今年も残り1か月半、年末モードが加速

11月も中旬を過ぎ、街ではクリスマスデコレーションが多くなり、一気に年末モードが加速しています。年末が近づくと何かと忙しくなります。年内に片づけなければならないことは山ほどあるからです。

仕事はもちろんのこと(12月が決算期の会社も多いようです)、忘年会も結構あり、年賀状も書かなくては…とお考えの方も多いでしょう。年末は、こうした様々なイベントで出費もかさむ時期です。

お歳暮の贈呈も年末恒例の行事の1つだった

一昔前まで、年末が近づくと恒例行事だったのが「お歳暮」の贈呈です。昔、具体的には30年くらいまで、年末にお世話になった方々へお歳暮を贈るのは、ごく当たり前のことでした。

この「お世話になった方々」は非常に広範囲にわたり、会社の上司や学校の先生も当然のように含まれていたのです。“まさか”と思うかもしれませんが、会社の上司にお歳暮を贈らないと、非礼とか非常識とか言われた時代があったのは事実です。

現在のお歳暮事情はどうでしょうか?

お歳暮の市場は30年前と比べて激減状態と推測

正確な市場データは不明ですが、減少していることは間違いありません。減少どころか、30年くらい前に比べると激減しているはずです。まず、お歳暮が収益の柱の1つだった百貨店各社の厳しい業績がそれを物語っています(注:アベノミクス始動以降は、インバウンド特需の恩恵で業績は一時的な回復を見せました)。

お歳暮の市場規模は、ネットで見られるアンケート調査などから推測すると、おそらく30年前の3割水準(つまり約▲7割減)と見るのが妥当と考えられます。

年賀状も大幅減少だが、メールなどで代替されている

一方、代表的な年末行事である年賀状(書き)も激減の過程にあります。年賀状の発行枚数は、2003年の約44億6千万枚をピークに、今年2016年は約28億5千万枚へと▲36%減少しており、2017年以降もさらに減るのは確実と考えられます。ただ、年賀状はメールなどに代替されていると見られるため、“年始の挨拶”という観点ではさほど減っていないでしょう。

しかし、お歳暮の場合、他の物に代替されているとは考え難く、そのもの自体が減っているはずです。お歳暮が減っている背景は何でしょうか。

経済状況の悪化だけでは説明し難い

まず、単純に経済状況の悪化が考えられます。これは、個人の可処分所得だけでなく、企業の交際費削減の影響もあるでしょう。

しかし、この30年間を振り返ると、それなりに景気の良い年もありました。それでも、漸減傾向が続いているということは、経済的な理由のほかに、何か社会構造の変化に起因する理由が考えられます。

社会構造の変化がお歳暮の減少につながっている

その1つが、徐々にではありますが、“公正さ・公平さ”が浸透してきたことです。たとえば、上司が部下を評価する時、その部下の仕事の成果や、仕事に対する取り組み等で評価するのが本来あるべき姿です。お歳暮を贈ってこないから評価を下げるなど、言語道断で絶対にあってはなりません。そして、上司の側でも自ら受取りを拒否しているはずです。

この動きは学校でも同じです。今や、生徒の親が担任の先生にお歳暮を贈ることは稀と言えましょう。先生も受け取りません。

また、これは企業間でも同じと言えます。たとえば、下請け企業(調達先)との取引でも、その下請け企業のコスト・納期・品質で評価すべきであり、お歳暮や接待などで評価することは不条理なことです。

実際、昨今では、取引先からのお歳暮や接待を受けることを全面禁止としている企業は少なくありません。先日、大手電機メーカーが海外で調達先から接待を受けた従業員を懲戒処分にしたのは、そうした事例の1つです。

また、個人情報を始めとする情報管理が強化されてきたことも見逃せません。最近では社内の個人住所録が廃止されているケースが多いのが実情です。上司にお歳暮を贈るにも、送り先がわからないということですね。以前、職場や学校でよく見かけた緊急連絡網なども、携帯電話やメールで対応できるようになりました。

それでもお歳暮は年末恒例の習慣

このように、お歳暮の贈呈が減少したことは、ただ単に景気悪化だけとは言えない理由があります。ただ、それでも、お歳暮のキャンペーンを見ると、1年の終わりを感じるのも事実です。日本らしい習慣が完全になくなるのも寂しいと思う人も多いかもしれません。

 

LIMO編集部