経営危機の東芝株に「2匹目のドジョウ」を狙うのは危険?

金融支援は取り付けたが個人投資家が楽観するのは時期尚早

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金融機関向けの説明会を開催

2017年1月10日、原発事業の巨額減損で揺れる東芝(6502)は、同社に対して融資を行っている金融機関向けに説明会を開催したと発表しました。

参加可能な金融機関は同社と取引のある金融機関に限られ、会議の内容は非公開でしたが、「お取引金融機関様向け説明会の開催について」と題する同社のIRニュースには、以下のような記載がありました。

「説明会には多数の金融機関様にご参加いただき、当社といたしましてもご説明を通じてお取引金融機関様のご理解とご協力を得ながら、当社グループの信用維持のために万全を期して参ります」

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ここからは、メインバンク以外にも多数の参加があったことが伺えます。ちなみに、2017年1月11日付けの日本経済新聞によると、この会議で「主力取引行は資金繰り支援を継続する方針を表明」したものの、「より損失リスクの高い資本面の支援には慎重」であったとのことです。

会議の目的は「赤信号、みんなで渡れば怖くない」

では、なぜ今回、このような会議が開催されたのでしょうか。おそらく、その目的は同社への融資を行っている一部の金融機関が持っていた「信用不安」を払しょくすることで金融機関が一丸となって支援する姿勢を示すためであったと考えられます。

東芝では、昨年末に巨額減損の可能性が発表されて以降、複数の格付け機関が同社債権の格付けを引き下げたために資金繰りに対する不安が浮上しました。また、一部の銀行では財務制限条項に抵触するリスクから、融資の即時返済を求めざるを得なくなる可能性がありました。

そうした融資引き上げの動きを食い止めるためには、メインバンクが支援を継続する意思をメインバンク以外の地銀などに示す必要があったのだ、と推察されます。つまり「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という状態を作り出すことが、今回の金融機関向けの説明会の目的であったということです。

幸い、今回の会議により、抜け駆け的に同社への融資を引きあげるという動きは食い止められたと考えられますが、実態は、(損失額が2月中旬までは明らかにならないため)当面は様子見をしようというのが大方の金融機関の判断ではないかと考えらえます。よって、これで一件落着ではないことは明白です。

乱高下する東芝株に買い向かうべきか

説明会翌日の11日、同社の株価は大幅高で引けました。そこで思い出されるのが、昨年の東芝の株価は春先から上昇に転じ、今回の減損巨額問題が明らかになる直前までは、シャープ(6753)と並び大幅な株高を演じていたことです。そこから「去年の美味しい思いをもう一度」と期待して買っている個人投資家の方も少なくないことが伺えます。

とはいえ、短期の値幅だけを取りに行くのではなく、長期的に資産形成を目指す個人投資家の方は、そうした1日だけの動きに惑わされる必要はありません。

ちなみに、個人投資家向け金融経済メディアLongine(ロンジン)のレポート『【東芝(6502)再び巨額ののれん損失の可能性が浮上。注目すべきポイントを整理する】』によると、今後も同社の株価は乱高下する可能性が高く、個人投資家は、金融機関の支援スタンス、再生プラン見直しの可能性、東証の同社へのスタンス等を注視すべきであることや、その背景等が詳しく述べられています。

経営危機から復活した時の”高い”株価パフォーマンスを取りに行くこと自体は否定しませんが、ぜひ冷静に情報を精査してから投資行動を起こしていただければと思います。

 

和泉 美治

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。
その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。
日本証券アナリスト協会検定会員。