すぐに「カジノ解禁」ではない? 統合型リゾート整備推進法をめぐる課題

ギャンブル依存症はすでに存在する問題、今後は幅広い議論を

2016年12月14日夜から15日未明にかけて開かれていた衆院本会議で、カジノを中心とする統合型リゾート(IR)整備推進法が、自民党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立しました。

しかし、この法律は、カジノをただちに解禁するものではありません。では何のためのものなのか、そもそも統合型リゾートとは何なのか、ギャンブル依存症の問題はどう捉えるべきかなどについてまとめてみました。

統合型リゾートの先駆け、ラスベガスにおける法規制

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統合型リゾート(Integrated Resort)とは、カジノにホテルや会議場、レストラン、劇場、映画館、ショッピングモールなどが併設された施設です。

統合型リゾートの先駆けとなったのは、米国ネバダ州のラスベガスです。ネバダ州は州の大半が砂漠であるため、農業には適していません。同州は長い間、鉱業が主要産業でした。しかし、20世紀に入ると鉱山の産出量が減り人口流出による衰退が加速します。そこで、同州ではさまざまな手法で活性化策を打ち出します。

たとえば1930年代には、同州に6週間滞在すれば、相手の同意がなくても離婚できるように州法が改正され、多くの人が訪問するようになりました。また、1931年にはカジノ(ゲーミングと呼ばれます)を合法化しました。

ただし、当時はまだ規制目的ではなく、税の徴収のためでした。このため、マフィアが胴元として介在することも少なくありませんでした。

ネバダ州のゲーミングビジネスのプレーヤーに変化が起きるきっかけとなったのが、1955年の「ネバダ州ゲーミング管理法」です。同州では、ゲーミング産業が発展するためには、社会的な信頼が不可欠だとして、ゲーミングにかかわる法規制を整備してきました。

1967年には「企業ゲーミング管理法」が制定され、参入規制が緩和されました。ホテルやエンターテインメント産業などの大手企業がゲーミングに参入できるようになった一方で、ゲーミングビジネスにかかわる法人や個人のラインセンスの付与などについては、当局が厳しい審査を行うようになりました。

カジノ運営者だけでなく機器のメーカーや販売会社についても、ライセンスの取得が義務付けられています。さまざまな規制に違反すると、ライセンスの取り消しはもちろんのこと、巨額の罰金、禁固刑、さらには同州における関連ビジネスからの追放などを受けることもあります。

これらの取組により、現在は、ラスベガスにおけるマフィアの介在はほぼ一掃されたと言われています。

パチンコや公営競技も含め、課題解決に向けた幅広い議論に期待

話を、今回のカジノを中心とする統合型リゾート(IR)整備推進法に戻します。

この法律は、統合型リゾート施設を運営するにあたり、国はどのような監視や管理を行うのか、誰が運営主体になれるのか、許認可を受ける事業者や地域はどこなのか、また、マネーロンダリング対策、ギャンブル依存症対策をどう行うのか、必要な法整備を行うように求めるものです。

よって、冒頭に述べたようにカジノをただちに解禁するものではありません

いつもであれば論調が分かれる新聞各紙が、なぜか今回だけは異口同音にギャンブル依存症者の増加につながると反対姿勢です。ただ、カジノのターゲットが誰なのかが明確に決まっていない現時点では判断しづらいところです。モナコや韓国の一部のカジノのように、外国人しか入場できないのであれば国民がギャンブル依存症になることはありません。

今回の議論の中で、「日本のギャンブル依存者数が、すでに536万人に上る」というフレーズを聞いた人もいるでしょう。少し古いデータですが、2014年に厚生労働省の研究班(研究代表者=樋口進・久里浜医療センター院長)が発表したものです。

この調査によれば、成人男性の8.7%がギャンブル依存症であるとされました。米国の1.58%、香港の1.8%、韓国の0.8%などに比べると突出しています(調査時期は異なる)。

ただ、日本ではその多くがパチンコ依存症であり、パチンコ店が身近にあることが要因の一つとも言われます。当面は全国に数カ所しか開設されないと思われるカジノ施設にこれらの依存症の人たちが押し寄せるとも考えづらいところです。

一方で、「カジノの前にまずパチンコ店をなくせ」というのも違うと思います。ギャンブル依存症は本人の意志や努力の問題ではなく、精神疾患です。海外では、ギャンブル依存症の未然防止や治療に関して、対策を行うことが法律で定められているところが少なくありません。病的なギャンブラーについては賭け金を制限されたり、入場を制限されたりする場合もあります。

一方で、日本では、パチンコは形の上ではギャンブルではなく遊戯だとされ、多くの人が気軽に利用できます。競馬、競輪、競艇などの公営競技では「未成年者は、投票券を購入できない」ことになっています(以前は、成人であっても、学生は投票券を購入できませんでしたが、法改正によって購入できようになりました)。

昔も今も、購入にあたって、身分証明書を見せろと言われるようなこともありません。むしろ公営競技は若い人たちに積極的に来場を促しているように思います。

ギャンブル依存症の防止や治療に対しても、国は積極的な対応をしてきませんでした。今回の整備推進法の成立により、今後さまざまな法の整備が進められていくと思いますが、著者は、カジノのみならず、広い視点での議論につながることを期待しています。

 

下原 一晃

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下原 一晃

マーケティング会社、リクルートなどを経て、PRプランナー・ライターとして独立。
株式投資、投資信託をはじめとする資産形成や、年金、相続などに関する情報提供を行っている。あわせて、個人投資家がテクニカル理論を身に付けるためのヒントや知識の紹介にも取り組んでいる。
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)。