ソニーの有機ELテレビは10年前と大きく変わったか?

「技術から感動体験へ」がこれからのキーメッセージ

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有機ELテレビの新製品をCESで発表

2017年1月第1週に米ラスベガスで開催された世界最大の家電展示会「CES」において、ソニー(6758)は有機ELテレビ「ブラビアA1Eシリーズ」を発表しました。サイズは77型、65型、55型と、かなりの大型テレビです。

現時点では、気になる値段や日本での発売時期の正式発表はされていませんが、2016年12月29日付けの日本経済新聞によると、価格は100万円前後、17年春から夏にかけて欧米、中国で順次発売が開始され、国内については海外の販売状況を見て判断されるとのことです。

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ソニーは過去に一度、有機ELテレビから撤退していた

実は、ソニーにとって有機ELテレビへの参入は2回目です。今からおよそ10年前の2007年に発売された有機ELテレビ「XEL-1」が最初の製品です。

ちなみに、今回の有機ELテレビのパネルはLG電子からの調達となりますが、XEL-1は技術的な難易度が高いパネルもソニーの自社生産でした。また、この製品はソニーにとってだけではなく、世界的にも初の有機ELテレビであったため、発売から約半年後に行われた2008年1月のCESにおいて「ソニー復活の象徴」として注目を集めました。

ただし、有機ELパネルの量産によるコストダウンは困難を極め、11型で20万円という高額な価格設定でも採算的には厳しい状態が続いたため、2010年に生産を終了し実質的に有機ELテレビからは撤退していました。

また、その後、有機ELパネルについては開発を継続したものの、エレクトロニクス事業全般の収益悪化による構造改革の一環として2015年1月に事業を譲渡、パナソニックの有機ELパネル事業と統合され「JOLED(ジェイオーレッド)」となっています。

大きく変わったソニーのテレビ事業

このように、ソニーの有機ELテレビには長い歴史がありますが、その間、ソニーのテレビ事業も大きく変わりました。前述のように有機ELパネルの生産からも撤退していますが、液晶パネルについても韓国のサムスン電子との合弁会社「S-LCD」を2012年に解消しています。また、販社などのスリム化も行ってきました。

こうしたコスト削減が奏功し、2005年3月期から2014年3月期まで11年間赤字が継続したソニーのテレビ事業は2015年3月期から黒字転換しており、2017年3月期も黒字の継続が見込まれています。

もちろん、テレビ事業の復活はコスト削減だけが要因ではありません。現地ニーズに合った商品を適切な価格で提供するマーケティングや、デザイン、画質、音質にこだわった商品力などの強化も見逃すことができない変化です。

そうした意味で、今回のCESで有機ELテレビは、高画質化技術であるHDR(ハイダイナミックレンジ)対応の機器を中心とした最新商品の取り組みを示す一環として展示されたことが注目されます。

“技術”ではなく、“高画質の感動体験”をユーザーに届けるための1つの取り組みとして紹介されたことが、CESにおけるソニーの大きな変化として注目されます。

こうした変化により、「ソニー=ハイエンド」というイメージが同社の多くの製品に根付き、持続的な収益改善に結びつくことに期待したいと思います。

参考:ソニーの過去10年間の株価推移

 

和泉 美治

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。