今週から10-12月期の米決算シーズンがスタートします。年末にはもたついていた米株式市場も、年が明けると堅調さを取り戻し、ダウ平均は節目となる2万ドルが目前となっています。

昨年とは違い、幸先のよいスタートとなったこともあり、期待先行と言われているトランプ相場から業績相場にバトンタッチができるのかどうかが注目されています。

米企業決算、10-12月期は2四半期連続で増益となる見通し

米調査会社ファクトセットが12月30日付けで公表したリポートによると、S&P500指数を構成する企業の10-12月期の収益は前年同月比+3.2%となる見通しです。増益は2四半期連続で業績リセッションから本格的な回復が期待できそうです。

とはいえ、9月30日時点では5.2%の増加が見込まれていましたので、増益幅が減少している点は気になるところです。海外の売上高比率が比較的高い素材セクターが下方修正を主導しており、最近のドル高が影響している模様です。

2017年のS&P500は10%上昇を予想、過去の実績は?

S&P500指数の騰落率は10-12月期が+3.3%、2016年通年では+9.5%でした。アナリストの予想を平均すると2017年は+9.7%となる見通しで、2017年末の目標価格は2456となっています。

セクター別ではヘルスケアが+16.6%と最も高く、通信が+1.4%と最も小幅な上昇が見込まれています。

2015年12月末時点での2016年末の予測値は2335と、実際の2238を4.3%下回りました。過去12カ月の月末値はそれぞれの1年前の予測値を平均で9.9%下回っています。この1年に関して言えば、アナリストは平均的に株価を9.9%過大評価していたことになります。

ただし、2012年から2016年の60カ月を同様に調べてみると、1年後の株価を平均で0.4%過大評価していますので、過去5年の平均値で見るとまずまずの予測だったと言えそうです。

PERは上昇中、株価の上昇スピードが収益見通しを上回る

S&P500構成企業の2017年のEPS(一株当たり利益)は132.89ドルと予想されています。過去20年を振り返ると、前年末の翌年の予測値と実績値には7.2%の差があり、予想は実績を平均的に7.2%過大評価してきました。

ただし、過大評価は景気後退期に大きくなる傾向にあり、2001年が36.6%、2008年が38.0%、2009年が29.2%となっています。この3年を除くと、平均値は2.3%の過大評価となりますので、2017年に景気が後退しないと考えるのであれば、2017年のEPSは予想(132.89ドル)から2.3%割り引いた129.83ドルが1つの目安となりそうです。

PER(株価収益率)を見ると、予想PERは16.9倍となり、5年平均(15.0倍)、10年平均(14.4倍)を大きく上回っています。ただし、20年平均(17.2倍)は若干下回っています。

15年末は16.1倍でしたので、この1年でPERは上昇しています。株価が9.5%上昇したのに対し、予想EPSは4.7%の伸びにとどまったからです。

PERはバブルと呼べるほどのレベルには達していませんが、最近の平均値を上回っていますので、上昇が続くようだと割高感が強まる可能性があります。業績見通しが比較的高い伸びとなっていますので、見通しの下方修正には警戒が必要かも知れません。

増益は海外比率の高い業種に集中、ドル高を警戒へ

2017年は前年比11.5%の増益が予想されており、達成されれば2011年(+12.5%)以来の高い伸びとなります。セクター別ではエネルギー(+345%)が群を抜いており、素材(+15.9%)、金融(+11.3%)、テクノロジー(+11.1%)が続いています。

この4つのセクターのうち金融を除く3つのセクターは海外売上高比率が高く、テクノロジーが58%、素材は49%、エネルギーは43%を海外に依存しています。S&P500全体での海外売上高比率は31%です。

ドル高となれば海外売上高比率の高いセクターほど収益は圧迫されると考えられますので、2017年に予想通りの高い増益を確保できるかどうかはドルが大きなカギを握っていると言えます。

また、エネルギーセクターの業績が急回復している背景には原油価格の上昇があります。原油価格(WTI、期近)は2016年の年初に26ドル台(1バレル当たり、以下同)まで下落しましたが、年末までには50ドル台を回復し、底値から2倍以上の値上となっています。

原油価格が上昇したのはOPECを始めとする主要産油国が減産で合意したからです。ただし、過去を振り返ると、減産が遵守されないことも多く、遵守されないかった場合には再び値崩れを起こさないとも限りません。

12月の米雇用統計、賃金の予想外の伸びでドル高に

12月の米雇用統計では、雇用者数の増加が予想に届かなかった一方で、賃金が予想外に大きく上昇しました。将来的なインフレ懸念が強まったことで、米金利が上昇し、歩調を合わせてドルも上昇しています。

賃金の伸びは企業業績にとっては諸刃の剣となります。所得の増加が個人消費を押上げ、売上の増加につながる可能性がある一方で、生産コストが上昇して収益を圧迫する恐れがあります。

米労働市場はぼほ完全雇用の状況にあり、雇用者数の増勢鈍化に違和感はありませんが、労働市場がピークアウトしている中で、賃金の伸びが加速している点は警戒が必要かも知れません。

2017年の見通しは明るいが楽観は禁物

アナリストの予想を見る限りでは、10-12月期と2017年の企業業績見通しは明るいと言えます。

とはいえ、米金利とドルの動きには注意が必要です。米10年債利回りはこの半年で1.00%程度上昇しており、ドルも3カ月弱で約5.0%上昇しています。FRBは12月に0.25%の利上げ実施しましたが、ドル高や長期金利の上昇により予想以上に金融が引き締まっている恐れがあります。

最近では人民元の下落を警戒する声も多く、中国では短期金利が急騰するなど不穏な動きも見られます。

中長期的に米株式市場は堅調が見込まれていますが、当面はドル、原油、中国の動きを波乱要因として警戒することになりそうです。

 

LIMO編集部