米金融政策はどう変わる? トランプ政権下のFOMCの行方

2018年にはFRB議長交代でハト派からタカ派への転換も

米大統領選挙後、最初のFOMC(米連邦公開市場委員会)が12月13-14日に開かれます。

今回のFOMCでは利上げは織り込み済みですので、関心は来年以降の利上げペースとなり、まず注目されるのがドット・チャートです。また、来年以降を見据えた場合、投票権のある地区連銀総裁が交代することで、タカ派色が薄れてハト派寄りになることが見込まれます。

イエレン議長の辞任は回避される模様ですが、再任は難しく、2018年には議長は交代となる見通しで、ハト派と言われる現体制からタカ派へと転換する可能性があります。

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ドット・チャートで来年の利上げ回数を確認へ

今回のFOMCでは1年ぶりとなる追加利上げは既定路線となっており、関心は来年以降の利上げペースに移っています。

フェドウォッチによると、12月8月現在の12月FOMCでの利上げ確率は97%と、ほぼ100%利上げを織り込んでいます。また、来年6月のFOMCでの利上げ確率は50%を超えており、マーケットは来年中に2回の利上げを織り込みつつあります。

これは、9月のFOMC後に発表されたFOMCメンバーによる金利見通し(通称ドッド・チャート)で来年の利上げペースが2回と見込まれていることに符合しています。

トランプ次期政権による積極的な財政政策により、米経済は成長の加速とともにインフレも加速させる可能性があることから、今回のドット・チャートでは利上げ回数が引き上げられて、3回以上に増えるのではないかと予想されています

2017年のFOMCは現在よりもハト派へ

12月のFOMCを最後に投票権を持つ4人の地区連銀総裁の交代しますが、2017年に投票権を持つ連銀総裁は現在のメンバーよりもハト派となりそうです。

2016年のFOMCで投票を持っていたのは、セントルイス連銀のブラード総裁、カンザスシティ連銀のジョージ総裁、クリーブランド連銀総裁のメスター総裁、ボストン連銀総裁のローゼングレン総裁でした。

このうち、ブラード総裁を除く3人の総裁が9月のFOMCでの利上げ見送りに反対票を投じており、利上げに対して積極的な姿勢を見せています。中でも、ジョージ総裁とメスター総裁はタカ派として知られています。

一方、2017年に投票権を持つのは、シカゴ連銀のエバンス総裁、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁、ダラス連銀のカプラン総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁です。

エバンス総裁は超ハト派と知られており、カシュカリ総裁もハト派です。ハーカー総裁とカプラン総裁はタカ派寄りとされていますが、ジョージ総裁のように筋金入りのタカ派というわけではありません。

一般に、景気に配慮して利上げに慎重な姿勢は“ハト派”、インフレを重視して利上げに積極的な姿勢は“タカ派”と呼ばれますが、FOMCで投票権を持つメンバーの交代により2017年のメンバーはタカ派色が薄れて、ハト派色が強まる見通しです。

2018年には執行部も大きく様変わり?

新政権との絡みでは、FRB議長の交代などにより、2018年には議長を含む理事のメンバーが大きく様変わりすると見込まれており、高い関心を集めています。

2018年2月にはイエレン議長、そして同年6月にはフィッシャー副議長の任期が切れます。

トランプ次期大統領は、選挙戦を通じてFRBを厳しく批判していましたので、トランプ政権誕生ならイエレン議長は辞任するとの観測もありました。11月17日の議会証言でイエレン議長が「任期を全うする」と発言したことから辞任観測は後退していますが、トランプ氏に再任の考えはないようですので、任期が終わる2018年2月には議長が交代することになりそうです。

2018年2月3日での退任を前提とした場合の標準的なスケジュールでは、2017年の春先から夏場にかけて後任候補が絞り込まれ、9月か10月には後任が指名される見通しです。

財務長官より注目される銀行監督担当の副議長ポスト

FRB理事の定員は7人(議長・副議長を含む)ですが、現在2人が空席となっています。オバマ大統領は2人の理事を既に指名していますが、共和党が支配する上院での承認が見送られており、承認の見込みはほとんどありません。トランプ次期政権は、政権の意向に沿う2人の理事を政権発足後、3カ月以内に指名する見通しです。

また、新設された副議長のポストが、財務長官よりも金融業界に注視されているとして関心を集めています。

2010年に成立した金融規制改革法(ドット・フランク法)では、FRBに監督担当の副議長を新設することが盛り込まれましたが、承認を見込みづらいことからオバマ大統領は誰も指名せず、空席のままとなっています。

現在、FRBで銀行の監督業務を統括しているのはタルーロ理事ですが、同理事は銀行の資本要件の厳格化など金融機関に対して厳しく対応してきたことで知られています。

銀行監督担当の副議長はタルーロ理事の役割を引き継ぐことになります。ウォール街出身者もしくは身内と考えられる人選となれば、タルーロ理事のように金融機関に厳しい規制を課すことは期待できそうにありません。

トランプ氏は金融規制改革法の廃止を公約としていましたが、政権の意向を反映した人事でこの副議長ポストを押さえられるのであれば、実質的には規制緩和と同様の効果が期待できますので、廃止の動きが後退する可能性がありそうです。

また、共和党は一定のルールに基づいた金融政策決定の義務付けなど、FRBを議会の監視下に置く法案をまとめていますが、FRBの執行部が共和党の意向を反映した人物で占められるのであれば、こうした動きも緩和されるかも知れません。

参考:『Trump Looks to Put Stamp on Fed in First Months of Presidency』、『Forget Treasury Secretary. This Trump Pick Matters Most to Banks

議長交代で2018年以降はタカ派への転換も

2017年のFOMCメンバーを見る限りでは金融政策はハト派寄りとなることが予想されますが、2018年以降を見据えると逆にタカ派となりそうです。

次期FRB議長候補として、適正な政策金利の推計モデルとして有名なテイラー・ルールを考案したことで知られるスタンフォード大学のジョン・テイラー教授、CEA(大統領経済諮問委員会)委員長を経験しているコロンビア大学のグレン・ハバード教授、ハーバード大学のグレゴリー・マンキュー教授などの名前が挙がっています。

イエレン議長と比べた場合、誰がなったとしても金融スタンスはタカ派寄りとなる見通しです。

トランプ政権の誕生はFRBの金融政策が大きく変わる可能性を秘めています。空席となっているFRB理事の指名、銀行監督担当の副議長の指名、議長の交代といった人事の動きが、今後1年余りの間に起こる可能性が高く、行方が注目されています。

 

投信1編集部

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