2017年はどのような年になるのでしょうか。2016年を振り返ると、年初には想像しきれなかったイベントが目白押しでした。投資家にとって特に影響があったのは、日銀のマイナス金利導入、英国国民投票によるEU離脱、そして年末には米国次期大統領にトランプ氏が当選したことではないかと思います。

しかし、いったいどれくらいの投資家が事前にこうした出来事の可能性をイメージできたでしょうか。

投資ではシナリオをいくつか準備し、その中で最も起きそうな可能性を軸に投資判断をすることがあります。本稿で見ていく内容については実現の可能性は少ないかもしれません。ただ、もし起きた時に右往左往しないように頭の体操の材料としていただければ幸いです。

以下、個人投資家向け金融経済メディアLongine(ロンジン)のアナリストがリスクシナリオとして認識しておくとよいと考えているイベントやその影響について、同編集部と一緒に見ていきたいと思います。

2017年はこれまで以上にエネルギー価格に注目

――2016年は波乱万丈な相場でした。2017年に押さえておきたいイベントにはどのようなものがあるでしょうか。

Longine編集部(以下、Longine):イベントといっても、世界の政治経済に端を発するものから、各業界や企業発のイベントまで様々です。

現在は、米国および日本の株式市場は好調で、この先あまり不安がないかのような株価動向ですが、リスクシナリオは想定しておいた方がよいでしょう。また、その際に買いたい銘柄なども自分の投資アイデアの引き出しに入れておければ、機動的に動き出すことが可能です。

――では、マクロリスクに関係するものから教えてください。

Longine:世界的に影響の大きいテーマからいけば、2017年はコモディティ価格、特にエネルギー価格の動向に注目です。Longineの化学セクター担当アナリストは、原油価格が50ドル台と60ドル以上になるのでは企業業績に大きな変化があると言います。

アナリスト自身が”大胆な予測”としながらも、総合化学メーカーの業績に関して「原油価格が現在の50~55ドル/バレルあたりに張り付いている限り、石油化学事業などの収益は製品価格是正などによって2017年度上期(4~9月期)まで業績を支えるだろう。しかし、原油価格が60ドル/同を超えるような情勢になれば、原料高によるスプレッド悪化で業績が急激に悪化する可能性も十分ありえる」とコメントしています。

>>【参考】あったらびっくり!2017年のサプライズ予測(化学セクター編)

税制面での変化で企業行動は変わるのか

――政治や制度面での変化なども考えておく必要があるでしょうか。

Longine:政治や税制についても考慮しておくことが大切です。特に、税制は動き出すと大きな流れになることもあります。Longineの電機セクター担当アナリストは、「内部留保課税が導入されれば、自社株買いの促進や賃上げの実施、キャッシュフローを原資とした設備投資をこれまで以上に積極的に実行する可能性があるのではないか」と指摘しています。

また、株式市場ではいわゆるキャッシュリッチな銘柄はネガティブに見られ、その一方で設備投資関連企業が恩恵を受けるのではないかとコメントしています。

>>【参考】あったらびっくり!2017年のサプライズ予測(電機セクター編)

グローバル企業のM&Aは日本企業に影響を与えるのか

――産業界やセクター別で異なるシナリオはありますか。

Longine:先ほどの化学セクターでは、農薬業界の再編の可能性についても指摘しています。2016年は、農業をテーマにグローバルの化学メーカーを巻き込んでの大型M&Aが活発でした。日本にもその余波が来るのではないかという可能性の指摘です。

――内需関連の産業ではどうでしょうか。

Longine:Longineの小売りセクター担当アナリストは、依然好調のコンビニエンスストア、そしてGMSの現在のポジショニングが変化する可能性について考えておく必要もあるのではないかと指摘しています。

最近のコンビニに関しては、自身の印象論としながらも「いわゆる『プチ贅沢消費』を拾い上げることで収益を底上げしているような気がしてならない」とコメントしています。今後の消費動向次第ではありますが、社会保障関連の自己負担が増えるようなトレンドが加速すると、そうした消費スタイルに依存することの危険性もあるのではないでしょうか。

その一方で、いわゆるスーパーマーケットであるGMSの復活も考えておいてもよいのではとも指摘しています。業態としてGMSが不調であるというのは多くの人が知るところではありますが、リストラによる店舗削減で不便を感じることが多いとの指摘もあります。

GMSのプライベートブランドには品質が良いものもあり、GMSの位置付けについては、商品ポートフォリオの見直しやモールの活用などを含めた改善可能性の議論をしてもよさそうです。

>>【参考】あったらびっくり!2017年のサプライズ予測(小売セクター編)

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回取り上げたシナリオは多くの人が考えている内容、いわゆるコンセンサスとは対極にあるような内容ばかりですが、将来に起きるとすればどのような影響があるのかを考える、よい準備となるのではないでしょうか。

2017年も相場環境は見通しにくい点においては2016年と変わりませんが、そうした中でもビジネスモデルが確立された長期投資ができる企業を見出して資産形成をしていきたいものです。

今回様々なリスクシナリオを想定したアナリストがおすすめする日本株についてご興味があれば、個人投資家向け金融経済メディアLongineのウェブサイトをご参照ください。

>>【参考】Longine推奨銘柄の配当利回りと株主優待まとめ(2016年12月22日終値)

 

LIMO編集部