本物のプライベートバンクは何をするのか、なぜスイスに多いのか?

世代を超えて「資産を守る」ことの重要性

日本では、プライベートバンクに関する正しい情報がまだ少ないように感じます。今回は、「よくある質問」に回答する形式で、プライベートバンクのサービスとはどのようなものかを紐解いていきたいと思います。

Q1 そもそも、プライベートバンクとはどのような業務を行っていますか?

プライベートバンクのサービスの本質は、お客様の資産を世代を超えて守っていくことです。各時代で顕在化するリスク、たとえば戦争や国内経済の混乱よる資産価値の減耗や逸失、インフレによる実質資産価値の低下などからお客様の資産を守り、次世代への継承をお手伝いしています。

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よって、守るべき資産を既に保有している方々、いわゆる富裕層と呼ばれる方々が主なお客様となるという構図です。こうしたお客様の多くは、ご自身で事業や資産運用に成功したり、相続・贈与などで資産を継承され、キャッシュフローを生み出す術を既に持たれている方々です。

プライベートバンクは、お客様の事業や資産運用から生み出されるキャッシュフロー生成パターンとは異なる資産運用戦略をご案内し、お持ちの資産全体としての理想的なポートフォリオの構築を追求します。部分最適ではなく、お客様にとっての全体最適を常に意識しながらソリューション力の洗練に努めています。

お客様とのお付き合いは長期に亘るため、政治経済情勢の変化、法制度の変化、お客様ご自身の環境の変化などに向き合いながら、ソリューションを常にアップデートすることが肝要です。

Q2 プライベートバンクはどのような組織なのですか?

「こうあるべき」という組織体系はありませんが、スイスを拠点とする老舗プライベートバンクの多くは、パートナー制による企業経営を行っています。

パートナー制では、株式市場に上場している金融機関と異なり、長期的で安定した企業経営のもとでお客様にサービスを提供することが可能です。お客様の資産を守る存在として、自らが安定していることが極めて重要です。

一方、上場企業の形態による規模のメリットを生かし、複合的なプライベートバンク・サービスを提供している金融機関もあります。どちらが良いという話ではなく、お客様ご自身の目的や価値観に基づき選定されるのが良いと思います。

Q3 スイスのプライベートバンクは、顧客にどのような提案を行っているのですか?

人生やご一族の目標、ご資産の特性、お考えなどをお伺いし、お客様ごとにテーラーメイドの様々なソリューションを提供していますが、その内容は多岐に渡ります。

そのため、担当者(プライベートバンカー)は、様々な要望に対応できる奥行きの深いスキルや知見、人的ネットワークを備えていることが重要で、お客様から「何でも相談される」立場になることが理想像です。

プライベートバンカー自らが、サービスの受け手側の経験を多く有していることも重要です。たとえば、不動産投資を含む多様な投資経験、会計・税務知識、非金融エリア(アート、クルマ、ワインなど)の知見、海外教育・海外生活の経験などをプライベートバンカー自らが有していると、お客様のニーズをリアルに理解することが可能だからです。

Q4 スイスにプライベートバンクが多いのは何か特別な理由があるのですか?

スイスのプライベートバンクは、傭兵として出稼ぎに出たスイス人の資産を運用・管理する目的で始まったという説があります。他にも諸説ありますが、スイスでここまでプライベートバンクビジネスが拡大した理由は、自国を守るという気質を持ったスイス人の国民性にあると思います。

スイスは永世中立国だから安全だと言われますが、実は第二次世界大戦前には永世中立を掲げる国がスイス以外にも複数存在していたのです。しかし、スイスのように永世中立を維持できた国は他にありません。スイスは、ただ永世中立を掲げていただけではなく、巧みな外交力や軍事力、経済力によって永世中立を守り抜き、今に至っています。

筆者がスイスに住んでいた時、スイス人が真剣に国を守ることを現在も実践している様子を見る機会が多くありました。私が住んでいた集合住宅の地下にはシェルターが備えられており、有事の際は避難場所として機能するとのことでした。

また、スイス人の同僚は国民皆兵制度の下、定期的に会社を休んで軍事訓練に参加しており、自宅には軍用ライフルが備えられていると聞きました。

スイスの街中でライフルを背負ってバイクに乗る人

スイスが極めて安全性の高い国であるということは、スイス人が「真剣に国や資産を守ることを実践し続けてきた」結果であり、この姿勢がプライベートバンクを含めたビジネスにも反映されているのでしょう。

 

ピクテ投信投資顧問株式会社 小田嶋 康博

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小田嶋 康博

金融系ベンチャー企業を経て、イギリス系大手ヘッジファンドであるマン・グループにて、東京、チューリッヒ、ロンドンで勤務後、ピクテに入社。
ピクテでは、従来型のディストリビューションモデルと異なる戦略立案及び営業活動を担当。 特に富裕層向けビジネスモデルの構築、並びにネットチャネル経由のビジネスモデル構築及び促進に向け販売会社とのコラボレーション施策の開発に従事。
慶應義塾大学入学後渡米し、ニューヨーク州立大学経営学士取得。