未知数のトランプ氏が切るカードは何か-その政策を読む

市場は落ち着きを取り戻したが・・・

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この記事の読みどころ

トランプ氏の米国大統領選挙の勝利宣言では、選挙期間中の姿勢から一転、落ち着いた口調で一体感を訴え、選挙後モードを演出しました。さらに、市場はトランプ氏の政策を再考、このことも落ち着きを取り戻した背景と思われますので、その内容を振り返ります。

米国大統領選挙後:当初見られた市場の反応は落ち着きを戻しつつある

予想外の結果となった2016年11月8日(開票は日本時間9日開始)の米国大統領選挙から1日が経過した市場は、当初のショックから落ち着きを取り戻しています。たとえば、9日には101円台まで上昇した円(対ドル)は1日で105円台へと、元の水準に戻り、市場には落ち着きが戻りつつあります

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どこに注目すべきか:勝利宣言、通商政策、議会承認、就任100日

トランプ氏の米国大統領選挙の勝利宣言では、選挙期間中の攻撃的な姿勢から一転、落ち着いた口調で米国国民の一体感を訴え、選挙後モードを演出したこと、同時に、市場がトランプ氏の政策を再考したことも市場が落ち着きを取り戻した背景と思われるので、再度政策に注目します。

トランプ氏の公約(契約)は次の2つに分けられます。

1点目は、就任直後に表明されると見られる政策です。米国大統領の権限は強力で、議会承認(立法化)がなくても様々な政策が可能と見られます(図表1参照)。公約通りなら、就任直後の政策は、このような大統領権限で進められる政策が表明されるものと見られます。その中心は、TPP脱退表明など通商関連の政策が主なものとなる見込みです。

出所:トランプ氏ホームページのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

2点目は議会の承認、立法化が必要な政策です。今後トランプ氏に想定されるスケジュールとしては、まず2017年1月に大統領就任と新しい議会の開始が見込まれます。トランプ氏は大統領就任後の100日間で自身の掲げる政策を進めることを選挙期間中に示唆しています。その主な内容は減税など財政政策、膨大なコストが必要と思われるオバマケアの廃止などです(図表2参照)。

※図表2の議会承認が必要な政策は主なものを列挙。トランプ氏は他に、企業のオフショア活動制限、インフラ投資、育児支援、政治腐敗対策などを就任100日の公約として公表している。 出所:トランプ氏ホームページのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

不法移民対策に含めている、物議をかもしたメキシコ国境の壁の建設も、当初は米国が資金負担、その後メキシコに請求するため予算化は必要です。このように、トランプ氏の政策と言われて頭に思い浮かぶ主な政策は、議会との共同作業が必要となります。トランプ氏勝利後の市場の動きで米国国債利回りが上昇した理由は、財政拡大を見越した動きと見られます。

ただし、次の点には注意が必要です。まず、トランプ氏の公約は米国国民のための政策と位置づけられています。米国市場が落ち着いたのはともかくとして、通商政策の影響を受ける相手方の海外市場が安心するのは早いかも知れません。

次に、議会承認が必要となる政策については、上院・下院ともに共和党になったとはいえ、政策内容、財源について議会と詰めが必要で、具体的な話は政権人事も含めこれからです。期待先行による市場の落ち着きならば注意は必要です。

 ピクテ投信投資顧問株式会社 梅澤 利文

梅澤 利文
  • 梅澤 利文
  • ピクテ投信投資顧問株式会社
  • シニア・ファンド・アナリスト

東京理科大学工学部卒業後、国内証券会社のシステム運用部門を経て、外資系運用会社(BNPパリバ投信投資顧問(当時)等)で債券、仕組債、オルタナティブ運用を担当。
2010年ピクテ投信投資顧問入社。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。