中国両替事情

中国に着いて悩ましかったのが両替でした。クレジットカードがあれば多くのシーンで決済できるのですが、それでもちょっとした買い物のために手元に現金は欲しいもの。

空港で入国を済ませた時にすぐ目の前にあった両替所に行けばよかったのですが、それを逃すと両替のチャンスがなかなかありません。両替レートに神経質にならず、多少は現金を持っていた方が安心かもしれません。

ちなみに、両替所に行くと100元札(日本円で1,700円くらい)を多く手渡されますが、タクシーなどでは嫌われます。小売店では(たしか駅でも)、ほぼ間違いなく100元札については小型の偽造識別機に1枚1枚通しています。

現地の人たちはアリペイやウィーチャットペイなどのモバイル決済システムを頻繁に使い、現金離れが進んでいると言われます。現金に関わる手間の多さを考えると確かにうなずけるトレンドです。

外国人へのホスピタリティは悪くない

初めて筆者が中国を訪れた20年前あたりは、銀行などの窓口に行くとサービスマインドを感じさせない事務的対応をされたような記憶があります。

しかし、今回はあまりそんな感想はありません。土地柄もあるのかもしれませんが、銀行で両替をする時、列に並んで何かを買う時、タクシーに乗る時、レストランでオーダーする時、ホテルのフロントで話をする時、いずれのシーンでもサービスマインドはしっかり感じられました。

この要因の1つは、サービス業で接客する人たちが若いことにありそうです。彼らはある程度英語もできて、こちらの要望をしっかり聞いてくれます。土地柄、外国人慣れしていることもあるでしょう。

タクシーに何度も乗りましたが、コミュニケーション不全であからさまに乗車拒否をされたのは一度だけでした。筆者としては正直少なくてよかったと思いました。

顧客満足度を高める秘密兵器も

ある銀行で両替をしようとした時のこと。窓口の青年は23歳くらいで、入行2年目といったところでしょうか。とにかく時間がかかります。あれこれとサインさせられるのですが、一度に全部渡されることもなく、書類がばらばらと渡されます。説明もいったりきたり。彼の顔はスマイルなのですが、こちらは20分を過ぎたあたりからカリカリし始めました。

そんな時、ふと筆者の右手を見ると、3つのボタンがついた小さな機械が置いてあります。よく見ると「不満」[満足」「とても満足」と書いてあります。

あやうく「不満」ボタンを押そうかと思いましたが、将来のある青年です。大目に見て作業が終わるのを気長に待ちました。

その後注意して見ると、タクシーの車内にも同様のボタンがあります。

このボタン、本当に通電しているのか確かめることはできませんでしたが、従業員に対しては大変な威力がありますね。また、仮に通電している場合、リアルタイムでその当事者にボタンの内容が通知されるのでしょうか。

日本では今のところ、このようなボタンを見たことはありません。技術的には専用装置を設置しなくてもスマホを使えばリアルタイムで顧客満足度を会社に通知するシステムは比較的簡単に作れそうです。しかし、これが普及すると、サービスマインドの向上は進むのでしょうが、従業員の気苦労もずいぶん膨らむことでしょう。

このような装置、今回の旅行先のいたるところにあるというわけではありません。中国で感じたサービスマインドの改善も、必ずしもこの手の装置のおかげばかりではないと考えています。

 

椎名 則夫