上場による資金調達で、海外事業を加速する計画

博多ラーメン店「一風堂」を運営する力の源(ちからのもと)ホールディングス(福岡市)が、東京証券取引所に株式の上場申請を行ったことがわかりました。申請は2016年12月で、市場区分は新興企業向けのマザーズ市場です。審査が順調に進めば、3月にも上場承認される見通しです。

同社の事業は1985年、創業者の河原成美氏が福岡市に最初のラーメン店をオープンさせたことに始まります。

関東進出は1994年、新横浜のラーメン博物館店が最初でした。以後、東京、大阪をはじめ、全国に積極的に展開。現在、「一風堂」は国内に116店舗あります(以下、同社のデータはいずれも2016年3月期 [連結] )。

海外展開も早く、2008年に米国のニューヨーク進出を皮切りに、海外では12の国と地域に55店舗を展開しています。

同社はラーメン専門店「一風堂」で知られますが、ほかにも、「五行(ラーメンダイニング)」、「RAMEN EXPRESS(フードコート業態)」、「行集談四朗商店(居酒屋)」、ベーカリーショップ、うどん・そば専門店などの経営も行っています。

グループの連結売上高は約208億円です。今回の上場による資金調達で、海外事業をはじめとする事業を加速すると見られています。

多くの日本発「めん類」企業が海外へ進出

人口減・少子高齢化により、外食産業では市場縮小が進んでいます。このため、ラーメン店やうどん店など、国内のめん類チェーン店が、海外展開を加速させようとしています。

その先駆けとなったのが、「味千ラーメン」を運営する重光産業(熊本市)で、中国・香港などアジアを中心に670店以上を出店しています(フランチャイズを含む。以下同)。

「8番らーめん」などを運営するハチバン(9950)(金沢市) は、東証JASDAQスタンダードに上場しています。2016年12月現在、海外に122店舗を出店しています。

「らーめん山頭火」を国内外で運営するアブ・アウト(札幌市)は、北米、アジアに30店舗以上を出店。リンガーハット(8200)(長崎市) は、米国、インドネシア、タイ、香港に、長崎ちゃんぽん「リンガーハット」および、とんかつ「浜かつ」を7店舗出店しています。

ラーメンだけでなくうどんでも、日本企業の海外進出が進んでいます。うどん店「丸亀製麺」などを運営するトリドールホールディングス(3397)(神戸市) は海外で約240店舗を出店しています。

讃岐うどん店では、ほかにも「たも屋」のたも屋(香川県高松市)、「こだわり麺や」のウエストフードプランニング(同丸亀市)なども海外に進出しています。

さらに、中部を地盤に和麺店を展開するサガミチェーン(9900)は、「そばとなごやめし」を中心にした店舗を、アジアに7店舗出店しています。

日本食への関心は高まっているが、今後は競争の激化も

日本の食に海外の人気が集まっています。需要に応えるように、中国、香港、台湾などを中心に、日本企業の進出が相次いでいます。

ただし、最近では日本食レストランの増加で、たとえばタイのバンコクでは、すでに飽和状態とも言われます。実際に、タイでは日系企業が出店したものの、短期間で撤退した例もあります。

競争が激化しつつあることから、未開拓の市場を狙う動きも出ています。前述した「一風堂」は、2017年春にミャンマーに初出店する計画です。

めん類ではありませんが、「すき家」などを運営するゼンショーホールディングス(7550)は、中南米に積極的に出店しています。アフリカや中東への進出を計画している企業もあります。

いずれの企業も、進出のスピードを上げるために、現地企業によるフランチャイズや、現地企業との合弁なども多くなっています。M&A(合併・買収)も広く行われるでしょう。

今後は、日系企業の中でも明暗が分かれることになりそうです。どの企業が「勝ち組」になるのか、注目したいところです。

 

下原 一晃