札幌の老舗寿司店倒産に見るもう一つの競争激化

同業他社に目を向けてばかりだと異業種に撃沈される?

写真はイメージです

札幌の老舗寿司店「東寿司」が倒産

11月1日、北海道日本ハムファイターズの日本シリーズ制覇で沸いていた札幌市に衝撃的なニュースが流れました。それは、札幌・薄野(すすきの)にある老舗寿司店「東(あずま)寿司」が、札幌地裁から破産手続きの開始決定を受けたというものです。つまり倒産です。負債総額は約1億5,400万円だった模様です。

“何だ、今どき飲食店の倒産なんてめずらしくないよ”と感じる人も多いでしょう。しかし、東寿司は1875年(明治8年)に創業した寿司店で、札幌のみならず北海道でも草分け的な存在でした。市内観光マップにも大きく掲載されている、「北海道の寿司」「札幌の寿司」の代名詞的な位置付けです。

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また、店舗(本店)もすすきの交差点という一等地に構えており、人の流れが絶えることはありません。そして、その大きな看板は、ある意味でランドマーク的なものでもあったのです。東寿司の倒産は、札幌市民には相当大きなショックだったはずです。

札幌の寿司店を取り巻く環境は、老舗中の老舗が倒産するほどに厳しいのでしょうか?

札幌市は人口全国第5位の大都市、インバウンドにも陰りなし

ご存知の通り、札幌は人口で全国第5位の大都市です。人口減少に苦しむ他の地方都市とは完全に異なります。そして、札幌はもともと国内外からの旅行客で大いに賑わっている観光地です。

特に、アベノミクス始動以降、訪日外国人客の増加により、その賑わいに拍車がかかりました。少し大げさに言えば、“訪日外国人客バブル”です。ホテル宿泊代は高騰し、それでも週末になるとなかなか予約が取れません。世間では昨年末からインバウンド需要のピークアウトが報じられていますが、札幌は例外的な都市の1つと言っていいでしょう。

少なくとも、人口や潜在顧客数の面から見る限り、収益環境は厳しいどころか、むしろ、追い風とも考えられます。実際、東寿司の経営はどうだったのでしょうか?

東寿司の売上高は14年間で約5分の1に激減していた

民間信用調査会社の帝国データバンクによると、東寿司は、寿司だけでなく和食や郷土料理が幅広い年齢層に評価され、2001年には約6億円の売上高を計上していました。しかし、近年は営業不振が続き、2015年の売上高は約1億3,000万円まで落ち込んだ模様です。

展開している店舗数など不明な点も多いため、単純に考えていいのかわかりませんが、14年間で売上高が約5分の1に激減すれば、商売が立ち行かなくなるのも当然です。それでも、札幌市内の賑わいを考えると、かなり意外な感じがあります。

回転寿司との競争激化が最大要因というのは本当か?

様々な報道によると、近年、回転寿司チェーン店との顧客の獲得競争が激化したのが経営不振の最大の要因と言われています。しかし、札幌に頻繁に行く人なら、札幌に回転寿司店がそんなに多くないことはご存知でしょう。また、回転寿司との競争も今に始まったわけではありません。

確かに、回転寿司との競争も一因でしょうし、東寿司の経営自体にも何らかの問題があったのかもしれません。ただ、それを考慮しても、他にも大きな理由がありそうです。

スープカレー等との競合も激化している可能性

残念ながら、その確かな理由はわかりません。ただ、2000年代に入って以降は、寿司とラーメンだけが象徴的だった札幌で急速に存在感を高めてきた食べ物が数多くあります。具体的には、スープカレーがその代表例です。

現在、札幌市内には250店舗以上のスープカレー店(専門店)があると言われています。実際、最近の観光ガイド、とりわけ、外国人観光客向けのパンフレットには、スープカレー店が大きく紹介されています。東寿司も、スープカレーを始めとした寿司以外の飲食店との競合が、年々激しくなっていた可能性は高いと言えましょう。

同業他社との競争と同じように、異業種との競争にも目を向けるべき

筆者が言いたいのは、全ての業界において、同業他社との競争ばかりに目を向けるのではなく、異業種との競争にも注意しなければならないということです。実際、ふと気が付いたら、その異業種に完膚なきまでに叩きのめされた例は数多くあります。事業を展開する、商売をやっていくというのは、本当に大変なことですね。

 

投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。