ヘッジファンドに要注目:カリスマ、ポールソン氏が大復活!

信じてはいけないヘッジファンドの”常識”

Evan El-Amin / Shutterstock.com

大復活! ヘッジファンド運用者・ポールソン氏

ほとんどのメディアと市場関係者が予想を大きく外した米国大統領選挙結果ですが、最も「トランプノミクス」の恩恵を受けると思われる市場関係者として、ヘッジファンド運用者として著名なジョン・ポールソン氏に注目が集まっています。

ポールソン氏は、サブプライムローン問題で世界の主要金融機関が危機的状況に陥る中、約4,000億円もの巨額な収益を手にしたヘッジファンド運用者として知られています。しかしながら近年は、特定のセクターに集中した投資戦略で苦戦を強いられ、「ポールソンは終わった」と評する向きがありました。

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ポールソン氏はファンドの運用成績の悪化が続く中、この度の大統領選において落選確実と報道されていたトランプ氏の政策アドバイザーを務めましたが、その行動がメディアに疑問視されてさえいました。しかし、大統領選の結果を受け、同氏のファンドの主要投資対象となっていたバイオテクノロジーセクターが大幅反発し、ファンドの成績に著しいプラス効果をもたらしています。

ほとんどの人たちが正確に予想できなかったサブプライムローン・バブルの終焉、2016年米国大統領選挙の結果、これらをピタリと当てたポールソン氏の先見性を疑う余地はありません。

ポールソン氏のカムバックを契機に、これまで元気がなかったヘッジファンド業界に再注目が集まると予想されます。今一度、ヘッジファンドの基本を投資家目線で振り返ってみたいと思います。

ヘッジファンドに関する基本:「決算」をめぐる誤解

「ヘッジファンド」を検索エンジンで見てみますと、多くの人が「決算」というキーワードを組み合わせて検索していることが分かります。この組み合わせでネットサーフィンしてみると、どうやら「ヘッジファンドの決算時期には市場が荒れる」という“常識”があるようです。

結論からお伝えすると、この“常識”は誤りです。正しい情報ではありません。専門家とされる方たちが、この間違った情報に基づき記事を執筆されていることは、正直驚きでもあります。

ヘッジファンドといえども、一般的な投資信託と同様に、多くの投資家の資金を集めて一つのファンドで運用するという仕組みです。

ファンドには、必ず「決算」があります。企業の決算と同様に、ある期間で区切った決算年度において、そのファンドが保有する資産・負債がどのように変化したのか、その結果利益・損失はどうだったのかに関する報告書を作成し、さらに監査法人に承認してもらったあとに、各国の監督当局に提出するという流れです。

ポイントは成功報酬の計算方法

誤解の背景を見てみると、「ヘッジファンドは決算期前に利益を確保するため、保有ポジションを処分するので市場が大きく荒れる」という論理展開が存在しているようです。この論理も全くの間違いです。

この誤解は、ヘッジファンドの成功報酬の計算根拠が正しく理解されていないために拡大したと考えられます。そもそも、ヘッジファンドは決算期前に利益を確保するためにポジションを解消する必要はありません。よって、決算時期に市場を荒らす要因にはなりません。

これは単純に成功報酬の計算方法が正しく理解されていないために生じたのでしょう。通常、成功報酬は基準価額の計算頻度に合わせて、あくまで「評価益ベース」で計算されます。

たとえば、毎日買付及び解約ができるヘッジファンドは毎日計算、月次で買付及び解約ができるヘッジファンドは毎月計算して、ファンドから手数料として徴収しています(運用がうまくいってないのであれば、成功報酬は徴収できません)。

実現益ベースではないので、成功報酬を確定するためのポジション解消などそもそも必要ないのです。市場商いが薄くなるホリデーシーズン(市場の流動性が薄くなる時期)に備えてポジションを減らす対応を取るヘッジファンドもありますが、「決算」とは無関係です。 

ヘッジファンドを正しく理解し、正しく活用することが大切になってきています。今後注目を集めるヘッジファンドについて、正しい情報を発信していきたいと思います。

 

小田嶋 康博

金融系ベンチャー企業を経て、イギリス系大手ヘッジファンドであるマン・グループにて、東京、チューリッヒ、ロンドンで勤務後、ピクテに入社。

ピクテでは、従来型のディストリビューションモデルと異なる戦略立案及び営業活動を担当。 特に富裕層向けビジネスモデルの構築、並びにネットチャネル経由のビジネスモデル構築及び促進に向け販売会社とのコラボレーション施策の開発に従事。

慶應義塾大学入学後渡米し、ニューヨーク州立大学経営学士取得。