米国の保険会社バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット氏をご存知でしょうか。先日、ソフトバンクの決算説明会の場で、孫正義社長から「テクノロジー業界のウォーレン・バフェットを目指している」との発言があったことが話題になりました。

そのバークシャーとはどのような会社なのか、バフェット氏はどのような人物なのか、個人投資家向け金融経済メディアLongine(ロンジン)編集委員長でもありバフェットマニアでもある泉田良輔氏に話を伺いました。

そもそもバークシャー・ハサウェイとは?

――バークシャー・ハサウェイとはどのような会社なのでしょうか。

泉田良輔Longine編集委員長(以下、泉田):一言でいえば保険会社ですが、保険会社への保険でもある再保険を扱っていたり、自動車保険を取り扱う会社を傘下に持っていたりもします。そして、保険事業のキャッシュフローを活用して投資を行っています。

日本のメディアがよく取り上げるのは、コカ・コーラやアメックスなど上場企業への有価証券投資ですが、最近は会社を丸ごとを買収するようになってきました。たとえば、電力会社のミッドアメリカンや鉄道会社のBNSFなどを買収しています。

バークシャーの総資産規模が拡大し、上場企業の一部への投資では全体に対するインパクトが大きくないため、すべてを買収するという方法にかじを切っているというのが実情でしょう。

――バフェットの運用パフォーマンスはどれほどすごいのでしょうか。

泉田:バフェット氏に関してはバークシャーのアニュアルレポート(年次報告書)を見れば多くのことが掲載されているのでそちらを参考にされるとよいと思いますが、1965年以降2015年まで時価総額を年率換算で+21%、株主資本を+19%増加させてきたと書かれています。

この数字が年率だというのは驚異的です。バフェット氏は投資家であると同時に経営者でもあるので、最終的には会社としてのバークシャーの利益成長を基盤として、その結果である時価総額や株主資本にこだわっているわけです。

バフェットの投資基準とは?

――バフェットはどのように投資判断をしているのでしょうか。

泉田:バフェット氏はそれについてもアニュアルレポートで公開しています。詳しくは、Longineの「バフェット目線で探す! 株式市場が次に大暴落したら買い検討したい銘柄(2016年度版)」で解説していますが、企業の過去の実績を重視していて(IPO銘柄には興味がないとのこと)、従業員の数が少ないとか借金が少なくROEが高い会社などを嗜好しています。

また、利益規模の小さな会社も対象外ですね。このように、極めて一般的な基準なので多くの人はポカーンとしてしまうのですが、その条件を日本株に当てはめても驚異的なパフォーマンスが出ているので、後付けで納得する感じでしょうか。

>>【参考】バフェット目線で探す! 株式市場が次に大暴落したら買い検討したい銘柄(2016年度版)-Longine

――バフェットは投資で成功続きなのでしょうか。

泉田:実は、そうでもありません。先ほど触れたアニュアルレポートにも、上場株投資に関して買値と時価が記載されていますが、含み損のある銘柄も散見されます。

一方で、昔からバフェット投資で有名な銘柄、たとえばプロクター&ギャンブル、コカ・コーラ、ムーディーズなどの含み益は相当なものがあります。一時期は、投資をしたけれどもその後のパフォーマンスが良くないIBMの件は株式市場でも話題になりました。もともと、バフェット氏はテクノロジー企業には投資をしないと言ってきましたから。

――バークシャーはどのような企業に投資をしているのでしょうか。

泉田:金融を始め、製造業、小売り、エネルギー、機械、食品、電力、鉄道と幅広い業種の企業に投資をしていています。

意外にも有価証券への投資は総資産に対しては20%程度なので、日本で有名な上場株の一部を保有するという投資は既に経営の一部に過ぎません。これまで買収してきた鉄道や電力会社の有形固定資産や不動産が、しっかりとバランスシートに計上されています。

孫社長がバークシャーを目指すのはなぜか?

――バフェット型経営とはいったい何なのでしょうか。

泉田:こちらも詳しくはLongineでの記事「バフェットの経営する保険会社バークシャー・ハサウェイを徹底解説-アニュアルレポート2015より」で分析をしています。

いまだ正確な定義がされているとは思いませんが、バフェット氏は米国全体の競争優位性を確立できるような産業構造を仕立て上げるという目線で見て、そのために必要な企業を自身の事業ポートフォリオに取り込み、その事業規模を拡大させているように見えます。

ソフトバンクの孫社長もテクノロジー業界で同じことをしようとしているということなのでしょう。孫社長が日本発の投資でテクノロジーのグローバルトレンドを取り込むことができるのであれば、日本の投資家にとってハッピーなことではないでしょうか。

>>【参考】バフェットの経営する保険会社バークシャー・ハサウェイを徹底解説-アニュアルレポート2015より-Longine

――ありがとうございました。

 

LIMO編集部