【米大統領選】トランプリスクに震えた市場。中長期の動向は?

この記事の読みどころ

英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票の再現を見るように、米国大統領選挙は世論調査や市場の予想とは正反対の結果となりました。株式、債券、通貨市場の変動は当面高い状況が想定されます。

ただ、中長期的な動向は短期的な動きと異なる可能性もあり、今後どのような点に注目すべきかを述べてまいります。

米国大統領選挙:現時点で、大方の予想に反しトランプ氏勝利

米国大統領選は2016年11月8日に投開票が行われ、選挙人獲得数を見ると、共和党のトランプ氏が270を上回ることは確実となりました(日本時間午後5時現在)。事前のクリントン氏有利の予想に反し、トランプ氏が選挙戦を優位に進め、トランプ氏はオハイオ、フロリダ、アイオワなどの選挙戦上重要な激戦州で勝利、選挙人を獲得しました。

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また、大統領選挙と同日に、連邦議会の上下両院選挙が実施されました。上院では定数100議席のうちおよそ3分の1にあたる34議席が、下院では435議席すべてが改選されます。途中経過ながら、下院は、現在多数派となっている共和党が、引き続き過半数を維持することが確実となりました。また、上院についても共和党が過半数を確実としています。

どこに注目すべきか:メキシコペソ、ドル安、財政政策、利上げ

6月の英国のEU離脱を問う国民投票同様、世論調査や市場の予想とは正反対の結果となりました。株式、債券、通貨市場の変動は当面高い状況が想定されます。ただ、中長期的な動向は短期的な動きと異なる可能性もあります。

今後想定される市場の動きとポイントは以下の通りです。

まず、短期的には予想外の動きとなったことから、多くの市場で変動の大きい展開が想定されます。

為替市場では、開票が進みトランプ氏優勢が明らかになるにつれ、メキシコペソはトランプ大統領誕生がマイナス要因となることが懸念されるため売られました。一方、円はリスク回避の強まりを受け選好され、円高圧力が強まりました。同様の傾向は当面続く可能性もあります。円同様にリスク回避通貨となっているスイスフランも上昇しました。

ユーロも対ドルで上昇しており、先進国通貨はカナダドルなどを除き、傾向として概ねドル安が想定されます。ただし、日本円については金融当局がすでに円高に対し懸念を示唆しており、場合によっては為替介入を行う可能性も考えられます。

次に、株式市場は当面、リスク回避姿勢の強まりから変動の大きさが懸念されます。

たとえば、英国のEU離脱選択後の動きを参照すると、国民投票後、英国などの株式は売られました。しかし、離脱選択後、比較的早期にメイ首相のもと英国内の体制が決まり、英国の経済状況も比較的堅調であったことから、その後英国株式市場は回復しています。

米国株式市場が同じコースをたどる保証は全くありませんが、英国の事例で参照すべきことは、今後の株式市場の方向は、一時のショックを乗り越えれば、その後の動きはトランプ政権が進める政策に大きく依存する可能性があるということです。

選挙期間中からトランプ氏は過激な発言を繰り返していたため、政策に対する懸念はあります。しかし当初、大統領候補として注目されていなかったトランプ氏が注目を集めるために過激な発言を行っていた面もあるかもしれません。また、あまりに奇抜な政策では議会の協力が得られないと思われます。

このような点を踏まえ、トランプ氏の公約から想定される政策を振り返ると、同氏は減税など財政拡大政策を基本にするものと見られます。ただ、選挙期間中、財政政策の財源を明らかにしていない点懸念されますが、財政政策は内容によっては株式市場にとって悪い話ではないかもしれません。

金融政策に目を向けると、市場の混乱を背景に、12月に引き上げの可能性が高いと見られていた利上げは慎重となる可能性もあります。たとえば、金利先物が織り込む利上げ予想では12月利上げの可能性が低下しており、図らずも利上げ見送りという金融面でのサポートがあるかもしれません。

当面は市場の変動性が高まる展開が想定されます。そのため、不安心理が高まることは避けられないかもしれません。しかし、そのような局面であるだけに、投資判断に当たっては政策などを冷静に分析することが大切と考えています。

 

 ピクテ投信投資顧問株式会社 梅澤 利文

梅澤 利文
  • 梅澤 利文
  • ピクテ投信投資顧問株式会社
  • シニア・ファンド・アナリスト

東京理科大学工学部卒業後、国内証券会社のシステム運用部門を経て、外資系運用会社(BNPパリバ投信投資顧問(当時)等)で債券、仕組債、オルタナティブ運用を担当。
2010年ピクテ投信投資顧問入社。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。