東芝の映像事業は、一転、大幅赤字予想に

東芝(6502)は2016年11月11日に2017年3月期上期決算発表し、上期実績や通期見通しに関して詳細な説明が行われました。通期予想は、フラッシュメモリーの好調を主因に大幅増益が見込まれています。

一方、やや気になったのは、福山雅治さんのCMが印象深い液晶テレビREGZAや、最大で6テラバイトもあるタイムシフトマシン対応HDDレコーダーなどが含まれる「映像事業」の大幅な下方修正です。

同事業の通期営業利益は、期初予想の15億円の黒字から、今回の新予想で▲240億円の赤字へと大幅に下方修正されています。理由は、液晶テレビの不具合対応費用やライセンス費支払いに関わる係争案件で費用が発生したことや、下期に海外拠点整理関連費用の計上が新たに予定されたことによります。

ちなみに、東芝の主力事業は半導体や社会インフラであり、映像事業は同社の「その他」セグメントに含まれる“ノンコア”事業に位置付けられる事業です。それが、なぜ気になるのか。その理由は、大幅な赤字転落となったことだけではなく、以下の2点にあります。

東芝のテレビは一人負け状態に

第1の気になる理由は、他社のテレビ事業が大きく改善傾向にあるためです。各社の状況は以下の通りです。

テレビ事業が最も好調と見られるのはソニー(6758)です。同社は「ホームエンタテインメント&サウンド分野」の2017年3月期営業利益を、テレビ事業の好調を主因に7月時点予想の410億円から、11月時点で470億円へ上方修正しています。

ご記憶の方も多いと思いますが、ソニーのテレビ事業は2005年3月期から2014年3月期まで10年連続で赤字を計上していました。しかし、コスト構造改革や製品戦略が奏功し、今年度は3年連続で黒字が見込まれ、同社の稼ぎ頭の1つとなるまでに大きく改善しています。

また、パナソニック(6752)もテレビ事業については4Kテレビなどの高付加価値商品シフトが奏功し、上期は増益となりました。通期も増益を見込む予想を据え置いています。

最後にホンハイ傘下で再建中のシャープ(6753)も見てみましょう。同社は上期の決算説明会で、液晶テレビは4Kテレビを国内で積極的に販売したため、上期は黒字転換したとコメントしています。加えて、海外メーカーに売却したブランドを取り戻し、グローバルでテレビ事業について反転攻勢に出る考えも示しています。

このように、他社と比べると東芝の映像事業の「一人負け」が際立つことになるのです。

前期の事業再編が抜本策とはならなかった

第2の気になる理由は、前期までに行われた構造改革が、映像事業に限れば結果的には抜本的な対策となっていなかったことです。

同社は昨年、12月に経営再建の一環として、パソコン、家電、映像が含まれる「ライフスタイル」事業の再編策を発表しました。その中で、家電は中国メーカーへ売却、テレビと映像は海外事業の大幅絞り込みや早期退職等を実施するとしています。

その結果、2016年3月期のライフスタイル事業の多額のリストラ費用計上により、営業損益(非継続組換前)は▲1,506億円の赤字に、また、この中に含まれる映像事業も▲483億円となっています。

なお、2017年3月期からは家電は非継続事業とされ、東芝グループに残ったパソコンと映像だけが「その他」セグメントに含まれています。また、パソコンについては通期での黒字見通しが維持されています。

まとめ

同社では、映像事業について追加構造改革の実施を検討中であり、これが実施された場合にはリストラ費用の追加傾向により、さらに赤字が拡大する可能性を示唆しています。

前期に行われた映像事業の構造改革は、結果的には抜本策とはなりませんでしたが、今下期に行われる予定の追加策が、最後の抜本策になるのかを注視したいと思います。

東芝の過去10年間の株価推移

和泉 美治