州の行方に注目

RCPによると、選挙人獲得数の予想は全体538人のうちクリントン候補が273人、トランプ候補が265人と、まさに大接戦となっています。ただし、州レベルでの支持率が拮抗している州が11州あり、132人の選挙人の行方がまだ流動的な状況にあります。

中でもカギを握るのはコロラド州となりそうです。コロラド州の選挙人は9人で、同州での支持率はクリントン候補が42.5%、トランプ候補が40.8%でその差は1.7%ポイントです。過去2回は民主党が取りましたが、2004年の選挙では共和党が制しており、この結果は大統領選の結果と一致しています。

激戦州として有名なフロリダ州やアイダホ州はトランプ候補のリードが伝えられており、逆転するためにはこの2州は落とせません。加えて、コロラド州での劣勢を跳ね返すことができれば、過半数の270人を獲得できそうな情勢となっています。

逆に、クリントン候補から見ると、激戦州の中でリードが伝えられているペンシルベニア州とバージニア州、コロラド州を確保できれば勝利を引き寄せることができそうです。バージニアでは4.7%ポイント、ペンシルベニアでは3.4%ポイント、クリントン候補がリードしています。

議会選挙では上院に注目、形勢逆転の可能性も

大統領選挙と同時に議会選挙も実施され、大統領選の結果と合わせて注目されています。

現在、上下両院とも共和党が多数を占めており、上院(定数100、改選議席は3分の1)では共和党54議席に対し民主党が46議席、下院(定数435)では共和党の247議席に対し民主党は188議席となっています。

RCPによると、下院では共和党が既に224議席以上を獲得する見通しとなり、過半数の218議席を確保した模様です。

上院は51対49で共和党が過半数を維持する見通しですが、このうち8議席についてはまだ勝敗の行方が流動的であることから、民主党にもまだ逆転の可能性が残されています。上院には閣僚を始めとする政府高官を承認する役割があります。これにはFRB(米連邦準備理事会)議長や最高裁判事も含まれます。

最高裁判事の定員は9人ですが、現在1人の空席があります。最高裁判事は大統領が指名、上院が承認するシステムとなっており、オバマ大統領はメリック・ガーランド氏を指名していますが、共和党は次期大統領が指名すべきとして承認を先送りしています。

現在8人の判事のうち、保守派とリベラル派が4人ずつで並んでいます。通常、共和党は保守派、民主党はリベラル派の判事を指名・承認する傾向にあります。

最高裁判事は長い間保守派の牙城となっていましたが、ガーランド氏が就任した場合、形勢が逆転することになります。民主党は大統領選挙はもちろんのこと、上院だけでも過半数を奪回したいことでしょう。

どちらが勝っても政策運営は前途多難

クリントン、トランプ両候補とも、インフラ投資の拡大を訴えており、選挙結果への不透明感が払しょくされれば、財政出動による景気回復と株高を期待する声もあります。

しかし、どちらの候補が勝ったとしても、政策運営は前途多難が予想されます。

クリントン候補は積極的なインフラ投資、すなわち拡張的な財政政策を増税により賄うことで均衡的な財政路線を堅持したい構えです。しかし、下院で多数を占めると予想される共和党がこのような「大きな政府」を認める可能性は低く、特に富裕者層に対する増税には強い抵抗が予想されます。

クリントン候補に関しては私的メール問題が長期化する懸念もあります。機密情報の漏えい疑惑に加え、クリントン財団の運営にも厳しい目が向けられており、当面は政策運営どころではなくなる可能性もありそうです。

一方、トランプ大統領が誕生した場合には、上下院とも共和党が押さえる可能性が高く、一見すると政策運営も容易となりそうですが、実はそうでもありません。

トランプ候補は、インフラ投資の拡大と減税を公約に掲げていますが、極端な財政支援政策となっており、実施されれば財政赤字の急速な拡大が見込まれます。均衡財政を目指している共和党の議会が、このような赤字拡大路線を認めるとは考え難いところです。

減税自体は支持される可能性がありますが、減税をするのであればそれに見合う歳出の削減を提示しないことには、予算を通すことは難しいでしょう。

クリントン大統領誕生なら、短期のドル高も中長期的にはドル安へ

現在の為替市場では、「トランプ・リスク」に備えてドルが売られ過ぎている可能性があり、クリントン政権発足ならドルが買い戻され、短期的にはドル高となることが見込まれます。ただし、その後の政策運営は未知数であり、私的メール問題が長期化するようであれば、ドル買いも長くは続かないでしょう。

クリントン候補はドル安を志向していますので、通貨政策を担う財務長官は同候補の意向に沿った人選となることでしょう。今年に入り、昨年までのドル高基調からの転換がうかがえますので、この傾向が維持されれば米株価にはプラス材料となりそうです。

一方、トランプ大統領が誕生した場合には、政策運営への不透明感からドル、株価ともに軟調に推移するとの見通しに違和感はなさそうです。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。