「2位じゃダメですか」のスパコン、日本がHPCG1位獲得の価値

科学計算アプリケーションで高い性能を発揮する「京」

スパコン「京」が1位に

富士通と理化学研究所(理研)は11月16日、スーパーコンピュータ「京」が「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」と呼ばれる国際的なランキングで1位になったと公表しました。

HPCGの結果は2014年から毎年6月と11月に発表されていますが、「京」はこれまで5回連続して2位に留まっていました。今回は初の1位獲得という快挙を成し遂げたということになります。

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ただ、「少し前にも同じようなニュースを見たな」とお感じになった方も多いのではないでしょうか。そう感じるのは無理もありません。というのは、スパコンのランキングには、HPCG以外にTOP500、Graph500、Green500というランキングもあるためです。

そこで、世界におけるスパコンのランキングにはどのようなものがあるのかを整理してみたいと思います。

スパコンの代表的な性能評価は4つ

代表的なランキングは以下の4つで、いずれも毎年2回、発表が行われています。なお、スパコンは、心臓部のチップだけではなくメモリ、ネットワーク、冷却装置なども含めたシステム全体性能をファインチューニングすることでパフォーマンスが短期間に変化しますので、年2回が多いか少ないかはともかく、ランキングは頻繁に変化します。

HPCG:上述のように2014年から発表されており、産業利用など実際のアプリケーションで用いられる計算手法(共役勾配法)での処理速度を競うランキングです。「京」は2016年11月に初めてトップになりました。

Graph500:2010年から行われているビッグデータ処理(大規模グラフ解析)を競うランキングです。計算速度のみならずアルゴリズムやプログラムを含めた総合的な能力が必要とされるこのランキングで、日本の「京」は2015年から2年にわたり1位をキープしています。

Green500:2007年から始まった世界で最もエネルギー消費効率の良いスーパーコンピュータを定期的にランク付けし評価するプロジェクトです。

2016年6月発表では、理化学研究所と日本のベンチャーExaScaler、PEZY Computingが共同で開発した液浸冷却スーパーコンピュータ「Shoubu(菖蒲)」が、3期連続世界第1位を獲得しました。直近の2016年11月発表では、米国の半導体メーカー・NVIDIA社が自社チップを搭載して製造したスパコンが1位に選ばれています。

TOP500:1993年に始まった最も歴史が長く、上位500社という膨大なサンプル数を持つスパコンのランキングです。密行列の連立1次方程式という比較的単純な計算の処理速度を競うものですが、日本は2011年の6月と11月に「京」が1位になりました。しかし、直近の2016年11月※では7位に留まる一方、中国が2012年から連続してトップとなっています。

※日本勢では最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)によるOakforest-PACSも初登場で6位に入っています。

まとめ

いかがでしたか。スパコンのランキングといっても様々な格付け方法があることがご理解いただけたかと思います。

スパコンの「京」といえば、2009年に当時の民主党政権下での事業仕訳で蓮舫議員から「2位じゃだめなんでしょうか」と予算削減を迫られたことが思い出されますが、その当時にはなかったHPCGという実際の産業利用に適したランキングで健闘していることは興味深い事実ではないかと思います。

とはいえ、蓮舫議員の肩を持つわけではありませんが、スパコンがビジネスとしてさらに拡大していくためには、短期・長期を問わずコストパフォーマンスも重要であるため、そうした観点でも客観的に測れる指標が公表されることを期待したいと思います。

 

和泉 美治

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。