アルコールは毒なのか? 低所得者層の入浴剤による中毒死

メタノールによる死亡事件はかつての日本にも

この記事の読みどころ

  • 入浴剤を飲んだことによる大量中毒死事件がロシアのイルクーツク市で発生しましたが、その原因はメタノール(別称:メチルアルコール)の混入によるものとされています。
  • アルコールにはエタノール(別称:エチルアルコール)とメタノールなどがありますが、その違いは何なのでしょうか。
  • メタノールが含まれる密造酒や粗悪品による中毒で死亡者が出る事件は、かつての日本や世界の様々な国でも起きています。
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ロシアで起きた大量中毒死事件

メディアの報道によると、ロシア・東シベリアの主要都市であるイルクーツク市でメタノールによる中毒事件が発生し、12月16日から22日までに70人以上が死亡と伝えられています。

いずれも入浴剤を飲んだことが直接的な原因とされており、アルコール入り入浴剤を製造・販売した関係者12人の身柄が拘束された模様で、市当局は“非常事態宣言”を発しています。

イルクーツクは首都モスクワから約4,000キロメートルの極寒の地で、低所得者を中心に安い酒を求める人々が、アルコールが入っている入浴剤を安物ウォッカの代替品として飲んだことが事の発端です。

ここにきて明るみに出てきたのは、入浴剤に表示されているエタノールではなく、工業用のメタノールが混入された疑いです。悪徳業者が模造品を製造販売したことが事件を引き起こしたと見られます。

メタノールとエタノールの違いとは?

アルコールと言ってもたくさんの種類がありますが、種類を決めるのは分子中の炭素の数です。

炭素数が1つのアルコールはメタノール(メチルアルコール、CH₃OH)、炭素数が2つのアルコールがエタノール(エチルアルコール、C₂H₅OH)です。炭素数が3つ以上のものもありますが、ここでは省略します。

筆者は子供の頃、メタノール(メチルアルコール)を飲むと目が見えなくなるから気を付けろ、”メチル=目散る”だと年配の方に言われた記憶があります。日本でも戦前にメタノールとエタノールを混ぜ合わせたカストリと呼ばれる酒で数十人もの死亡者が出た事件があったそうです。

純粋なメタノールは現在、劇物に指定されています。飲むと網膜損傷による失明を引き起こし、致死量はエタノールの10分の1と言われています。

他方、エタノールはサトウキビ、サツマイモ、コメや麦といった穀物などを発酵させてつくられる、いわゆる一般的なお酒の中身のことです。発酵原料の違いでウイスキー、焼酎、アワモリ、ウォッカなどの種類に分かれ、それぞれ独特な香りや味がするわけです。

同じ過ちが繰り返されるアルコールの魔力

薬物中毒ではありませんが、アルコール中毒も深刻な社会問題です。酒(エタノール)を飲むと中枢神経をマヒさせ、“酔い”という症状をもたらします。適度であれば問題ありませんが、脳神経がこの酔いの状態を記憶し続けると中毒症状に陥ります。

こうした酔いの状態を得るため、イルクーツク市の事件では低所得層の人々がアルコール入りの入浴剤を飲むという行為に出たのでしょう。そこに、死に至る中毒を引き起こすメタノールが入っているとは知らず飲んでしまったという悲劇です。

前述のように、日本でも戦前や戦後の混乱期にメタノール入りの密造酒で中毒事件が多発した歴史があります。また、イタリア、ベトナム、中国、インドネシアなど、新興国、先進国を問わず同じ事件が多発しています。

酔いが得られれば何でも飲む、これこそがまさに薬物中毒と同じアルコールの魔力、毒と言うべきでしょう。

 

石原 耕一

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石原 耕一

早稲田大学法学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン校AMP修了。
大学卒業後、和光証券(現 みずほ証券)に入社。その後、リーマンブラザーズ証券、UBS証券、みずほ証券等でアナリストとして40年以上株式市場で調査活動に従事。特に化学セクターでは20年以上の調査経験を持つ。