24時間営業は必要? 「サービス残業」を生む環境から脱却するには?

ロイヤルホストの選択は「勇気ある撤退」か

過剰品質のサービスが長時間労働時間の要因?

2016年11月17日付の朝日新聞は、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングスが、来年1月までに24時間営業をやめることを決めた、と報じました。

記事によると、ロイヤルホストは全国223店舗で、かつては大半が24時間営業だったが、2011年ごろから営業時間の短縮に取り組み、現在24時間営業を行っているのは、桜川店(大阪府)と府中東店(東京都)の2店舗だけだそうです。

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この報道に対して、ネットでは、「労働時間短縮に向けての英断」と評価するコメントもありました。また、これに関連し「過剰品質のサービスは必要か」といった議論も起こっています。

確かに最近は便利な世の中になりました。著者は50代ですが、学生のころ、多くのコンビニは24時間営業ではありませんでした。

最近では、Amazonで午前中に注文した商品が夜には届きます。配送センターや宅配便の会社の方たちが頑張って届けていただいているのでしょうが、そこまでしなければいけないのかとも思いますし、そこまでするからAmazonが伸びているのかもしれないとも思います。

日本で「サービス=無料」とされるのは同業他社が多いため

「日本のサービス品質は世界一」と言われることに加え、「日本の顧客の要求は世界一厳しい」とも言われます。一方で、「サービスは無料だと思っており、対価を払わない」のも日本の顧客の特徴とされます。

「日本の『おもてなし』が評価されるのは、それが無料だから」という指摘もあります。たとえば、5つ星ホテルのザ・リッツ・カールトンは、ホスピタリティの高さで知られますが、料金も相応で、学生が気軽に利用できるものではありません。

一方、日本企業の生産性の低さが指摘されて久しくなります。特にGDPの7割を占めるとされるサービス業の生産性が低いとされます。要因の一つは「サービスは無料」という考え方が顧客に定着していることでしょう。

これを「日本の文化」ととらえる人もいますが、著者は少し違った考えです。結論から言えば、日本は同業者の数が多すぎるということです。自動車産業、電機産業などでは大手企業の再編も進んでいますが、海外市場に比べればまだ多いと言えます。

さらに、日本では同業者の数が多いことに加え、中小企業の数が多いのも特徴です。

たとえば建設業界では、国土交通省の調査によれば、2016年3月現在の建設業許可業者数は、全国で46万7635業者となっています。前年同月比で5286業者の減少ですが、それでもかなりの数です。

さらに、中小企業基本法における中小企業者(個人及び資本金の額が3億円未満の法人)の数が46万4945業者となっており、建設業許可業者数全体の99.4%を占めています。

著者は、同業他社の多さが、日本特有の「サービス無料」を生んでいる要因の一つになっていると考えています。

「選択と集中」が生産性の向上を生む

商品やサービスが他社にないような優れたものであればいいのですが、どこでも手に入るとなると、あとは値引きや納品の速さなどで勝負せざるを得ません。そこでプラスの料金を請求できないならば、他にしわ寄せが来ます。

大手企業のように、ITを活用して業務を効率化できればいいですが、そのような投資ができない中小企業だと、サービス残業などの人海戦術となります。「選ばれる企業になるために」と言えば聞こえはいいですが、そのために従業員の負荷が増えるだけでは意味がありません。

政府は「働き方改革」や「生産性の向上」を推進していますが、ITを活用したテレワークなどが進んでも、「競合が採算度外視の見積を出してきて負けた」というのでは、努力の成果も焼け石に水になってしまいます。

その点で、企業は今後ますます、「どこで戦うか」という「選択と集中」が大切になるでしょう。冒頭のロイヤルホールディングスの24時間営業廃止は、労働時間短縮という効果もあるでしょうが、むしろ、飲食店の24時間営業マーケットからの勇気ある撤退と考えることもできます。

 

下原 一晃

マーケティング会社、リクルートなどを経て、PRプランナー・ライターとして独立。
株式投資、投資信託をはじめとする資産形成や、年金、相続などに関する情報提供を行っている。あわせて、個人投資家がテクニカル理論を身に付けるためのヒントや知識の紹介にも取り組んでいる。
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)。