海外への投資や融資と聞くと、「なんだかリスクが高そう」とか、「よく分からなくて怖い」という反応をしてしまうのは分からないではありません。しかし、本当に海外への投資、融資は「アブナイ」のでしょうか。

自国のリスクを過小評価し、外国のリスクを過大評価する:ホームバイアス

実はこの、「海外投資はなんだかリスクが高そう」という考えは日本だけのものではありません。程度の差こそあれ、様々な国に共通して見られる傾向です。まずは下の図をご覧ください。

■ポートフォリオにどのくらい自分の国の株式を組み込むかに関する調査

引用元:Vanguard (2016), The global case for strategic asset allocation and an examination of home bias

たとえば、左から2番目のカナダを見てください。オレンジの部分の3.4%は、カナダの株式発行額は世界全体の株式発行額の3.4%を占めていることを示します。ということは、ある投資家が世界の様々な株式にバランス良く投資するという意思決定をした場合、その投資家の保有する株式のうち3.4%がカナダの株式であると予想できます。

しかし、カナダの投資家はそれよりもはるかに高い59%を自国の株式で保有しているということが示されています(黄色い部分)。図を見ていただければ分かるように、この傾向はどこの国でも顕著です。つまり、投資家や投資機関は自国の株をひいき目に見るということです。これをホームバイアス(Home Bias)と呼びます。

これは必ずしも非合理的なことではありません。為替リスクや規制の壁、海外への投資に伴う事務処理の手間等を考えると、海外投資にかかるコストは低くないため、自国への投資に傾きがちなのも頷けます。

しかし、海外への投資をためらう理由はそれだけでしょうか?

手に入りやすい情報だけを基に意思決定をする:アベイラビリティバイアス

ここで、次の質問について少し考えてみてください。

  • 心臓発作で死ぬ確率とテロで死ぬ確率、どちらがどれくらい高いと思いますか?

どちらが高いか。答えは「心臓発作」です。まずこれが正解なら第一段階クリアです。テロの方がセンセーショナルに報道されるため、「テロの方が不安」と思ってしまいがちかもしれませんが、統計的に事象の発生確率を考えると、心臓発作の方が数が多いということは想像できるでしょう。

問題は心臓発作で死ぬ確率の方がどれくらい高いかです。50倍くらいでしょうか? それとも100倍くらいでしょうか?

答えは35,000倍以上です。

大体予測できましたか? テロで死ぬ確率をもう少し高いと思っていた人が多いかもしれません。しかし、テロで死ぬ確率は予想以上に低いのです。最近はテロのニュースが多く、海外旅行が怖いと思う人も多いかもしれませんが、海外旅行を恐れる前に、心臓発作の原因になるような生活習慣を見直す方が先かもしれません。

なぜこのようなことが起きるのでしょう? それは上でも説明しましたが、テロの報道の方が身の回りに溢れているからなのでしょう。テロで死者が出たという報道はよく聞きますが、心臓発作で誰かが亡くなったという情報はほとんど聞きません。日常的過ぎてニュースとしての価値からがないからでしょう。

しかし、どちらのリスクをよりヘッジするべきかという意思決定の際には、手に入りやすい情報だけから判断するのでなく、統計的なデータを基に判断すべきでしょう。

手に入りやすい(available:アベイラブルな)情報だけを基に間違った判断を下してしまうこの心理的傾向はアベイラビリティバイアス(Availability Bias)と呼ばれます。先ほどのホームバイアスはこのアベイラビリティバイアスの派生形と考えることができます。

低金利が続く日本。海外の市場に目を向けると?

世界には投資先がたくさんありますが、どこに投資するかを考える際に、やはり日本の投資家や運用担当者は、日本企業の株式や債券に投資する傾向にあります。それは、普段から日本語のメディアを通じて日本企業に関する情報を得て、日本の投資先に慣れや親しみがあるからでしょう。

しかし、それが最善の投資方法であるという保証はありません。「テロの情報の方が身の回りに溢れている」=「テロで死ぬ確率が高い」というのが間違いであるように、「日本の投資先の情報の方が身の回りに溢れている」=「日本に重点的に投資する戦略が最善」という保証はないのです。

もしかしたら、我々日本人に馴染みのないアフリカやラテンアメリカといった新興市場の投資先の方がリスクが低く、高い利回りで運用をできるかもしれないのです。

世界には資金需要が旺盛な成長市場がたくさんあります。資金需要がなく、低金利が続いている日本の金融市場だけに目を向けるのではなく、世界に目を向ければ高いリターンを得られ、かつ、資金需要に応えられる機会が広がっているのです。ぜひ、ホームバイアスから抜け出して海外市場に目を向けてみてはいかがでしょうか?

以上、投資型クラウドファンディングを通じて世界のお金の流れを変えるクラウドクレジットでした。

参考文献:
Kahneman, D. (2011). Thinking, fast and slow. New York: Farrar, Straus and Giroux
Vanguard (2016), The global case for strategic asset allocation and an examination of home bias
Global Research. Center for research on globalization. (2014). The Terrorism Statistics Every American Needs to Hear

 

クラウドクレジット