「三冠王」の正式な意味はプロ野球の打撃3部門の獲得

「三冠王」という言葉があります。何度かお聞きになった言葉ではないでしょうか。英語で表記するとTriple Crown(トリプルクラウン)となります。

この「三冠王」の正式な意味は、意外かもしれませんが、プロ野球の野手部門で本塁打王、打点王、首位打者の主要3部門を一度に全て獲得した選手の称号です。実は、投手にも三冠王(勝利数、勝率、奪三振)がありますが、後付けの称号であり、本来は野手のみが対象とされています。

「三冠王」は並大抵のことでは達成できない偉業

プロ野球に興味がない方に理解していただくのは非常に難しいでしょうが、この三冠王に輝くのは至難の業で、並大抵のことではありません。まさしく、偉業と言えます。

現代野球が始まったとされる1945年以降、日本のプロ野球において、三冠王はわずか6人が9回達成しただけです(注:うち3人が2回達成)。また、MLB(米国メジャーリーグ)でも5回(5人)しか成し遂げられていません。

実は、対象となる3つのタイトルのうち、一度に2つを獲得した“二冠王”は延べ80回達成されています(注:筆者調べ、三冠王の達成含まず)。2016年も、横浜DeNAの筒香選手が本塁打と打点の二冠を獲得しているように、二冠王は決して少なくありません。しかし、残る1つが獲れないものなのです。

これだけを見ても、三冠王が大変な偉業であることがわかります。

いつの間にか「三冠王」は多方面で広く使われてきた

ところが、本来はプロ野球で使われた「三冠王」という言葉が、いつの間にか様々な方面で使われるようになりました。スポーツでも、今がシーズン真っ盛りの大学駅伝(全日本、出雲、箱根)やサッカー(Jリーグ、天皇杯、ルバン杯)でも使われています。

競馬でも三冠王(3歳馬の皐月賞、日本ダービー、菊花賞。三冠馬と言う)は有名です。また、格闘技のプロレスでも、一時は三冠王が流行となり、最後はどの3つのタイトルなのか一切不明なまま“三冠王タイトルマッチ”も行われていました。

スポーツだけでなく、芸能界や経済界でも使われる

スポーツだけではありません。テレビ業界では視聴率(全日、ゴールデン、プライム)の王者の証しに三冠王が定着しています。歌手でも一時は三冠王(日本レコード大賞、日本歌謡大賞、全日本有線大賞)がありました。

また、バブル経済前後までは証券業界でも、株式、債券、法人(引き受け)の全てでトップになると三冠王と称されており、当時は野村證券の独壇場でした。

このように、いつしか「三冠王」が多方面で広く用いられてきました。しかし、達成困難な偉業を意味することは変わりがないようです。前述したプロレスの例も含め、やはり「三冠王」が偉大であることは間違いありません。

日本人は「三冠王」というネーミングが好きなのか?

どうも日本人は、この「三冠王」という言葉が好きなようです。たとえば、囲碁や将棋では「七冠王」も誕生していますが、一部のファンを除くと、大きく騒がれている印象はありません。その他でも、四冠や五冠など決して珍しくないのですが、「三冠王」というネーミングや響きに勝るものはないということでしょうか。

また、日本人は「3」という数字に馴染みがあるのかもしれません。アベノミクスの柱も「3本の矢」でしたし、プレゼンテーションで“~~の理由は以下の3点です”というフレーズもよく聞きます。

格下げされて久しい日本国債の「三冠王」復活は成るか

さて、その三冠王好きの日本人が是非とも取り戻したいのが、日本国債の格付けです。

国債の格付け機関では、ムーディーズ、スタンダード&プアーズ、フィッチの3機関が有名ですが、いずれも信用力の高い最上位の国債には「AAA」(トリプルA)を与えています(注:ムーディーズの表記はAaa)。日本国債は1998年秋まで、当然のように全ての機関でこの「AAA」でした。

しかしながら、1998年11月にムーディーズが「AAA」からの格下げを実施して以降、他の格付け機関も相次いで格下げを行いました。現在の格付けは「AAA」からは大きく乖離した位置にいます。

国債の格付けは、国家財政の信用力を意味します。これら世界主要3機関で最上位の格付けを奪回する、これこそが日本が目指す「三冠王」かもしれません。

 

LIMO編集部