日本株は昨年末の水準まで一気に値戻し

トランプ大統領誕生後、株価は一本調子で急騰しています。株式投資を続けていた方は、「しめた」「やれやれ」と思っている方も多いことでしょう。

しかし「一本調子の上げでは買い時がわからない」「もっと買っておけばよかった」と反省しているかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

筆者の周りでも機敏に上昇相場に早乗りできるタイプと、それができないタイプの方がいます。筆者もどちらかといえば後者のタイプです。

バスに乗るチャンスはなかったか?

相場の転換点で早乗り投資家を単なるリスク愛好家と決めけてしまうのは、早計かもしれません。実際のところ、トランプ氏が大統領選で勝つというシナリオや、当選後株価が上昇するというシナリオは、マイナーな扱いを受けてきました。つまり、このところの上昇相場は、このマイナーシナリオが実現したあと、投資家が日々トランプ経済という新しいシナリオを織り込もうと模索しながら形成されてきたはずです。その意味で、みなに平等のチャンスがあったと言えるのではないでしょうか。

米国では雇用がかなり改善してきました。ここにトランプ政権は内需喚起を進めようとしています。これは、景気拡大、期待インフレ率の上昇などから債券投資には逆境です。そしてこれは、株式市場の追い風に違いありません。こう大きく文脈を捉えていち早く買ってみる、買い増してみるということができていたのかもしれません。

また、チャートを助けにできたかもしれません。例えばTOPIXは1,400ポイントを超えた時に2015年夏からはじまった下落トレンドを脱しています。こうしたテクニカルサインも軽んじることなくみておくべきだったのではないでしょうか。

日本株のトランプラリーはバリュー株主導

「上昇相場はわかったが、トランプ政権誕生のハネムーン相場は期待先行で短命ではないか?」そう考えるかたも多いことでしょう。

実は筆者は、現在の相場は半信半疑で上昇しているとみています。なぜならば、投資家は成長株よりも割安株(バリュー株)を中心に買い進めているからです。

具体的に見てみましょう。TOPIXバリュー株指数は2015年12月末から2016年10月末まで▲13%下落しましたが、11月以降は+17%上昇しています。一方TOPIXグロース株指数は10月までは▲7%下落にとどまっていましたが、11月以降は+6%の上昇にとどまっています。とくに銀行株が割安に放置されていましたので、金利上昇に転じたことを手掛かりに集中的な買いを集めてきました。

これまでのところトランプラリーの本質は、日本株にとっては大きく下落していたバリュー株のリバウンドです。これは投資家が「買わなければならないなら、割安なものから」というスタンスであることを意味します。ラリーを享受した投資家は決してリスク愛好家ではなく、リスクに対しても慎重な投資家だと見て良いでしょう。

石橋をたたくと人は、株価が上がるほど買えないジレンマに

以上、もっともらしいことを書き連ねてきましたが、相場の転換点を的確に捉え果敢に行動できる才能は全ての人に備わっているわけではありません。また積極的に投資をしたからといって常に成功するわけでもありません。頭で理解できても、じりじり上がる株式市場を目の前にすると手が出にくくなるのも人の性です。筆者もどちらかと言えばこちらに属します。

毎日相場とにらめっこをしているプロの投資家にもなかなか難しい作業ですので、相場に時間をそれほどさけない個人の投資家にはますます難しいものになります。

では株式市場の長期上昇を享受したいと考える慎重派の個人投資家はどうしたらよいでしょうか。相場の天底を的確に当てること、転換点を機敏に捉えて果敢に投資をすることはなかなか難しいものです。悩む時間を費やすなら少額でも定期的につみたてていくというのが費用対効果の面でベターではないでしょうか。

この2カ月の上昇相場を振り返って自戒も含めて書き記してみました。お役にたてば幸いです。

LIMO編集部