円安も東芝問題もメディアの表現で印象が変わる危険

”加工”された情報を鵜呑みにしてはいけない

私たちが日々接するニュースは、情報の一側面に過ぎない

普段、私たちが日常の生活をしていく上で、様々な情報を必要とします。そして、昨今ではその情報の多くを、テレビ、新聞、雑誌、インターネット(SNS含む)などから取得していると考えられます。しかし、そこで得られた情報は、あくまでも“事実の1つの側面”に過ぎません。

ある報道に接した時、それを検証するために別の情報を探しに行く人もいるでしょうし、その報道を自身の知識と合わせて独自情報にする人もいるでしょう。いずれにせよ、重要なことは、1つの情報だけを鵜呑みにしてはいけないということです。それを何の検証もなく最終結論とすると、後々痛い目に遭うことも少なくありません。

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報道されるニュースは、その表現に注意が必要

前述したテレビ、新聞、雑誌、インターネット等(以下「メディア」)を利用する際に注意すべき点の1つが、その記述表現です。メディアが報じるニュースは、その記述表現によって、異なる印象を与えるケースが少なくないからです。

最近の例を見てみましょう。

米軍機オスプレイの大破事故は「不時着」なのか「墜落」なのか?

先週、12月13日の夜、沖縄駐留米軍の垂直離着陸機「V-22」(以下、「オスプレイ」)が、名護市沖で大破する事故が起きました。事故発生が夜だったため、最初は詳細が全く分からなかったのですが、翌朝になると大きく破損した機体の姿が明らかになりました。その映像はニュースで何度も報じられたので、ご覧になった方も多いでしょう。

今回の事故を、多くのメディアが「不時着による大破」「不時着事故」と報じている一方、沖縄県の地方紙の多くは「墜落事故」と表記しています。詳細は省略しますが、「不時着」と「墜落」では意味が大きく異なります。

現時点ではどちらが適正なのか判断できませんが、“どう見ても墜落じゃないか”と感じた人もいるでしょうし、“これは不時着の着水に失敗した事故だ”と思った人もいるでしょう。正しい事実は分かりませんが、「不時着事故」を鵜呑みにせずに、色々な情報ソースで確認することが重要です。

東芝の会計不祥事は「不適切な会計」と「粉飾決算」のどちらが正しい?

別の例を見てみましょう。昨年2015年に起きた東芝(6502)の会計不祥事も同様です。この不祥事を、多くのメディアは「不適切な会計」と報じ、その後、一部は「不正会計」と報じています。あまり聞き慣れない表現ですね。

しかし、様々な方面から見ると、“これは粉飾決算以外の何物でもない”と感じている人も少なくないのではないでしょうか。「不適切な会計」と「粉飾決算」では、法的責任(刑事、民事)の有無を含めて、まさしく、天と地の差があります。

過去、粉飾決算と判断されて経営陣が刑事責任を負ったり、上場廃止に追い込まれたりしたケースは数多くあります。この東芝の問題も、最終結論はまだ出ていないようですが、メディアが言う「不適切な会計」を最初から丸々信じることは好ましくないと言えましょう。

トランプラリーで生じた「過去にない円安」は本当か?

トランプ氏が大統領選に勝利した以降の、いわゆる“トランプ相場”、“トランプラリー”でも、メディアが使う表現は様々です。先日も今回の円安進行を「過去にない円安」と報じていた例がありました。何気なく使っていますが、非常に曖昧で誤解を与える表記です。

今年初旬には121円/ドル、“過去にない”は大げさ

思い返すと、トランプ氏勝利の可能性が高まったことにより、大統領選当日(日本時間では12月9日午後)は一時101円/ドルまで円高が進みました。しかし、その後の急速な円安が進行した結果、現在は117~118円/ドルですから、確かに急速に円安となっています。

しかし、実際には今年1~2月には何度も121円/ドルを付けているわけですから、「過去にない円安」という表現は明らかに大げさと言えるでしょう。

過去1年間の円ドルレートの推移

この表現を用いたメディアは、恐らく、“過去、ほとんど見たことがないような急ピッチで円安が進んでいる”ということを言いたかったのでしょう。意図的な悪意はなかったと思われます。実際、為替のチャートを見ればすぐにわかることです。

しかし、“過去にない”というフレーズをそのまま鵜呑みにすると、現在の為替水準が異常で特異な円安と考えてしまっても無理はありません。

メディアの情報は既に“加工”されているケースが多々ある

このように、私たちが接するメディアの情報には、実態とは若干異なるような表現や、読者の関心を引き付けるためのやや大げさな表現が少なくありません。つまり、メディアに掲載された時点で、既に“加工”が施された情報になっている場合が多々あるのです。

私たちが日々接するニュースを頭から信じ込まないことが、これからの激動の時代を賢く生き抜いていく1つの必要不可欠な手段と言えましょう。

 

投信1編集部

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